Story #009:チップ
米国での生活を始めて、最初の頃、頻繁に頭を悩ませていたのはチップである。ごく初期の頃は、学校(ESL School)と、HomeStay先の往復で、ほとんどチップを払うような場面もなく、極たまにレストランなどに行って、チップを払う必要が出たときも、同行していた友達が全てを計算してくれて、私はただ、言われただけの金額を負担していた。しかしながら、アメリカに来てから一月半がたち、自分で車を持つようになると、学校と家の往復以外にも、あちこちに出歩くことが多くなり、自らチップ計算をして払う機会が出てきた。そうは言っても、それほど多くの場面でチップを払うわけではない。日常的な場面で言えば、レストラン・酒場で飲食をしたとき、理容院などで髪を切ったときくらいだろうか?(私の場合)ただし、ファースト・フードなどのセルフサービスのレストランの場合、払うことはない。もちろん、支払ってはいけないわけではない。しかし、チップは、サービスに対しての謝意の表れとして支払う物なので、セルフサービスで払うべきは、自分自身になってしまうだろう。
レストランでは、食事などが終わる頃になると、Check(会計伝票)をウェイトレスや・ウェイターが持ってくる。時々、レストランが忙しいときや、Checkを持ってくるのを忘れているときが、こちらから、持ってきてくれるように頼む。ごくまれに、何度、Checkを持ってくるように頼んでも、忘れられてしまうときもある。Checkを持ってきてもらうと、大概、各個注文品と価格、税抜き合計金額、税金、税込み合計金額などが書いてある。チップの額は、通常、商品価格(Sale Tax抜きの価格)の15%〜20%くらいで払うことが多い。たとえば、レストランで、10ドルの食事をしたとすると、1ドル50セント〜2ドルくらいのチップが標準的な支払額である。
チップの支払い方は、現金で支払いをする場合、税込みの食事代金+チップ額を、Checkと一緒にテーブルに置く。都合のよい金額のお金がない場合(お釣りが必要な場合)は、とりあえずお金を置いて(場合によってはお釣りを持ってきてくれるように言い添えて)、ウェイトレスに渡す。すると、支払ったお金から、(税込みの)支払代金分を差し引いたお釣りがかえってくる。そのお釣りの中から、チップ分を残して、お金を財布の中にしまえばいいのである。このときのお釣りは、大概、チップが払いやすいように、1ドル札や5ドル札を混ぜてくれる。クレジットカードで支払う場合は、Checkカードの利用明細(サインをする紙)にチップ額を書き込む欄と(チップとの)合計金額を書き込む欄がある。ここに(チップを払いたい場合は)チップの額を書き込むか、あるいは(チップ込みの)合計を合計金額の欄に書き込む。
支払う方法に関してはどうと言う事はないが、ここで頭を悩ますのはチップの額をいくらにするかと言う事だろう。一人で食事をした場合の払いは、全部、自分だから、少々計算すれば、チップの額は出てくるのだが、複数で食事をした場合、大変だ。まず、各自、注文した物の合計金額(税抜き)を出して、それから、Sales Tax(消費税・カリフォルニアの場合、8.25%)とチップ(15%〜20%)の合計金額を出す。それぞれ、計算して、チップ込みの分担金額を出すことになる。しかしながら・・・これが、なかなか、うまくいかないときもある。Checkには、全部の合計金額(税込み・税抜き)が書いてあるので、合計金額と、そのチップの額はわかる。しかし、どういう訳か、みんながお金を出して、それをまとめると・・・どうも、その金額が少なくなることがある。そうなると、各自が出す金額を調整しなくてはならない。結局は、料金をとりまとめる人が多めに出すことが多くなったり、あるいは、端数がどうもうまくまとまらないときは、通常より多めに支払ってしまう。まあ、たかが10セント、20セントの差なのだが。
しかし、チップを支払う側でいたときは、チップを面倒くさいとか、やっかいと思っていたが、いざ、自分がチップをもらう側になると、まったく違った感想を抱くようになった。実のところ、これを書いている時点(2005年7月初頭)で、私は、日本食レストランでParttimeとして働いて、すでに2ヶ月以上になった。ウェイトレス・ウェイターではないが、接客の仕事に携わっていて、日常的に、チップをもらう側になってしまった。
チップを払う側の時には、きっちり?15%くらい(少なめに)で払おうと、心がけていたが、もらう側になると、少しくらい多めにくれればいいのになぁ、と思うようになった(苦笑)レストランに来るお客さんの大半は、アメリカ人か、日本人以外のお客さん多い。チップ額は、国別(人種)によって、少し(だいぶ?)違う。おおむね、白人のアメリカ人は多い。おおざっぱに20〜25%くらいくれることが多い。韓国系の人は一般程度で、15%〜20%、中国系の人は、結構ケチで、10%〜15%くらい。日本人の場合は、案外、しみったれているというか、まじめなのか、きっちり15%くらいを払おうとする場合が多いようである(笑)ただ、私の勤め先に来る日系アメリカ人の場合は、オーナーの知己だったり、こちらで成功している人が多いようで、法外?とも思えるほどの金額を置いていく人も少なからずいる。
これは、私の勝手な想像に過ぎないのかも知れないが、恐らく、こういった日系アメリカ人の人(特にお年寄り)は、アメリカに根付いて成功するまで、とても苦労をしたと思う。かつてレストランや工場や農場などで、低賃金で寝食を忘れて働いたのだろう。その時の記憶が(日系のレストランである)私の働き先でのチップの支払額に、微妙に影響しているのかも知れない。
話が外れたが、私が、直接、受け取れるチップは、To Go(テイクアウト)のお客さんからもらえるチップで、あとは、その日のお客さんの入り具合によって、ウェイトレスさん達からの貰えるチップのお裾分け(ウェイトレスさん一人あたり、1〜2ドル程度)である。しかし、その収入とて馬鹿にした物ではない。少ないときでも、日に4ドル程度になり、多い時は、15ドルにもなる。私の時給は、8ドル50セントなので、半時間〜1時間分の時給にも相当する金額が、何もせずとも、懐に入ってくることになる。
ウェイトレスさんのチップでの収入は、聞いたことはないのだが、お客の入り数と、予想される客単価から、おおむね割り出してみた。働いている店は、ランチタイムと、ディナータイムの2つの時間帯があって、ランチタイムの平均的な客数は、80人前後。ディナータイムは、150人前後と言ったところだろう。ラインタイムの客単価は、ランチスペシャル(日替わり定食・サービス品)があるので、ディナーより低めの13ドルくらいだろうか。ディナータイムは、ビールやお酒などの注文がぐっと増えるので、20ドルくらいだろう。(以上の数字は税抜き価格の数字)ランチタイムとディナー、曜日によって、働いているウェイトレスさんの数は違う。通常、ランチでは4人、ディナーでは6人である。、そのため、ウェイトレスさん一人あたり、ランチタイムで20人前後、ディナータイムで25人前後を担当する。この数字を元に、ウェイトレスさん一人あたりのチップ額を勝手に計算してみると(笑)

ランチタイム:
13(ドル/人) × 20(人) × 20(%) = 52(ドル)

ディナータイム:
20(ドル/人) × 25(人) × 20(%) = 100(ドル)

と言うことになる。これとは別に、もちろん、お店から(安いのだが)時給が出る。結構、いい収入になるのだな・・・と、計算してみて思った。

これを執筆している途中、事務所仕事(売上の計算やクレジットカードの事務処理、ウェイトレスさんの売上集計など)を、少し任されるようになった。おかげで、ウェイトレスさん達の(ほぼ)正確なチップ額がわかってしまった(笑)私が上で計算したより多かった。お客さんの入り具合で、変動幅は大きいが、上での計算の額の1.3倍〜1.8倍くらいの額を稼いでいるようだ。そのほかにも、客単価とか、お店の総売上など、色々とわかるようになったが、さすがにこれは言えない(苦笑)