アビスパ福岡戦 観戦記

三ツ沢公園総合球技場、フリエにとって今季最後の…… そして永遠に最後になるかもしれないホームゲーム。
#フリエファンのひとりとして、こんな言葉は口にしたくもないんだけどね。
前売りだけで1万枚以上出ているという情報を耳にしていたため、余裕を持って、試合開始の1時間以上前には三ツ沢公園に到着。
競技場の外では青いリボンが配られ、競技場の中では懸命の署名活動を続けるサポーターたち。
恒例となっていた、速報スターティングイレブンの配布は、もうない。
人の波をかきわけ、ゴール裏スタンドへとつながる階段を駆け上がると……
スタンドはすでに七割方埋まっており、空席をさがすのも大変な状況。
バックスタンドに程近い場所になんとか座席を確保し、個人的に集めた署名をサポーターに手渡しに行く。

試合開始30分前になった頃、突然ジュビロサポのTERUさんから携帯に連絡が入る。
そういえば、あちらさんもそろそろレイソル戦が始まる頃だっけか。
「こっちでも横浜フリューゲルスコールをしたいから、やり方を教えてくれ」
はぁ?
いや、それはかまわないのだが…… というか嬉しい申し出なんだが、なんでサポーターでもない私に?
ひょっとして、私って有名人?(おぉきな勘違い)
いや、それ以前にここトイレなんだが……(だったら電話を受けるな)
とまぁ、馬鹿やりながらも、しっかりコールを教えてあげました。
『(手拍子)タンタン タタンタン 横浜フリューゲルス』というやつね。
それが、まさかNHKの放送開始とともに、大音響で流れてくるとわ……
TERUさんいわく、「ごめん、いつものジュビロの応援のようになっちゃった」だそうですが。
優勝の望みがある状態にもかかわらず、フリエだけの問題ではなくJ全体の問題として捉え、公共の電波に乗せてアピールしてくれたジュビロサポーターたち、ほんとうにありがとう。
できれば、直に聞きたかった。夜のスポーツニュースで放送されるかと思ったのに。

観客は増え続け、結局アウェイ側のスタンドをも埋めつくしてしまった。
また、サンフレッチェやレッズ、エスパルスなどのレプリカユニを身にまとった人の姿も見受けられ、貴賓席には、懐かしいパラグアイの英雄、アマリージャの姿が。

試合開始前
数人のサポーターが、報道陣を引き連れてゴール裏スタンドの前へやってくる。
オーレの竹内浩敏さんが、これまでの経緯と「横浜フリューゲルスを存続させる会」を組織したことを説明。
つづいて、発起人代表の辻野臣保さんが声明文を読み上げ、今夜の全日空との交渉に、自分たちがサポーターの代表として参加することを提案、了承を得た。
了承といっても、私たちは拍手で応えただけだけど。

選手たち
全員が黒のスーツを身にまとっての会場入り。
ファンに配られるスマイルカードは、企業名が黒く塗りつぶされていた。
入場と写真撮影の際には、胸と左袖の"ANA"の文字を手で隠し、静かなる抗議が続く。
そして、肩には青い翼運動の象徴であるリボンがはためいていた。

フリエの布陣
前田浩二が2試合ぶりに復帰、右のウイングバックに一樹が入った以外は、前節と変わらず。

コイントス
山口と向かい合うのは、奇しくも3年前までフリエでキャプテンマークを巻いていた岩井厚裕。
両者、何を思う……

5分
久藤が縦に小さくフィード。前田浩二が飛び上がって右足を高く上げるが、届かず。
抜け出した藤本の右足のシュートを、判断よく飛び出したナラが体で防ぐ。
判断を誤った前田浩二と、佐藤尽の間をすり抜けたまではよかったが、シュートの瞬間にはナラが目の前まで迫っていた。ナラの好判断に救われたかたち。

7分
永井が左サイドから、ゴール前に精度の高いクロスを上げる。
遠いサイドに走り込んだイゴールが、胸でトラップして前方に落とすが、マークについていた西ヶ谷がゴールラインに蹴り出す。

28分
久保山の左CK。西ヶ谷が尽と競りながらクリアしようとするが、ボールは頭上高くへ。
サンパイオがゴール前へ折り返し、前田浩二が塚本の目前でヘディングシュート。
ゴールの中にいた久永が、ヘディングでクリアするも、ボールはゴールラインを割っていた。
前田浩二、嬉しい嬉しいJ初ゴール。
両手を挙げて喜びをあらわにし、サンパイオに抱きつかれる前田。
本人の談話にもあったが、スタンドからもクリアされたように感じた。
選手と主審の動きを見て、えっ、入ったの? という感じで、歓声が上がるまでに一瞬の間が。

35分
右サイド、センターラインに程近いあたりからの山口のFK。
遠いサイドへ大きく上げて、サンパイオと競った古邊の頭に当たり、尽と競った上野の頭に当たり、
その落ち際を、イゴールが左足でノートラップボレー。ミートせず、ボールはアビスパ側のスタンドへ。

37分
塚本のゴールキックを前線で山下がキープして、左から上がってくる久永にスルーパスを出す。
抜け出した久永が薩川に競り勝ち、右足で遠いサイドへクロスを上げる。
久藤が頭で中央へ折り返し、藤本がオーバーヘッドシュートを放つが、ボールはゴールを外れる。
素晴らしい攻撃だったが、久藤はゴール前でフリーだったのだから、もっと積極的にシュートすべき。
前田浩二が反応していたが、フリーで打てたはずだ。
藤本の前には尽がおり、折り返しに正確さを欠いたために、オーバーヘッドに行かざるをえなかった。
久藤に渡った瞬間は、失点を覚悟したのだが……

41分
右45°からの西田のFK。強烈なシュートはディフェンスに当たり、こぼれ球を山下が右足でシュート。
大きく浮いて、ゴールを外れる。

42分
ディフェンスのクリアを藤本が拾い、中央をドリブルで突破。
山下とのワンツーでサンパイオをかわし、ゴール前へ切れ込む。
左から上がってきたフェルナンドへのパスは通らなかったが、跳ね返りを倒れながらバックパス。
走り込んだ山下の右足のシュートはクロスバーの上へ。

45分
塚本の大きなフィードを上野がヘッドで左サイドに落し、久永がドリブルで突破。
ペナルティエリアに入ったところで、左足で遠いサイドにクロス上げてシュート。
サンパイオの体にあたって跳ね返ったところを、西田がミドルシュート。
ミートせず、ナラが倒れ込みながら押さえる。

ロスタイム(47分)
自陣左サイドからのFK。ペナルティエリアの手前めがけ、大きなボールが入る。
飛ぶ山下を妨害したとして、サツがファールを取られる。
観客席はブーイングの嵐だったけど、サツ飛んでないんだもん。
その上、空中の山下に体を当てにいったのだから、ファール取られて当然だと思うけど。
あれやられると、空中でバランス崩して危ないんだよ。
あぁ、なんて冷静な……

ロスタイム(48分、公式記録では44分)
正面やや右からのFK。フェルナンドがシュートすると見せかけて軽く後ろに流し、西田が右足でシュート。
壁に入っていた山下の足に当たって方向が変わり、ゴールネットを揺らす。
ナラは完全に逆をつかれ、反応しきれなかった。
山下はしっかり飛び退いて避けているんだけどなぁ。
きれいに誰もいないところに転がっていくんだもんなぁ。

前半の感想
なんとか先制したものの、終盤立て続けに攻めこまれたことからもわかるように、アビスパのペース。
相手にペースを握られる展開に、慣れてしまっている自分がいるのがちょっと……
失点そのものは「不運」の一言で片づけられるが、逆転されなかったことを幸運に思うべきだろう。

47分
中盤のルーズボールをアツが拾い、左サイドへ流れながら大きくサイドチェンジ。
右サイドの久保山が、ペナルティエリアに入ったところで胸で受け、足下へ落とす。
軽いフェイクで西ヶ谷のタイミングをずらし、縦へ切れ込んで中央へ折り返すも、タイミングが合わず。
西ヶ谷を置いてきたのだから、久保山には思い切ってシュートを狙ってほしかった。

51分
左サイドから、アツのロングスローがゴール前に入る。
サンパイオが競り勝って、ディフェンスとキーパーの間のスペースに落とす。
久保山がスライディングしながら、懸命に右足を伸ばすが届かず。
その外から走り込んだ永井が、角度のないところから右足でシュートするが、大きく枠を外れる。

53分
久保山が、センターライン付近右サイドからドリブル。
中に入りながら、最前線のイゴールめがけ右サイドのオープンスペースへパスを出す。
イゴールは右サイドへ流れ、中央から山口が、遠いサイドからは永井が上がる。
イゴールの折り返しに山口が合わせるが、藤本の後方からのチャージにバランスを崩し、振りぬいた右足はミートせず、シュートは大きく右に外れる。
座り込んだまま、PKを取ってもらえなかったことに驚く山口。
ただねぇ、それ以前に久保山のパスがどう見てもオフサイドなんだわ。
岩井も古邊も手を挙げて、しっかりアピールしているというのに。
しっかりしてくれよ、副審……

56分
左サイドの藤本がクリアを拾い、前方のスペースに走り込む久永へパスを出す。
久永の折り返しが、コースへ入ろうと体を投げ出した前田浩二の左腕にあたり、笛が吹かれる。
無情なPKの判定。そして、崩れる前田浩二…… はさておき、注目すべきは久永の動き。
一樹のマークを受けて、前を向けなかった藤本の視界に入るためにいったん戻り、視界に入ったところで、前方のスペースを指差してパスを要求し、すかさず走り込む。
いいねぇ、こういうプレーは、うん。
でまぁ、前田浩二は、パスが思ったより低かったので腕にあたってしまった、と。

56分
フェルナンドのPK。ゴール左を狙ったが、完璧に読んだナラがしっかり両手ではじき、こぼれ球を自ら押さえる。
スーパーセーブ。ナラは、余計なステップを踏むことなく、迷わず飛んでいる。
サツが頭をなで、アツは背中を叩き、頭を叩こうとした前田浩二は空振り……

58分
左サイド深くから、アツがロングスローをゴール前へ入れる。
ディフェンスにクリアされるが、山口がフェルナンドと競って、右足でボールを蹴り上げる。
ゴールとは反対方向に飛んだものの、サンパイオが戻りながらトラップし、すかさずもと来た方へ蹴り上げる。
久保山、永井(もしかしたらイゴールも)がオフサイドポジションに残っていたが、ラインを上げるディフェンスの間から飛び出した尽が、胸で前方へトラップし、塚本が寄せる前にシュート。
豪快に振りぬいた右足から放たれた一撃は、塚本の左を抜いてネットに突き刺さった。
佐藤尽、これまた嬉しいJ初ゴール。
飛び上がりながら右手を突き上げ、看板の前で観客席に向けて三度両手を下に突き下ろすガッツポーズ。
#余談ですが、コンサドーレ戦の前々日のFK練習で、アツのキックにヘディングで合わせた尽に対し、
#ガッツポーズは? とばかりに、周囲がこのポーズを再三要求していました。冷やかされてら。
山口が飛びつき、久保山、アツ、一樹、前田浩二と次々に選手が抱きついていく。
そして、永井は背中を頭をこづくこづく。
観客席は、総立ちで歓声を上げ、これに応えた。
山口は、蹴り上げた際にフェルナンドに倒されて戻るのが遅れたため、
その場にしゃがみこんで、プレーの意思がないことをしっかりアピールしていた。

61分 選手交代:佐藤一樹→吉田孝行

66分
塚本のキックがワンバウンドして、落ちてきたところを上野がポストプレーで味方に渡す。
右サイドに出たボールを西田がゴール前へ折り返し、山下が頭で合わせるがわずかに届かず。
タイミングは文句なし。もう一、二歩山下が前から飛んでいれば、失点していてもおかしくなかった。
右の西田、左の久永とも、クロスの精度は高かったのではないだろうか。

67分
センターラインよりすこし前、右サイドタッチライン際からのFK。
山口がゴール前へ上げ、サンパイオが右へ落とす。
吉田が角度のないところから折り返したが、正確性を欠いた。

68分
フェルナンドが右サイドの藤本へ出したところを、前田浩二がつめてファール。
前田浩二は警告を受け、累積警告により次節厚別でのコンサドーレ戦に出場できなくなってしまった。
しかしながら、ゴール前は1対2で数的不利を強いられていたので、クロスを入れられる前につぶした判断は、正しかったといえる。

73分 選手交代:レディアコフ→原田武男

75分 選手交代:藤本主税→石丸清隆

78分
アツが左サイドを突破。追いすがる西田を右肩(右腕?)で弾き飛ばし、深いところからクロスを入れる。
右サイドまで流れてしまい、吉田が再度ゴール前へ上げるが、クリアされる。
競り合って右サイドにこぼれたボールを、吉田が左足でシュートしたが、大きくふかす。

79分 選手交代:久永辰徳→森 秀昭

82分 左サイドに大きく蹴り込まれたボールを、サツがヘッドでクリア。
西田が拾い、アツがつめてくるところを久藤に戻す。
久藤が右足でゴール前に上げて、ヘディングで落としたところに、飛び出した山下が合わせる。
山下は右足でトラップしたが、跳ね上がったボールは右手に当たって、ナラの両手に収まってしまう。
フリーで抜け出してGKと1対1になったのだから、トラップなんて悠長なことせずに、思い切ってシュートだろ、シュート。
相手のプレーに憤っても、仕方ないんだが。
そんなことだから、U-21で柳沢にポジション奪われるんだ。

84分 選手交代:古邊芳昇→大熊裕司

80分以降
山口は相変わらず果敢に飛び出してくるが、上がってくる選手が少ない。
久保山はもう限界か、足が止まっており交代の必要性を感じる。
ひとりを残して岩井まで上がるアビスパに、完全に運動量負けしている。
ナラのキックは安定せず、サンパイオの献身的なプレーに再三救われている状態。
ナラはいったい何本のゴールキックを蹴ったことか。
雲は空一面に広がり、遠くの夕焼けに映えて美しい濃淡を描いていた。

ロスタイム(92分、公式記録では89分)
左サイドからのスローイン。
永井が二度ほど投げるそぶりを見せた後、アツに任せようとボールを足下に落とす。
これが遅延行為とみなされ、イエローカードが出される。
まぁ、投げようとして止めたのだから、当然といえば当然か。
ただし、これで永井も次節出場できなくなったわけで、彼の心中を思えば警告はかわいそうだった。

後半の感想
勝ったのが不思議なくらい、終盤は押し込まれていた。
モチベーションの違い、といえばそれまでだが、それほどまでにフリエの調子は悪かった。

アビスパ福岡 評
いいチームだと思うよ、うん。
岩井はしっかり最終ラインを統率しているし、左右のウイングバックは精度の高いクロスを上げるし、フェルナンドはサンパイオのように献身的なプレーをするし、久藤の加入で中盤にためがつくれるようになったし。
上野、山下の決定力にやや問題を残すものの、今いる人材でそれなりのチームに仕上がっていると思う。
最下位を争っている理由は…… やっぱり、あの森監督だからかなぁ。
ひょっとして、複数年指揮をとった監督の中で、一番勝率が悪いんじゃないだろうか。

セレモニー
選手とスタッフが、手にしたフリエの旗を振りながらフィールドへ姿を現し、メインスタンドに向かって一列に並ぶ。
エンゲルス監督、サンパイオ、選手会長の前田浩二が、マイクを握って挨拶に立つ。
以下に、それぞれの挨拶の一部を記しておきます。
記憶に頼っているので、正確な描写ではありませんが。

エンゲルス監督
「このチームは6年間よくがんばった。全日空さん、Jリーグ、誰でもいい、助けてくれ」
サンパイオ(通訳を介して)
「スポーツは喜怒哀楽すべてを表せるもの。
 世界でもっとも愛されているサッカーに携わる選手、サポーターを無視した合併に怒りを覚えます」
前田浩二選手会長
「吸収合併は、企業のトップとJリーグが勝手に決めてしまった。
 フェアプレーの精神はどこにあるんでしょうか。
 吸収合併というような話には、怒りに思います。
 僕には1歳半になる子供がいます。この後、どうしようかと思うとゆうべも一睡もできませんでした。
 子供に、この事実をどうやって説明していいかわかりません(涙声)」

THE ALFEEが歌うチームソング「Victory