シドニーオリンピック アジア地区最終予選 グループ3
日本−タイ 観戦記

一平のインタビューもそこそこに、平塚競技場を後にして国立競技場へ向かう。
千駄ヶ谷駅で待たせていた後輩の友人とも無事合流し、みなの待つアウェイ側ゴール裏へ。
せきとり、ありがとうございました。

ちなみにこの日の「君が代」独唱は、J−WALK。

日本の布陣
GKは曽ヶ端。フラット3の最終ラインは中央に宮本、右に中沢、左に中田浩二。
中盤はボランチにヤット(遠藤)と稲本、サイドハーフは右に明神、左に本山。
中田英寿のいない中央には中村俊輔が入り、福田と高原が前線に位置する。

タイの布陣
GKはウィラット。
最終ラインは後方にニルツがひとり余り、右からアピチェット、カネー、ナラット、タノンサク。
中盤はボランチにキサナ、左のティーラサクはやや守備的、そして右にイトサレット。
前線はジャトポンとスティー。

9分
右サイド、タイ陣内の中ほどからの中村のFK。左足で蹴ったボールは、カーブを描いてゴール前に上がる。
走り込んだ高原がバックヘッドで合わせるが、飛び出したウィラットが両手で弾く。
落ちてきたところを、急制動をかけた福田がオーバーヘッドを狙うが、さすがに足は届かず。
ディフェンスがタッチラインに蹴り出す。
ボールを見て足が止まってしまったディフェンスと、GKウィラットの間に上がった絶妙のボール。
高原の体勢が充分ではなかったのと、目前までウィラットが迫っていたため、ゴールにはならなかったが。

11分
中央やや左、ペナルティエリアのすぐ外にいる中村が、向かってきたディフェンスのクリアボールをトラップひとつでディフェンスの間を通し、自らもボールを追って縦に突破する。
ツータッチでゴールエリアにまで迫り、左足でグラウンダーのシュートを放つが、ゴールの右に外れる。
シュートコースを消しに行ったディフェンスの動きを見て、できたスペースをすかさず突く判断力。
トラップでふたりを抜いて、次のタッチでさらにひとりをかわして、そしてシュート。
ボールタッチがやわらかくて、動きそのものもしなやかだよね、中村は。

25分
自陣からニルツが最終ラインの裏にふわっとしたボールを蹴り、イトサレットが2列目から飛び出す。
中田浩二に体を寄せられる前に、左足で浮かせて曽ヶ端の頭上を狙うが、ゴール左に外れる。
オフサイドの位置にいたジャトポンとスティーは、たんたんと戻ってプレーに関与しないことをアピール。
だからパスの出し手にプレッシャーをかけずに、オフサイドトラップを仕掛けるのは危険だって。

28分
右サイド、11分のプレーとほとんど同じ位置からの中村のFK。
同じようなボールに、同じように高原がヘッドで合わせるが、クロスバーを越える。

36分
宮本のセンターサークルからのフィードに、高原がペナルティエリア内右サイドに抜け出して、ダイレクトに右足で合わせるが、クロスバーのはるか上を越える。

ロスタイム(46分)
タイ陣内で本山がボールを奪い、高原(福田?)から中村へ戻される。
その間を利用して左サイドを駆け上がった本山に、中村から正確なパスが送られる。
本山はダイレクトで左足を振りぬくが、ゴールの右に外れる。

前半の感想
危ない場面は一度か二度、もちろんボールを支配しているのは日本だが、どうにもリズムが悪い。
福田と高原にむやみにくさびのパスを入れたり、こらえきれずにゴール前にクロスボールを放り込んだり。
人数が足りていないので、みすみす相手にボールを渡してしまっている。
タイはゴール前を固めているという印象はないが、守備にはやはり多くの人数を割いており、そしてなによりボールを持った選手へのチェックが早い。
日本のシュートが枠に飛んでいないのも、気がかりなところである。

45分
選手交代:福田健二→平瀬智和
福田は前半の出来を考えれば、交代もやむなし。

48分
ヤットの左CK。右足から放たれた速いボールに、近いサイドの平瀬がヘディングで合わせ、クロスバーをかすめたボールがゴールネットを大きく揺らす。
後半開始直後から中田浩二が、明神が、そしてヤットが次々に上がり、日本がペースを握った。
そんな中、ヤットのクロスから生まれたCK。高原の前にいた平瀬が見事にこれを叩き込んだ。
タイも集中を切らしていたんだろうなぁ、あれだけフリーでシュートを許すんだから。

54分
左サイドからの本山のスローイン。
いったん中村に預けてリターンをもらい、イトサレットをかわして左サイドを鋭くえぐる。
ゴール前に低く折り返し、フリーの平瀬が左足ダイレクトで合わせて追加点をあげる。
ディフェンスが一斉に下がってゴール前を固め、ペナルティスポット付近にぽっかりとスペースが空く。
そこにするりと入り込んだ平瀬。低く押さえたシュートもさることながら、その感覚の鋭さを評価したい。
アピチェットが外に出されてひとり少なかったことも、タイには災いした。

58分
自陣深くで日本がボールを奪い、中村が左サイドのオープンスペースに大きく展開する。
走り込んだ平瀬がきっちりコントロールして、ペナルティエリアに入ってカネーと対峙。
縦方向に動いてカネーを外し、エンドライン手前から左足で低く折り返す。
高原が走り込んで左足で合わせ、立て続けに追加点をあげる。
ゴール前に揃っていた3バック。カネーは平瀬を追い、中央のニルツもつられて下がる。
結果的にまたもやスペースが生じ、3バックとは距離を置いていた高原がすかさず走り込む。
もちろんGKウィラットは近いサイドのポストを固めているから、あとは合わせるだけ得点になる。
素晴らしいです、はい。

59分
左サイドから放り込まれたボールを、中田浩二が戻りながら左足でクリア。
高く上がってあまり距離が出ず、落ちてきたところを本山が中田浩二に戻す。
これをトラップし損ない、ジャトポンが拾って右足で豪快にゴール右に蹴り込む。
明らかに本山の判断ミス。左足で戻すのではなく、右足でクリアすれば問題はなかった。

60分 選手交代:イトサレット→イッサワ

67分
右サイドの明神がスルーパスを通し、平瀬が外に開いてこれをもらう。
高原が中に入ってディフェンスを引きつけ、フリーになったヤットに平瀬のクロスが入る。
胸でのトラップが流れてしまい、シュートには至らず。

78分
選手交代:本山雅志→戸田和幸
戸田を最終ラインに入れて中田浩二を左に出すのではなく、戸田はそのまま本山の位置へ。
左アウトサイドはエスパルスでは経験があるが、代表では練習したことすらないらしひ。

80分
選手交代:中村俊輔→藤本主税
小笠原の調子が上がらないため、合宿に追加招集された藤本。
個人的に大好きな選手なので、彼の出場はなにより嬉しかった。

82分 選手交代:ナラット→プレタラット

83分
ゴール正面やや左からのFK。ニルツが右足で直接狙うが、曽ヶ端に両手で押さえられる。
コースはよかったが、ボールにスピードがない。曽ヶ端も飛ぶタイミングをしっかり計っていた。

88分
藤本が中盤でためをつくり、前方にグラウンダーのパスを出す。
高原がディフェンスをやり過ごし、ペナルティエリア右サイドから右足で強烈なシュート。
ウィラットがなんとか体で押さえる。

89分 選手交代:ジャトポン→バムルン

ロスタイム(91分)
藤本が左サイドでボールを奪い、ドリブルでペナルティエリアに切れ込む。
後方から足をかけられて倒されるが、主審の笛は鳴らない。

ロスタイム(92分)
藤本がヒールで左サイドのスペースに流し、藤本が走り込むのを待って平瀬がゴール前に折り返す。
これはカネーにカットされるが、足を伸ばして高原がこぼれ球を戻し、藤本が右足でシュート。
わずかにゴールの左に外れる。

後半の感想
結局のところ、失点を許すまでの13分間だけだったよなぁ……
以後は攻撃のかたちはつくれるのだが、どうしてもシュートまで行けない。
終盤、途中出場した藤本がかき回すことによって、ようやくシュートが撃てるようになった。
この日のタイが相手であれば、2点差はセーフティリードではあったが。
しかし日本の左サイドからの攻撃には、思わず惚れ惚れと見入ってしまうよなぁ。

遠藤保仁
ナイジェリアで行われたワールドユースで、一皮も二皮も剥けたガチャピン……じゃない、ヤット。
右サイドからカーブをかけたアーリークロスの精度も高いので、アウトサイドでも起用できるかも。
中田英寿も小野も不在のため、トルシエに指名されてプレスキッカーもつとめた。
球筋が素直すぎるきらいはあるものの、キックの精度は高く、平瀬の先制点を演出した。
決定機を逃すなど不満も残ったが、日本の中盤に欠かせない選手に成長したことを改めて実感した。

日本

前半タイ

後半
会場:国立競技場/観衆:54678人
得点:1-0 平瀬智行(48分、アシスト=遠藤保仁)
   2-0 平瀬智行(54分、本山雅志)
   3-0 高原直泰(58分、平瀬智行)
   3-1 ジャトポン(59分)

日本タイ
GK曽ヶ端準GKウィラット
DF中沢佑二DFアピチェット
DF宮本恒靖DFカネー
DF中田浩二DFニルツ
MF明神智和DFナラット
MF稲本潤一DF82プレタラット
MF遠藤保仁DFタノンサク
MF本山雅志MFキサナ
DF78戸田和幸MFイトサレット
MF中村俊輔FW60イッサワ
MF80藤本主税MFティーサラク
FW福田健二FWジャトポン
FW45平瀬智行FW89バムルン
FW高原直泰FWスティー
SUB南 雄太SUBワチャラポン
SUB酒井友之SUBウドム
SUB小笠原満男SUBクワンチャイ
SUB小島宏美    

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