ジャトコ戦 観戦記

平塚競技場も今季三度目ということで、あまり書くことがない。
競技場のある平塚総合公園は「第3回レモンガスまつり」で一部だけごった返していたが、会場となる平塚競技場はというと、「(観客)入ってないですねぇ」が挨拶代わりになるようでは……
ちなみにレモンガスというのはプロパンガスの登録商標です。的屋の露店とは物価が違ってたなぁ。

本日はこの後、国立競技場でシドニー五輪アジア最終予選のタイ戦を観戦の予定。
国体などで日に四試合観戦したことはあるが、会場を移動してのダブルヘッダーというのは初めて。
この後の試合に半分持ってかれている気持ちを、引き留めるような試合を期待したいところである。

横浜FCの布陣
GKは大石。最終ラインは右から幸田、真中、高田、稲垣。
中盤はボランチが成太、右に小野、左に後藤、中央に藪田。前線は有馬と松田。

ジャトコの布陣
GKは油原。最終ラインは右から渡邊、大石、松原、松尾。
中盤はボランチが守備的な森田と攻撃的な河合、右に松橋、左に新村。前線は望月と松木。
太田は前々節のソニー仙台戦で相手選手を足蹴にして、4試合の出場停止(つまり今季絶望)。
それ以外にも岩下、葛野、鈴木といった主力を負傷で欠いているため、前節から4バックに変更して手薄になった中盤に本来はFWの新村を下げるなど、苦心のほどが窺える布陣となっている。

2分
左サイドから藪田がクロスを入れて有馬がヘッドで叩きつけるが、油原が正面で押さえる。

8分
有馬がペナルティエリア内やや左から放ったシュートは油原にブロックされ、さらにいち早く走り込んだ成太がこぼれ球に足を伸ばすが、ゴールの右に外れる。

25分
左サイドの後藤が逆サイドに大きくサイドチェンジし、小野が受けてドリブルで縦に突破する。
小野はさらに中に切れ込んで、左足でカーブをかけてゴール左隅を狙うが、わずかに左に外れる。

30分
右サイドからの松橋のFK。カーブをかけたアーリークロスがゴール前に上がる。
望月が真中に競り勝ってヘッドで合わせたボールは、山なりの軌道を描いてゴール左上に吸い込まれる。
松橋の右足、河合の左足、ふたりはJFL屈指のプレスキッカーといえるだろう。
真中に当たってボールの軌道が変わったようだが、あれだけ完璧に合わせられてはどうしようもない。

27分
クリアボールが顔面に向かってきたため、とっさに腕でかばった有馬がハンドの反則を取られる。
これに異議を唱えて、有馬にイエローカードが出される。
#有馬はレギュラーの中で、唯一警告がなかったのにぃ……

34分
左サイドで小野が粘ってキープし、ペナルティエリアの外に出て振り向きざまに低いクロスを入れる。
松田がディフェンスと競ったこぼれ球を、有馬が左足で狙うが、油原が体を張ってブロックする。

42分
右サイドからの小野のFK。グラウンダーのボールは、なぜか混戦のゴール前を抜けて遠いサイドへ。
待っていた藪田が右足でダイレクトに合わせるが、油原がジャンプして両手で跳ね返す。

43分
油原がボールを投げかけて止めたところ、ぽろっと前方にこぼれてしまい……
まぁシュートはきっちり押さえたんだけど、ペナルティエリアぎりぎりまで出ていたから結構危なかった。

前半の感想
放ったシュートは横浜FCの14本に対して、ジャトコはわずかに3本。
数字の上でも試合を支配しているのは明らかだが、最後の砦・油原にことごとく阻まれる。
そうこうしているうちに、精度の高いセットプレーからあっさり失点してしまった。
いい意味で目についたのが成太。見ているこちらが驚くほどの運動量で、右へ左へ顔を出していた。
悪い意味で目についたのが稲垣。自陣でさばかずに無理にキープしたり、ロングスローが中途半端だったり。
それから届きそうもないボールに対して、競りながら手を挙げるのだけはやめなさい。
イゴールじゃないんだから……

本日のTIFOSI
だめだよ、試合前から横断幕広げちゃ。どこに陣取ったか、探すのが楽しみなのに。
新しい横断幕も持ってきてたみたいだけど、声が出たのは後半も半ばを過ぎてから。
ちなみに人数は推定8人と少なめ。

47分
松田が右サイドに展開し、遠いサイドに上がったクロスに藪田がヘディングで合わせるが、力なく油原に押さえられる。

53分
幸田が右サイドでボールをキープして、前方では中央に松田が、やや右寄りに小野が位置している。
幸田のパスに合わせてジャトコの最終ラインはオフサイドトラップをかけるが、副審の旗は上がらない。
小野がそのまま持ち込んで、油原と2対1の局面から落ち着いて右足のグラウンダーで流し込む。
これは……(絶句)
明らかにオフサイドでしょう、どう見ても松田と小野が取り残されていたもん。
ディフェンスとしたら、あれを見逃された段階でもうお手上げである。

55分
幸田が右サイドから前線にフィードし、松田がヘディングで右前方のスペースに流す。
すでに抜け出していた小野が右足で合わせ、ボールはきれいな放物線を描いてゴールに吸い込まれる。
これも……(絶句)
やっぱりオフサイドでしょう、小野は"走り込んだ"ではなくて"すでに抜け出していた"んだもん。
あの場面では油原は前に出ざるを得ず、ループシュートを狙った判断は素晴らしかったとは思うけど……
#ちなみにこの2分後に松田にパスが渡った際には、きちんとオフサイドと判定された。
#さすがに三度目ともなると、副審も目が慣れてくるのだろう。

62分
選手交代:藪田光教→増田功作
増田は交代出場した直後、自陣に向かってドリブルしたあげく、パスカットされるというていたらく。
この時点で横浜FCの中盤はすかすかだったため、いらぬピンチを招くことになった。

63分
ディフェンスがキープしているボールを有馬が執拗に追いかけ、こぼれたところを松田がかっさらう。
松田はそのまま縦に突破して右足で強烈なミドルシュートを放つが、油原が弾いてコーナーに逃げる。

67分
幸田が右サイド深くから、ゴール前に速くて低いクロスボールを入れる。
遠いサイドに詰めていた増田が、体を倒しながら右足で合わせるが、ボールは上空高く舞い上がる。
なんで増田はこんなにダイレクトで合わせるのが下手なんだ? 一応、登録上はFWなんだろ。
クロスのスピードが予想以上だったとか、ゴールの左に外したとかいうのであればまだ理解できるが、Fマリユースとの試合でもあったように、決まって大きく上にふかすんだよなぁ。
増田と松田がフリーで詰めているのを見たときは、追加点を信じて疑わなかったのだが。
それにしても幸田がエンドライン近くまで上がって、正確な折り返しを見せたのっていつ以来だろう。

71分
選手交代:松木秀樹→井上和昭
選手交代:松田正俊→橋本研一
ジャトコはボールにからんでいなかった松木を下げ、ボランチの井上を投入して新村を前線に上げる。
それはいいとして、橋本を前線の左に投入したことには首を傾げざるを得ない。
いや、正直に言おう。嫌な予感しか抱かなかったと。
もちろん来季を見据えて現有戦力の見極めをしておきたいという、リティの考えは充分理解できる。
橋本にしても、出場機会をほとんど与えられないまま解雇でもされた日には、納得がいかないだろう。
それでも最少得点差の状況で選手を試すというのは、あまりにリスクが大きすぎる。
愛鷹で行われたジャトコ戦、ロスタイムでの失点が私の脳裏をかすめたのだが……

75分
松尾が左サイドを突破してゴール前に折り返し、フリーの新村が左足で合わせてあっさり同点に追いつく。
嫌な予感というやつは大概的中する。しかも嬉しくもないし、周囲に誇るわけにもいかない。
ディフェンスが集中を切らしていた時間帯で、奪われるべくして奪われた得点といえるだろう。
とりあえず増田、ダイレクトに合わせるというのはこういうことだよ。

77分
渡邊がオーバーヘッドでクリアしようとした足が、橋本の顔面をクリーンヒット。

78分
橋本が左サイドから持ち込んで、折り返しを有馬が狙うが、油原が体を投げ出してブロック。
右サイドから走り込んだ小野がこぼれ球を再度狙うが、これも油原にブロックされる。
スーパーセーブを連発する油原には、もう素晴らしいの一言しかない。

85分
ペナルティエリアで橋本がディフェンスと接触し、倒れたディフェンスがボールを抱え込む。
ジャトコボールの判定に激しいブーイングが飛んだが、橋本のファウルを取っただけだろうなぁ。
ちなみに面白かったのがリティの仕種。
主審の判定に頭を抱えたかと思うと、ベンチの外の側面に寄りかかってしまった。

85分
選手交代:稲垣博行→渡辺一平
負傷した稲垣に×印が出されたため、一平がウォーミングアップもせずにユニフォームを着込む。
また負傷しても知らんぞ。なお真中が左サイドにまわり、一平は最終ラインの中央に入る。
真中は左サイドの経験はなかったと思うが……

ロスタイム
後藤がボールを浮かせて、小野がさらにそれを浮かせてループシュートを狙う。
ゴール右上に吸い込まれようかというボールを、油原が戻りながら懸命にかき出すが、ディフェンスのダイビングヘッドでのクリアが、ゴールの中の油原めがけて一直線に飛んでいく。
油原はあわててサイドネットに押しつけるようなかたちでキャッチするが、判定はノーゴール。
このときのブーイングはすさまじかった。確かにゴールラインを完全に割っていたようにも見えたし……
もちろんそれ以前のものと比較して、という意味だが(収容人数の一割にも満たない観衆では……)。
公式ページでは有馬のダイビングヘッドとなっている。確かに有馬の十八番なので、そうかもしれない。

後半の感想
どう見てもオフサイドの2得点と、完全に崩されての1失点。
藪田が退いてからは中盤が機能せず、橋本も実戦から遠ざかりすぎてコンビネーションがばらばら。
稲垣の負傷で完全に足の止まった成太も下げられず、後藤がボランチに下がって必死にカバー。
その後藤と有馬だけにはシュートへの積極性が感じられたが……

中盤の布陣への疑問
開幕直後はトップ下だった中盤の中央が、半ばボランチを兼ねるようになって久しい。
中盤の左右の役割がウイングに近くなって、小野も左サイドでいい動きを見せていた。
この日は成太が先発したので、後藤が左に入って小野は右にまわったのは仕方がないとして、リティが小野を右に残したまま、藪田を下げて増田を左に投入したのはどういうことか。
小野が得意なのは左サイドで、増田が得意なのは右サイドでしょうが。
一時的なポジションチェンジかとも思ったが、結局試合終了まで左には増田が入ったままだった。
なんのためにお互いの長所を消すような布陣を敷いたのか、リティの考えていることは理解できない。

延長戦突入
お、恐れていたことが…… この後、国立競技場に直行しなければいけないのに。
しかも千駄ヶ谷駅に人も待たせているのに。

90分 選手交代:松原忠明→桝谷洋一

102分
成太が最終ラインの裏に抜けてパスを受け、横浜FCの選手が追走し、油原と2対1の局面を迎える。
油原はペナルティエリアを飛び出して、成太の足下めがけて猛烈な勢いで突っ込み、転倒させる。
もちろん主審は油原に対してレッドカードを出す。
油原丈著、退場。
これも……オフサイドだと思うんだよなぁ、私は。
この場面では頭上を抜かれることがなにより恐く、パスを出されても失点していたと思われるので、成太にプレーをさせる時間を与えず、退場覚悟ですかさず潰しに行った判断は正しかった。
PKは免れたし、結果的に成太がピッチに戻れなかったので、人数の上でも互角のままだったわけだし。
成太もせっかくお膳立てしてもらったんだから……

103分
選手交代:望月昭秀→沖田政夫
よかったねぇ、交代枠がひとつ残っていて。横浜FCではこうはいくまい。
そんなこんなで15分ハーフの延長にもかかわらず、ロスタイムは3分。

ロスタイム(108分)
小野が右サイドに展開し、幸田がダイレクトでゴール前にクロスボールを上げる。
有馬のヘディングシュートは沖田がパンチングでコースを変え、クロスバーに当たってエンドラインを割る。

延長前半の感想
ボランチの後藤が右へ左へと大きく展開するが、そこから先の攻め手がない。
成太の足は相変わらず止まっていて、動いたと思ったら油原に道連れにされてしまった。

横浜FCの布陣変更
前線の左に小野を上げて有馬と組ませ、橋本を中盤の右、ともするとボランチとも取れる位置まで下げる。
改めて確認しておくと、中盤はボランチが後藤、右が橋本、左は相変わらず増田。前線が有馬と小野。
橋本は動きにキレがなく、左サイドはほとんど崩せていなかったので、この判断は正しい。

108分
ペナルティエリア内から、松橋が体を倒しながらシュートを放つが、右のポストに嫌われる。

110分
ゴール正面やや左からのFK。一平が右足で蹴ったボールは、美しい弧を描いてゴール右上に吸い込まれる。
は? 直接? 一平が?
だって誰が見ても一平はボールをまたぐだけで、後方に控えていた後藤が蹴ると思うじゃん。
実際、壁はまったく反応していなかったし、沖田の反応も鈍かったようだし。
冷静に考えれば「なんで一平がボールのところにいるんだ?」という疑問が沸くはずなのだが。
一平が蹴る直前に有馬と言葉を交わしていたが、おそらく「狙ってみれば」とでも言われたのだろう。
まぁなにはともあれ、疑問と驚愕が錯綜するVゴールであった。
しかし、まさか一平の横浜FCでの初ゴールが、ヘディングではなく右足から生まれるとはなぁ。

右足で蹴る選手しかいなかったことを考えると、沖田が壁の位置を少し修正すべきだったかもしれない。
もっともこのFKも、小野がドリブルで突破するコースにディフェンスが体を入れただけで、「今のどこがファウル?」というものだっただけに、敗れたジャトコも納得がいかないだろうなぁ。

本日の審判
後半に少なくとも二度オフサイドを見逃して、横浜FCの得点に貢献したバック側の峯下泰弘、延長前半にオフサイドを見逃して、油原の退場と成太の負傷の要因をつくったメイン側の濱口和明。
いずれの判定も不安定極まりなく、試合の結果に大きな影響を及ぼしていた。
濱口和明は1994年から三年間、国際副審をつとめていたっけか。本職じゃ言い訳は効かないよなぁ。
主審の下村昌昭の判定は、後半終了直前まではそれなりに安定していたのに。
ロスタイムでの判定を巡って、ちょっとどたばたしたけどね。

油原丈著
延長前半に退場でピッチを去るまで、横浜FCが放った30本以上のシュートをことごとく防いだ守護神。
厳しいコースに飛んだボールをきっちり枠の外に弾き出し、判断いい飛び出しでシュートコースをブロック。
神憑り的なプレーを連発していた。
はたして副審の助けなしに得点できたかどうか、大いに疑問の残るところである。
対戦相手の採点はしていないが、退場したことを差し引いても"8"以上は確実だろう。
なお急遽出場した沖田も、素晴らしいセービングを見せていたことを付け加えておく。

井上和昭
経歴を見ると、横浜フリューゲルスと清水エスパルスに在籍していたらしいが、いつのことだ?
横浜フリューゲルスにいるあなたを見た記憶は、私にはないんだけど。

ジャトコ 評
決定機と呼べるものはわずかに三度。全部決めていれば、Vゴール勝ちだったんだけどねぇ。
前々節のソニー仙台戦では、前半の主審の明らかな誤審をめぐってソニー仙台が試合放棄寸前まで行き、後半は穴埋めのつもりか不条理な判定が続出し、太田を退場で失った上に1−5と大敗。
この日もオフサイドを見逃されて、勝てる試合をみすみす落としてしまった。
ひょっとして、横浜FC以上にJFLの審判に悩まされているのかもしれない。

選手個々の評価
GK大石尚哉  5.5 ………失点は彼の責任ではないだろうが、修正できなかったのは確か。
DF幸田将和  6.5 ………アシストも記録したし、クロスの精度も上がってきたので、復調かな。
DF真中幹夫  5 ………マークのずれと集中の切れから失点を招く。左サイドの守備は無難にこなす。
DF高田昌明  6 ………ラストパスやシュートをブロックできるのは、読みが鋭いからなのかなぁ。
DF稲垣博行  5 ………攻撃に多くは望めず、かといって守備も安定せず、左の手薄さを露呈。
MF高木成太  4.5 ………体力配分に問題。ハーフタイムプレイヤーではあるまいし。
MF後藤義一  6.5 ………成太のカバーに奔走し、両サイドに正確なロングパスを供給。
MF小野信義  7.5 ………攻撃の起点として随所に顔を出し、疑惑の判定ながらも2得点は見事。
MF藪田光教  6 ………大して効いていないように思えたが、彼を下げたらもっと悪くなった。
FW有馬賢二  7 ………油原のブロックさえなければ、確実に2、3点は取れていただろう出来。
FW松田正俊  6.5 ………くさびになったりパスコースを増やしたり、地味ながらも効いていた。

MF増田功作  4.5 ………不慣れな左サイドでいい動きはなし。ダイレクトボレーは要練習。
FW橋本研一  4 ………スピード不足でラストパスの精度も低い。試合勘が全然戻っていない。
DF渡辺一平  6.5 ………言いたいことは一杯あるけど、FKには度肝を抜かれました。

監督
リトバルスキー 3 ………疑問の残る選手交代と中盤の布陣。監督の采配で勝ち点1を失った試合。

横浜FC
前半ジャトコ
後半
延長前半
延長後半
会場:平塚競技場/観衆:1813人
得点:0-1 望月昭秀(30分、アシスト=松橋力蔵)
   1-1 小野信義(53分、幸田将和)
   2-1 小野信義(55分、幸田将和、松田正俊)
   2-2 新村泰彦(75分、松尾昌則)
   3-2 渡辺一平(110分、FK)

横浜FCジャトコ
GK大石尚哉GK油原丈著
DF幸田将和DF渡邊俊二
DF高田昌明DF大石信幸
DF真中幹夫DF松原忠明
DF稲垣博行DF90桝谷洋一
DF85渡辺一平DF松尾昌則
MF高木成太MF河合崇泰
MF後藤義一MF森田直樹
MF小野信義MF松橋力蔵
MF藪田光教MF新村泰彦
MF62増田功作FW望月昭秀
FW有馬賢二GK103沖田政夫
FW松田正俊FW松木秀樹
FW71橋本研一MF71井上和昭
SUB吉田明博SUB永田秀士
SUB高尾敬治SUB三枝正和

注釈:時間は手元の時計で計っていますので、1分程度の誤差はあります。

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