本田技研戦 観戦記

シドニー五輪アジア最終予選、カザフスタン戦のチケットを取るために、時間ぎりぎりまで自宅で電話。
しかもつながらず…… チケットは結局譲っていただけることになりましたが(ありがとうございます)。
結果、競技場への到着はキックオフ直前になったため、ソシオレディースの試合は観れませんでした。

バス七台で浜松から──という事前情報は大嘘だったが、それでも横浜近郊からかなりの人数が駆けつけ、前回は立入り禁止だったバックとアウェイゴール裏も、この日は開放されていた。
もちろんアウェイゴール裏に陣取ったのは、浜松から駆けつけたと思しき本田技研サポーター。

陽射しは九月下旬とは思えないほど強く、観戦場所の視界も充分ではなかったため、横浜FCの観戦記では初めてSKY PerfecTV!で放映されたビデオに頼ることにしました。
テープを貸していただいたふりえのお父さん、ありがとうございました。

横浜FCの布陣
GKは吉田。最終ラインは右から幸田、高田、稲垣、公文。
中盤はボランチが後藤と高尾、右に重田、左に小野。前線は松田と藪田。
真中、高木、増田を出場停止で欠く一方、松田が初先発、公文の復帰といった明るい話題もある。
またセンターラインの薄さをカバーするため、今季初めて中盤にダブルボランチを採用した。

本田技研の布陣
GKは水原。最終ラインは右から大久保、森、向島、吉澤。
中盤はボランチが安間と前田、右に井川、左に井幡。前線はマルクスと鈴木。
マルクスを先発で起用してきたあたり、本田技研のこの試合に賭ける意気込みが感じられる。

5分
センタースポット付近からのFKを、稲垣が右サイドの重田に大きく展開する。
重田は中に切れ込んで吉澤を振り切り、左足でゴール右隅を狙うが、水原にしっかり押さえられる。

7分
左サイドから、井幡のロングスローがゴール前に上がる。
ディフェンスが跳ね返したボールを池田がダイレクトで合わせるが、クロスバーのはるか上を越える。
すかさずTIFOSIからは「ホームラン、ホームラン、い・け・だ」のコールが。
井幡のロングスローはスピードがあって到達距離も長く、対戦相手にとっては大きな脅威となる。

10分
幸田の無理な体勢からのクリアがマルクスにカットされ、さらに稲垣がこぼれ球をクリアし損なう。
井幡が拾って右足で強烈なミドルシュートを放つが、吉田が横っ飛びで弾いてコーナーに逃げる。
稲垣は戻りながらのプレーだったので、足を出すだけで精一杯だったとして、そもそも幸田のトラップが大きすぎたのがすべての発端。
芝が悪いんだから、浮き球(しかも味方のバックパス)くらいはきちんと処理してもらいたいもの。

14分
森と松田がヘディングで競り合って浮いたこぼれ球を、藪田がやわらかいタッチで左の小野に出す。
小野は反転して前を向き、やや外に流れながら左足で狙うが、クロスバーを大きく越える。
ペナルティエリア内でディフェンスを振り切っていたので、ちょっとシュートを焦った感がある。

17分
鈴木が左サイドを突破して、幸田をあっさりかわして低いクロスを入れるが、高田の腿に阻まれる。

18分
右サイドから入った低いアーリークロスを受けて、井幡がゴール前で反転して抜きにかかったところ、ぴったりマークしていた高田の体に引っかかって転倒。
審判の笛が吹かれ、続いてその右手がペナルティスポットに向けられる。
「あんなんでPK取られたんじゃ、DFなんてやってられっかよ」
吐き捨てるような声が今にも聞こえてきそうである。
もっとも間にいた後藤なり公文なりが、クロスをカットしていればなにも問題はなかったのだが。

19分
井幡が吉田の動きをよく見て、PKをゴール左下に落ち着いて蹴り込む。

24分
小野が左サイドでスルーパスを通し、藪田がドリブルしてゴール前にグラウンダーのクロスを入れる。
ディフェンスと重なった松田にはわずかに合わず、オーバーヘッドでクリアされる。
遠いサイドに走り込んだ重田までボールが流れれば……というのはあまりに相手に失礼か。

26分
松田が左サイドで粘って、ディフェンスをかわしてゴール前に低くて速いクロスを入れるが、水原が判断よく飛び出して、パンチングで前方に大きく弾く。

37分
自陣右サイドから重田がドリブルで上がり、またぎフェイントで揺さぶりながら中に切れ込み、最終ラインの裏へ通そうとするが、ディフェンスに阻まれる。
本田技研もふたりほど振られていたが、それでもゴール前は数的優位だったので脅威にはならなかった。
横浜FCにボールをもらいに行く動きも見られなかった。というか、戸惑ってたのかも。

41分
右サイドからの幸田のFK。遠いサイドで松田がヘディングで合わせて、藪田がさらに流すようなヘディングで方向を変えるが、ゴールの左に外れる。

前半の感想
グラウンドコンディションと審判の判定の酷さについては、別項でたっぷり語るのでそれ以外で──
松田の高さを活かすべき試合にもかかわらず、一向に彼にボールが集まらない。
重田がドリブルで右サイドを崩し、派手さはないが小野も左サイドから効果的なパスを送るのだが、肝心のフォローがなく、前線で選手を孤立させてしまっている。
守備陣にも単純なミスが多発し、全体的にちぐはぐな印象を与えている。
PK? あれは野良犬に噛まれたみたいなもんでしょ。

本日のTIFOSI
前回追い出された、念願のバックのテニスコート前に陣取ることができた模様。
前半から積極的に声を出し、後半開始直後には飛ぶわ跳ねるわの大活躍。
ちなみに私の前に座っていたFC東京サポに大ウケしていた。どうやら波長が合うらしひ。

本日のグラウンドコンディション
最悪。
芝は大部分が禿げ上がっており、地肌が完全に露出している部分も見られる。
明らかに緑色よりも茶色のほうが目立ち、その緑色にしても伸び切った雑草が多々交じっている。
草サッカーならともかく、とてもじゃないがトップレベルの試合ができる状態ではない。
ボールがぽんぽん跳ねたり、不規則なバウンドをするグラウンドで、細かいパスがつながるわけがない。
夏の間に手入れを怠ったか、それとも体育祭のような芝の痛むイベントでも開催されたか。
七月に訪れたときもきれいに見えて結構荒れてはいたが、ここまで酷くはなかった。
会場を提供したもらったことには感謝するが、もう一度ここに戻ってくるかと思うと正直気が重い。

45分
選手交代:高尾啓治→有馬賢二
藪田をトップ下に下げて前線を松田と有馬で組ませ、ボランチを一枚にして本来の布陣に戻した。

49分
右サイド、センターライン付近からの小野のFK。裏へ抜け出した有馬にボールが渡るが、判定はオフサイド。
はぁ? どこをどう見たって、向島がひとり残っていたのは明らかじゃん。

49分
自陣からのロングフィードを、鈴木が稲垣を背負いながら巧みなポストプレーで井幡にさばく。
井幡は右サイドを突破して右足で狙うが、アウトにかかってしまいゴール右に外れる。

50分
小野がヘディングで前方に流し、松田が森と向島の横からミドルシュートを放つが、ゴール左に外れる。

53分
敵陣でのFKから右サイドに展開し、大久保がドリブルで中に切れ込んで藪田と公文をかわすが、左足のミドルシュートはゴール左に外れる。

65分
水原のゴールキックは重田に向かって一直線。ジャンプして頭で合わせたボールは最終ラインの裏へ。
松田が抜け出して向島を振り切り、右足で豪快に蹴り込んで同点に追いつく。
ゴールキックの際はどうしても緊張が緩むものだし、反応できなかったディフェンスは責められない。
重田のヘッドがきれいに返ったのは、まぁ偶然だとは思うが。
それにしても横浜FCは劣勢になると、計ったかのように棚牡丹(たなぼた)な得点が舞い込むよなぁ。

67分
最終ラインのクリアボールが横浜FCの最終ラインの裏まで到達し、マルクスが抜け出すが、幸田が後方から腕でマルクスのバランスを崩しながら、蹴り出してコーナーに逃げる。

68分
右サイドからのFK。重田の素早いリスタートから、藪田が左足で強烈なミドルシュートを放つが、水原が横に飛んでかろうじてエンドラインに弾く。

69分
上記のプレーで得た、小野の右CK。
松田が近いサイドに走り込みながら、森を振り切ってヘディングで合わせ、ゴールに叩き込む。
手元のメモには得点経過を差し置いて、まず「さすが市船、今が旬」と記してある。
#市立船橋高校出身の選手は、とかくプロに入ってから伸び悩むことが多いので。
#高田昌明はその"はしり"といえるかもしれない。だから松田を観るなら今だよ、というわけ。

73分
選手交代:稲垣博行→渡辺一平
井幡と競り合った際に足をつって×印の出された稲垣に代わり、四ヶ月半ぶりに一平が出場。
てっきり員数合わせかと思っていたが、コメントを聞く限りは似たようなものらしい。
ほとんど実戦練習はしていない、ってんだからちょっと呆れる。

75分 選手交代:井川剛志→田島宏晃

76分 選手交代:藪田光教→パベル

78分
公文のヘディングが田島の頭に当たってタッチラインを割り、リティがボールを足で押さえる。
しかし主審は本田技研ボールと判定し、田島がリティからボールを強引に奪ってスローインしようとする。
リティは田島に詰め寄るが、ベンチから出てきた人々に制されて、苦笑を浮かべつつベンチに戻る。

リティは明らかな誤審に怒ったのか、それとも突き飛ばした田島に怒りを覚えたのか。
前者だと思ったからこそ「審判がヘボなんだから放っておけよ!」と野次を飛ばしたのだが、画面で見ると後者のような気もしないではない。
それよりも勢いよくベンチを飛び出して、阪倉コーチに追い返された藪田の印象が強くて強くて。

79分
自陣のパベルから最前線の松田を経由して重田に渡り、重田がドリブルで中央を突破。
森の横を抜ける際に、森の残った右足に引っかかって転倒するが、主審は本田技研ボールを指示。
主審は転倒した際に重田の手がボールに触れたことか、もしくはオーバーアクションを取ったのだろうが、百歩譲って仮にそうだとしても、いったんプレーを止めて治療を許すか担架を要請すべきだった。
少なくとも本田技研が横浜FCの自陣深くまでボールを運ぶ前に、だ。
なんとか復帰を果たしたものの、一度はドクターから×印が出されるほどの負傷だったのだから。

86分
自陣深くからの高田のクリアを、自陣で小野がさらにクリア。
このボールが上がり気味の向島と下がり気味の森の間を抜けて、上がっていく松田に渡る。
松田はペナルティエリアの直前で右足でシュートするが、前に出てきた水原にブロックされ、こぼれ球を拾ったパベルのミドルシュートも、森のスライディングにブロックされる。
松田はハットトリックの絶好のチャンスだったが、ちょっとシュートが素直すぎたか。
小野から松田につながったのは偶然だよなぁ、いくらなんでも。

88分
ゴール正面からのパベルのFK。右足で壁を越えてゴール左を狙うが、水原に簡単に弾かれる。
コントロールは素晴らしいが、あのスピードではゴールを割るのは難しいだろう。

ロスタイム
右サイドを突破した大久保のドリブルが流れ、ペナルティエリア内で戻った後藤が左足でクリア。
カーブがかかってタッチラインを割ったボールを、背番号13のボールボーイの少年が足の裏で押さえる。
リティが少年を誉め、メインから拍手が送られる。
実際にはちょっと流れたけど、それでも自分の足下に押さえた技術は素晴らしいと思う。

後半の感想
最終ラインと前線が間延びして、ロングボールの応酬になったのは致し方ないだろう。
それほど諸条件が悪かったわけだが、どちらかといえば本田技研の運動量の低下に救われた感が強い。
松田の得点はいずれも素晴らしかったが、本田技研のディフェンスを決定的に崩したわけではない。
これを数少ないチャンスを物にしたと見るか、攻撃に工夫がないと見るかは難しいところである。

本日の審判
主審の上荒敬司、バックを担当した副審の暈良基。
このふたりが試合を混乱させ、つまらないものにした張本人である。
細かいファウルで試合をぶちぶち切る一方、潰された重田がファウルを取ってもらえなかったこと二度。
横浜FCのハンドや、ペナルティエリア目前で公文が相手を倒したといった明らかなファウルは見逃され、副審も本来いるべきオフサイドラインに姿はなく、誤審と思われるものが数多くあった。
とまぁ、枚挙に遑(いとま)がないのである。

上荒は1996年からJリーグで副審を務めており、FIFAの国際副審だそうだが……正気か、FIFA?
しかも昨年のJ.LEAGUE AWARDSでは、二年連続で受賞していた廣嶋禎数(次節の主審)を差し置いて、優秀副審賞の栄誉に浴しているときたもんだ……まぁ、副審と主審は完全に別物ではあるが。
この試合がJリーグの試験だったそうだが、この程度で舞い上がるようでは先が思いやられる。
悪いことは言わない、一生副審をやってなさい。Jリーグのサポーターが迷惑する。
#ただでさえ、サポーターが迷惑するような主審が闊歩しているというに。
越山賢一とか、北村央春とか……(もう二、三人は挙げられるが、実際に生で観てないので割愛)

松田正俊
昨年の「かながわ・ゆめ国体」では、優勝した千葉県代表に注目して一回戦からずっと観ていただけに、主力選手のひとりであった彼には、ひとしおの思い入れがある。
確かに足下の技術はまだまだ未熟だし、全体的に粗削りな感があるのは否めない。
習志野の吉野智行、菅野拓真、玉田圭司、市立船橋の西紀寛などと比較すると、やはり見劣りするとは思う。
それでも長身を活かした打点の高いヘディングと、右足から繰り出される強烈なシュート、そしてなにより得点感覚の素晴らしさには、当時から目を見張るものがあった。
FC東京からのレンタル移籍、しかもサードステージ終了までの三ヶ月という短い期間ではあるが、その高さは横浜FCの攻撃にバリエーションをもたらしてくれるはずである。
来年も貸してくれないかなぁ……鏑木豪も順調に育ってるしさぁ……レンタルするにしてもJ2かなぁ……

井幡博康
演技賞をあげやう。
倒れ方が巧妙で、露骨に時間稼ぎをしていたというか、二匹目のどじょうを狙っていたというか──
中学卒業と同時にブラジルに渡り、パレストラ・デ・サンベルナードで一年間プレーしていただけあって、テクニックだけでなくマリーシアもしっかり身につけてきたようだ。
ロングスローという武器もあり、ボランチの安間と並んで本田技研の中盤の要となる選手である。

本田技研 評
前半は互角の戦いをしていたとは思うが、後半目に見えて運動量が落ちた。とくにマルクスと井幡。
にもかかわらず、逆転されるまでベンチに動きは見られず、あわてて田島を投入してみたもののすでに遅きに失した感が強く、ほとんどチャンスらしいチャンスもつくれないまま試合終了を迎えた。
現時点でのベストメンバーなのは理解できるのだが、敗因はやはりベンチワークの拙さだろう。
松田佑也が見たかったなぁ……(ジェフユースのころからのお気に入り)

選手個々の評価
GK吉田明博  6.5 ………危なげないセービングを見せ、上海での評価の高さを窺わせた。
DF幸田将和  5 ………トラップミスが多く、重田とかみ合っていない……というか信用されてない?
DF高田昌明  5.5 ………戻りながらのクリアは安定していた。あのPKはなぁ……
DF稲垣博行  6 ………空中戦は確かに強いが、サイドに引っ張り出されてスペースが空くことも。
DF公文裕明  5.5 ………後藤と組んでの上がりはいいが、単純なパスミスが目立つ。
MF重田征紀  6.5 ………自陣からのドリブル突破で見せてくれるが、フォローがなく展開できていない。
MF後藤義一  5.5 ………中盤で不用意な奪われ方もしたが、オーバーラップのタイミングはいい。
MF高尾敬治  5.5 ………いい意味で堅実、悪く言えば目立たない。記憶に残らないんだよなぁ。
MF小野信義  6.5 ………トップ下よりも、左サイドに開いているほうが向いていると思う。
FW松田正俊  7 ………別項参照。
FW藪田光教  6.5 ………中盤に下がってからは、視野も広くなり左右に効果的にボールを散らしていた。

FW有馬賢二  6 ………終盤に股抜きで見せてくれたが、足の状態は結構悪かったようだ。
DF渡辺一平  5.5 ………セットプレーで上がるのはいいが、悠長に戻りながら指示を出すのはやめれ。
FWパベル   5.5 ………明らかに調子が落ちている。プレッシャーがなければいいパスを出すのだが。

監督
リトバルスキー 6 ………ダブルボランチは一朝一夕にできるものじゃない。松田の先発起用で相殺かな。

横浜FC
前半本田技研
後半
会場:綾瀬市民スポーツセンター陸上競技場/観衆:2292人
得点:0-1 井幡博康(19分、PK)
   1-1 松田正俊(65分、アシスト=重田征紀)
   2-1 松田正俊(69分、小野信義)

横浜FC本田技研
GK吉田明博GK水原大樹
DF幸田将和DF大久保貴広
DF高田昌明DF森 智浩
DF稲垣博行DF向島 満
DF73渡辺一平DF吉澤英生
DF公文裕明MF井川剛志
MF重田征紀FW75田島宏晃
MF後藤義一MF安間貴義
MF高尾敬治MF前田仁崇
FW45有馬賢二MF井幡博康
MF小野信義FWマルクス
FW松田正俊FW鈴木 滋
FW藪田光教SUB浜野征哉
FW76パベルSUB石橋眞和
SUB大石尚哉SUB安池貴志
SUB根子達也SUB松田佑也

注釈:時間は手元の時計で計っていますので、1分程度の誤差はあります。

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