コンサドーレ札幌戦 観戦記

コンディション
積もった雪はかき出したものの、グラウンドは水を含んでおりボールの転がりはさらに悪い。
気温の低さもさることながら、ポールも揺れるほどの強風が吹き荒ぶ。
フリエのゴール裏は、その風を真正面から受ける格好になるため、体感温度が予想以上に低い。

選手入場
バックスタンドとゴール裏のコンサドーレサポーターから、真紅の紙テープが一斉に投げ込まれる。
その数、およそ600本。それはもう美しい光景でした。
事前に情報を入手していたので、驚けなかったのが残念。芯抜き作業、おつかれさまでした。

出れない人たち
フリエでは永井と前田浩二が、コンサドーレでは黄川田とバルデスが、累積警告のため出場停止。
サンパイオも出場していないが、前日の練習にも参加していなかったので負傷と思われる。
フリエは永井の位置に久保山を下げ、イゴールと吉田を前線に並べる布陣。
前田浩二に代わって原田が最終ラインをコントロールし、氏家はボランチに入ってマラドーナをマークする。
コンサドーレは、黄川田の位置に村田、エースストライカー・バルデスの代役は関がつとめる。
フリューゲルスからレンタルで移籍した埜下荘司も、センターバックで先発出場。
なんとも粋な采配ぢゃないか。

9分
左サイドからのFK。マラドーナがゴール前へ上げ、関がヘディングで合わせようとするが、わずかに及ばず、そのままゴールラインを割る。

11分
右サイドのオープンスペースにボールが出され、オーバーラップする埜下が追う。
懸命にスライディングするもわずかに届かず、ボールはタッチラインを割る。
埜下は戻りざま、笑顔でテクニカルエリアに出ていたエンゲルス監督と軽く手を合わせる。
なんかいいもん見た。

15分
アツが左サイドから中央のぽっかり空いたスペースに出し、イゴールがゴール前にはたく。
オフサイドぎりぎりで抜け出した久保山が左足で合わせるが、判断よく飛び出したディドがブロック。
守備範囲の広さはさすがに一級品。そのぶんポカも多かったりするわけだけど。
久保山もディドと1対1になったにしては、素直すぎるシュートだった。

17分
マラドーナがセンターサークルから左サイドの関に出す。
関は縦に突破して、マークについた尽をフェイクでかわす……と見せて、後方から上がってきた村田に左足のアウトサイドでちょこんと出す。
村田が角度のないところから左足でシュートを放つが、ニアサイドに寄っていたナラがコーナーに逃げる。

17分
その左CK。マラドーナがゴール前に低いボールを入れる。
ニアサイドのイゴールがかかとを出してクリアしようとするが、届かず。
ゴール前の宏太は反応できず、ボールはそのまま素通りしてしまう。

23分
波戸が右サイドからアーリークロスを上げる。
イゴールが見送って、吉田が胸でトラップして右足でシュート。
ディドの股間を抜いて、ゴールネットに突き刺さる。
イゴールが埜下を引きつけており、ゴール前に走り込んだ吉田と山口は完全にフリー。
梶野以下、コンサドーレのディフェンスはどこで何をしていたんだか。
ゴール真正面から1対1でシュートされたのでは、ディドも打つ手がないだろう。
ゴール前の数的優位を見て取って素早くクロスを上げた波戸と、冷静にスルーしたイゴールの好判断が、吉田のゴールにつながったといえる。
久しぶりに「ゲットゴール吉田」コールをする。セレッソ戦では声出してなかったから……

25分
尽が上がってきて右サイドへ出し、波戸がボールを受けてゴール前にクロスを入れる。
吉田がフリーでヘッドで合わせるが、タイミングが合わずにボールは高く舞い上がり、ディドが押さえる。

33分
イゴールが右サイドから中央に切れ込もうとするが阻止され、仕方なくタッチライン際のスペースに出す。
波戸が深くからクロスを上げ、走り込んだ山口がヘッドで合わせようとするが、田渕と交錯する。
タイミングは合っていたが、山口の頭が捉えたのはボールではなくクリアした田渕の後頭部……

35分
クリアボールを拾った原田が、自陣から前線に大きくフィード。
ペナルティエリア内で久保山がヒールで中央に流すが、ディフェンスがいったんカット。
クリアし損なったボールを久保山が再び拾い、右足でフリーで待つイゴールへ戻す。
イゴールは右足でトラップして、そのまま右足でシュート。
遠いサイドを狙ったボールはゴール左に外れる。
溜息をつくイゴールのアップショットに、戻っていくサツの姿が……
い、いつのまに……

40分
関がドリブルで右サイドから中央へ切れ込むが、プレッシャーを受けていったん後方へ戻す。
右サイド、ペナルティエリアのすぐ外で待つ田渕にボールが渡り、田渕が右足で思い切ってシュート。
ニアサイドに走り込んだ棚田が左足でちょこんと合わせて角度を変え、ゴールネットを揺らした。
田渕のシュートは混戦のゴール前に飛び込んだのでどうでもいいが、素晴らしかったのは合わせた棚田。
通常ボールを蹴る際は軸足は後方にあるものだが、棚田の右足はボールの前方にあった。
どういうことかというと、走り込んだ棚田の右足はしっかり地面を捉えており、これから前に踏み出そうかと持ち上げた左足をコントロールして、ボールの角度を変えたわけだ。
あんなトリッキーなプレーをされた日には、ナラもたまったものではないだろう。

41分
自陣からのフィードが、尽と原田の間をすり抜けて右サイドに流れた宏太に渡る。
トップスピードのまま胸でトラップして右足を降りぬくが、ゴールのはるか左に外れる。
ナラのポジションを考えれば、ニアサイドを狙えば得点できた気がする。
まぁ、そんな余裕もなかっただろうが。

前半の感想
コンディションが悪いためか、両チームともに精彩を欠いている。
とくに風下に立たされたフリエは、止むことをしらない風に悩まされ続けた。
上空はそうとう風が強いらしく、ナラのゴールキックが自陣に押し戻されてくるほど。
ついでにコンサドーレサポーターの撒いた紙ふぶきも、私の顔に向かって飛んでくる。
はっきり言って凶器、目にでも入ったらと思うと結構恐い。
フリエもペースはつかめないものの、コンサドーレのペースになったのは最後の5分間だけ。
まぁ、後半に期待というところでしょうか。

ハーフタイム
……寒いっ! 心頭滅却すると……なおさら寒いっ!
追撃ちをかけるように、御天道様も姿をお隠しになられてしまった。
馬鹿なことやってないで、温いお茶を飲んで、カイロを背中に貼って、少しでも寒さをしのごう。
あまりの寒さに、抽選があったことすら気づかなかった。というか、抽選券もらったことすら忘れてた。

46分
センターサークルのあたりから、吉田が右サイドの波戸に出して、中央を全力で上がっていく。
波戸は村田にマークされながら、左サイドから上がってきた久保山めがけてクロスを入れる。
ワンバウンドしたボールを梶野がヘッドでクリアするが、それがペナルティエリアに入ってきた吉田の足下に。
落ち着いて足でトラップして、飛び出したディドの脇を抜いてあっさり突き放す。
絵に描いたようなプレゼントゴール。
クリアミスした梶野も問題だが、埜下もボールに注意が向いていて、誰も吉田についていない。
結局のところ、久保山が折り返すべきところを、梶野が折り返しちゃっただけ。

48分
山口が前線に出したボールを、素早い出足で埜下がカット。前線の関に出す。
関のクロスは原田にクリアされたが、右サイドにこぼれたボールを棚田が吉原にマイナスのパスを出す。
ゴール正面、フリーの吉原は右足でトラップしてからシュートを放つが、大きくクロスバーを越える。
トラップが少し大きくなって足を伸ばした感もあったが、あわててシュートする必要はなかった気がする。
前後からフリエの選手は迫ってきていたが、右サイドに流せばマラドーナがフリーで待っていたのに。
ビデオで確認すると、なるほどシュートした際に軸足が滑っているのか。

54分
左サイドからのFK。波戸を制してイゴールが直接狙うことに。
ボールは低い弾道を描いて、ディドの手前でショートバウンド。ディドは胸に当てて前にこぼす。
すかさず尽が右足で押し込もうとするが、ディフェンスが足を出してコーナーに逃げる。
スリッピーなグラウンドを活かした的確なフリーキック。あれをキャッチするのは至難の技。
イゴールが蹴ったことを考えると、壁が少なすぎたか、位置が悪かったかのどちらかかも(信頼しろよ)。

63分 選手交代:関 浩二→有馬賢二

65分
右サイドタッチライン際で、吉田が前線のイゴールにパスを出す。
イゴールは右に左に揺さぶって梶野をかわし、ペナルティエリアに入ったところで右足でシュート。
フリーだったが威力はなく、ディドががっちり胸で押さえる。

66分
ゴール正面からのFK。棚田がボールをまたいで、そのまま壁の横を通り過ぎる。
マラドーナが右足で直接狙うと思わせておいて、ペナルティエリアに入った棚田の足下にパスを出す。
棚田が左45°、至近距離から左足でシュートを放つが、枠を大きく外れる。
その場で頭を抱えてうずくまる棚田。
得意の左足で狙えるようにトラップして、しかもナラと1対1で…… なんで外すかな、あれを。
棚田が横を通過しても壁は動くわけにはいかないので、なかなか面白いプレーではないだろうか。

69分
久保山がドリブルで中央を上がり、ディフェンスを引き寄せて左から上がる吉田にスルーパス。
ペナルティエリア内で吉田がディドと1対1になり、ディドが出てきたところで中央に折り返す。
イゴールが左足で合わせるが、ゴール左に外れる。
思わずイゴールも苦笑い。
なんで? フリーで、しかもゴールは無人で、ただ足を出して流し込むだけじゃん。

70分
左サイドをアツが突破し、中央へグラウンダーのボールを折り返す。
久保山が埜下と梶野と競り、ボールが裏へ抜け出たところですかさず右足でシュート。
ゴール右隅に落ち着いて流し込み、貴重な追加点をあげる。
久保山の足に当たって、埜下の足に当たって、久保山の右腕に当たって久保山の前に転がってシュート。
……ん? 右腕に当たって? まぁ、故意ではなかったということで……
ハンドの判定が下されても文句は言えないとこだが、なぜかコンサドーレからアピールはなかった。

72分
イゴールがポストになっていったん後ろに戻し、自分は左サイドを駆け上がる
ディフェンスの間を抜いたスルーパスがイゴールに通るが、トラップが大きく一瞬早くディドに押さえられる。
トラップが正確であれば、ディドと1対1になっていた。さすがベテラン、いい飛び出しを見せた。

74分
ディドのゴールキックが中央の波戸の足下に入り、右サイドの吉田にはたいて自分も右サイドを上がる。
吉田が戻りながらスルーパスを出し、波戸が棚田を振り切って右足でゴール前へ折り返す。
フリーで待っていたイゴールが、ヘディングでゴール右隅に押し込む。
波戸のセンタリングの精度も高かったが、ゴール前のイゴールが完全にフリー。
イゴールはゴールを決めた後、ユニフォームをめくってTシャツを見せながら、観客席に走り寄る。
当然のごとく警告も受けたが、笑顔で審判に手を挙げて了解した旨を伝え、少しだけ肩をすぼめていた。
チームにとっても自身にとっても最終戦ということで、彼なりのお別れの挨拶だったのかもしれない。

76分
村田が左サイド深くから山なりのクロスを上げ、遠いサイドにいた有馬がヘッドで左後方へ落とす。
ゴール前フリーのマラドーナが右足でシュートを狙うが、ボールはあさっての方向へ。
有馬がもう少し丁寧にマラドーナに戻していれば、あるいはゴールを割っていたかも。

79分
選手交代:深川友貴→ペレイラ
選手交代:レディアコフ→桜井孝司
桜井……ねぇ(苦笑) 前節ベンチ入りした際にも、思わず笑いが込み上げてきたのだが……
昨年の天皇杯、交代で9分間プレーしたのが唯一の公式戦出場というストライカー。
どうしたらアルゼンチンに留学して太って帰って来れるのか、不思議でしょうがない。
フィールドプレイヤーではひとりだけJでの出場がなく、最終戦にして初出場させてもらうというありさま。
オファーのない選手にもアピールの機会を与えてあげようという、エンゲルス監督の親心であろう。
それにしても94年に選手権で優勝した静岡学園からは、合計9人のJリーガーが誕生したわけだが、
活躍しているのは石井俊也(当時2年、浦和レッズ)と南雄太(当時1年、柏レイソル)のふたりしかいない。

桜井孝司といい森山敦司といい、ほんと先輩(久保山由清)も泣いているぞ……

86分
マラドーナの左CK。ゴール前に走り込んだ埜下がヘッドで合わせるが、わずかにゴールの左に外れる。
山口に競り勝って、タイミングも完璧だったのだが。

87分
アツが左サイドで田渕とペレイラを翻弄し、ゴール前の久保山に緩やかなボールを入れる。
久保山が胸でトラップして、振り向きざま左足でシュート。ミートせずにクロスバーを大きく越える。

87分
山口が左サイドにサイドチェンジし、上がってきたサツがアーリークロスを上げる。
オフサイドラインぎりぎりから抜け出した久保山が、フリーでヘディングを試みるがわずかに届かず。

後半の感想
コンサドーレのディフェンスはもうずたぼろ。もう2、3点入っていてもおかしくなかった。
無失点に押さえたが、あくまでシュートが枠に飛ばなかっただけと考えるべき。

コンサドーレ札幌 評
下位チームの常ではあるが、やはりディフェンスがもろい。
サイドから攻撃された場合、センターバックが釣り出されてゴール前ががら空きになったり、ラインの裏へ簡単にスルーパスを通されたりと、最終ラインがかなり不安定。
梶野と埜下の息も、いまいち合っていなかった。
ボランチを含め、ディフェンスの選手が固定できていないあたりが、コンサドーレの弱さかもしれない。
攻撃もバルデスが不在なため、脅威をまったく感じなかった。
原田や薩川では、彼の高さには対抗できなかっただろうに。

パレード

コンサドーレ札幌
前半横浜フリューゲルス
後半
会場:札幌厚別公園競技場/観衆:15172人
得点:0-1 吉田孝行(23分、アシスト=波戸康広)
1-1 棚田 伸(40分、田渕龍二)
1-2 吉田孝行(46分)
1-3 久保山由清(70分、三浦淳宏)
1-4 レディアコフ(74分、波戸康広)

コンサドーレ札幌横浜フリューゲルス
GKディドGK楢崎正剛
DF村田達哉DF薩川了洋
DF埜下荘司DF原田武男
DF梶野 智DF佐藤 尽
DF田渕龍二MF三浦淳宏
MF古川 毅MF波戸康広
MF深川友貴MF山口素弘
DF79ペレイラMF氏家英行
MF棚田 伸MF久保山由清
MFマラドーナFW吉田孝行
FW吉原宏太FWレディアコフ
FW関 浩二FW79桜井孝司
FW63有馬賢二SUB仁田尾博幸
SUB加藤竜二SUB井上雄幾
SUB木山隆之SUB瀬戸春樹
SUB後藤義一SUB大久保貴広

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