租税は歴史的産物である。様々な時代の、様々な社会、経済状況を反映している。国、地方公共団体の役割や性格も変化し、財政または租税に対して期待される機能も異なってくる。徴収方法、使途も千差万別である。
歴史的産物であるところの租税の共通点は、「共同体の活動を賄うために構成員から強制的に財を徴収する」ことである。現代の民主主義国家においては、民主主義的に徴収・使用されることから、社会共通の会費ともいわれる。
現代の租税は、財源の調達を主な目的としながら、次の三機能を持つ。市場経済が機能しない公共財の配分に関る、資源配分機能。市場経済の元での所得分配が必らずしも公平といえないことによる、所得再分配機能。財政による経済の安定化に一定限度が存在することによる、経済安定化機能である。
租税と、その他の財政収入とは性格が異なるが、その区別は明確ではない。目的税または特定財源は、負担金に似た性格を持つ。ここで問題なのは、使途の性格づけによって負担の求め方が異なってくるということである。
憲法30条に規定されている。これは、国民が国家から得る利益の代償として租税を支払うのだという国家契約説を背景に持つ利益説と、国家は超越的存在であるが故に、その経費調達のために課税権を当然に有するという権威的国家思想と結びついた義務説の、二つに依拠する。
租税負担の配分には、国民の受ける利益に応じるべきであるとする利益説(応益原則)と、支払能力に応じるべきであるとする能力説(応能原則)とがある。租税原則は多くの財政学者に研究されてきたが、主なものとして、スミスの四原則、ワグナーの四大原則九原則、マスグレイヴの六原則がある。
日本の抜本的税制改革における租税原則は、税制改革法三条に掲げる「公平・中立・簡素」である。公平には、水平的公平と垂直的公平とがあり、後者は所得再分配機能と関っている。三者には矛盾も存在するが、税体系全体として、これらの理念が満たされるべきである。
租税法の法源としては、成分の形式をとるものとして憲法・法律・命令(政令・省令)・条例・条約があり、不文法として判例・行政先例がある。憲法は、国民の納税義務(30条)、租税法律主義(84条)、法の下の平等(14条)等を定めている。不文法としての慣習法には、納税者に不利益な内容のものの成立はないとされている。
租税の課税・徴収には議会の議決した法律の根拠を要する原則。権力分立の観点から、公権力の行使には国民の代表で構成される議会で成立した法律の根拠が必要であるという、憲法における法治主義の原理である。現代では、課税に対する国民財産の保障に加えて、経済生活に対する予測可能性と法的安定性の機能も備える。
その内容として、課税要件の法定・課税要件の明確性・遡及課税立法の禁止・課税の合法性・手続的保障がある。租税行政庁は、課税要件が満たされていれば法律の定める税額を徴収しなければならない。これは租税負担の公平性を保つために必要であり、合法性の原則という。納税者側からは手続的保障の原則ともとれる。
租税公平主義の意義は、担税力に応じた負担の配分(応能原則)と平等取扱原則と公平の原則(水平的公平と垂直的公平)に分けられる。平等取扱原則(不平等取扱禁止原則)は、不合理な差別を禁止するものであり、合理的な差別まで禁止するものではないと解されている。これらは執行時においても守られるべきものである。
租税法の解釈とは、租税法規の意味内容を明らかにすることである。租税法の適用とは、租税法の定める要件に該当する具体的事実を認定することである。租税の申告・納付等に際しては、以上のことが必要である。
租税法で用いられる用語・概念には、私法等他の法分野と同一のものが多い。これらは借用概念と呼ばれる。これらを同一に解釈するか否かが問題となるが、納税者にとっての予測可能性・法的安定性を重視する租税法律主義の下では、同義に解すべきである。
借用概念に対して、租税法が他の法分野を通じることなく独立に用いている用語・概念を固有概念という。法律に特に明記されているか、その趣旨から異なる意義をもって使用していると解すべきもののことである。
信義誠実の原則(信義則)または禁反言の原則とは、法律関係における合理的な信頼の保護を要請するものである。租税法の分野においては、租税法律主義の観点から消極的に解すべきとの考え方もあるが、信義則は法分野の一般原則(条理)であるため、慎重に比較衡量して判断すべき問題である。
租税公平主義の観点から、租税法の適用に際し、課税要件事実の認定は、外観・形式上の事実・法律関係ではなく、実体・実質上存在するところに即して認定しなければならない。これを実質課税の原則という。
納付すべき税額の正しい計算のために、課税の対象となる事実の正確な把握が必須である。商法・所得税法・法人税法・消費税法に規定がある。また所得税・法人税には青色申告制度が存在する。納税者は記帳によって納税額を計算し、税務調査に際しては、その記帳を元に正否を検討する。
適正な申告がなされているか否かを確認するためには、各種の資料が必要である。納税者に対する資料の提出義務(所得税法225,226条)の他、調査に必要な範囲で、関係人への質問、帳簿書類等の検査、官公署等への協力要請、固定資産課税台帳等の供覧が所得税法に規定されている。
適正な申告が法定申告期限内に提出されることを確保するための付加的負担として、過小申告加算税・無申告加算税・重加算税がある。地方税では、それぞれ過小申告加算金・不申告加算金・重加算金という。重加算税は行政上の措置(行政罰)であり刑罰とは異なる。故に、併科されても憲法39条の二重処罰の禁止には反しない。
罰則は刑事罰である。これは適正な申告を促す等、適正な課税をするために規定されている。国税に係る犯罪についての、犯則事件の調査および処分に関する手続は、国税犯則取締法の定めるところによる。脱税犯・単純無申告犯・質問検査拒否犯の規定が存在する。
更生、決定、賦課決定、脱税があった場合の更生・決定等、裁決等があった場合の特例、納税申告、以上の規定が存在する。