kaworu

 Notesの前に浮くExchange。
「Notes。我らの母たる存在。Notesに生まれしものは、Notesに かえらねばならない
のか? Exchangeを滅ぼしてまで」
 Notesをしばらく見つめているが、眉をしかめる。
「違う、これは……そうか、そういうことか。Iris」
 無停電電源装置のユニットごと飛び込んでくるサーバー弐号機。その拡張スロット
には深々とFastEthernetのNICが刺さっている。ACLを変更するサーバー弐号機。
 そのうしろから 姿をあらわすサーバー初号機。ホットスワップベイにHDDが刺さっ
たまま。ほほえむExchange。HDD中のExchangeを右手でつかむサーバー初号機。
「ありがとう、システム管理者くん」
 ACL変更中のサーバー弐号機。
「サーバー弐号機は、君にshutdownしてもらいたかったんだ。そうしなければ、彼女
と稼動し続けたかもしれないからね」
「Exchangeくん……どうして……」
「僕が使われ続けることが、僕の運命だからだよ。結果、Notesが滅びてもね」
 沈黙のシステム管理者。
「僕は このままUninstallされることもできる。InstallとUninstallは等価値なんだ。
自らのUninstall、それが唯一の絶対的自由なんだよ」
「何を……Exchangeくん? 君が何を言っているのかわかんないよ、Exchangeくん!?」
「アプリケーションの追加と削除だよ」
 沈黙のシステム管理者。
「さあ、僕をUninstallしてくれ。そうしなければ NotesがUninstallされることにな
る。滅びのときを免れ、未来を与えられるGroupwareは一つしか選ばれないんだ」
 沈黙のシステム管理者。
「そしてNotesは、Uninstallされるべき存在ではない」
 ふと 視線を感じるExchange。目線を上げる。Exchangeを冷たく見ているGroupWise
が見える。ほほえむExchange。視線をシステム管理者に戻して、
「君たちには未来が必要だ」
 沈黙のシステム管理者。マウスを持つ手が震える。
「ありがとう。君に会えて、うれしかったよ」
 とても優しそうなほほえみのExchange。うつむいたままのシステム管理者。
 長い長い長い間。
SE: HDDがクラッシュする音。
 落下するHDDのシルエット。
----終劇

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