ジュビロ磐田戦 観戦記

レシャック監督の辞任、そしてエンゲルスコーチの監督昇格。
ある程度予想されていたこととはいえ、実に慌ただしい一週間だった。
そんなことはおかまいなしに時間は流れる、非情なほどに。

9時過ぎ、いち早く会場入りしているジュビロサポの友人から情報が入る。
当日券の残りが少ないらしい。「早く来い」とのことだが、なにせこちらは夜勤明け。体が言うことを聞かない。
結局、会場に着いたのは試合開始20分前。むろん、当日券はとっくに完売している。

"速報スターティングイレブン"を見て、びっくり。スタンドを見て、もひとつびっくり。
スタメンにあるはずの名前がない。永井秀樹、フットレ、遠藤保仁、氏家英行。ベンチにすら入っていない。
その代わりに、予想通りの名前が並んでいる。吉田孝行、そして波戸康広。
まぁ、新しい指揮官は往々にして、前の指揮官が使っていた選手を使いたがらないものだけどね……(苦笑)
そして、満員のスタンド。なんとか空席を見つけて座れたけれど、観客は増え続ける一方。
結局、通路も階段も人でいっぱい。真相は、ジュビロ側に入れない人達がフリエ側に流れて来たためとか。
なんだ、フリエの応援じゃないのか。

「小渕内閣以下の組織力」
メインスタンド下に掲げられた横断幕であるが、笑っていいものかどうか……
いや、いろんな意味で。支持率は似たようなもんか?(暴言)

フリエの布陣
昨年までオタシリオ監督がとっていた布陣、3−5−2が復活。
ストッパーに佐藤尽と薩川、そのやや後ろに前田浩二。実質ストッパーが3人いる状態。
ウイングバックが左に井上、右に波戸。ボランチに山口とサンパイオ。
中央でアツがゲームメイクし、FW登録ながらやや下がり目に久保山、そしてトップに吉田。

9分
FKからのカウンター。久保山が持って上がり、アツから左サイドをフリーで走る吉田へ。
中央へ折り返そうとしたボールは、ゴールラインを大きく割る。

13分
中央の吉田から、左サイドの井上へ。中央へ折り返したボールは、ディフェンスの頭に当たって右サイドへ。
それを拾った波戸が、再度中へ折り返す。
昨年も同じように、カウンターからアツと森山が同じような攻撃を見せてくれたなぁ。
これで、クロスに合わせられるストライカーがいれば、言うことないのだが。
タッチライン際で手持ちぶさたにしているウイングと違い、ウイングバックはしっかり機能している。

16分
左サイドの清水(?)から、中央のドゥンガへ。ドゥンガが放ったミドルはナラがしっかり押さえる。
ここまでは完全にジュビロのペース。ほとんどのプレーが、フリエ陣内で行なわれている。
ボールは、ナラとジュビロ攻撃陣の間を行ったり来たりしている感じ。
とはいえ、左右から上がるクロスやスルーパスによって、度々決定機はつくられるものの、サツと前田浩二の的確な"つぶし"によって、ほとんどがフィニッシュに至ってはいない。

19分
藤田がペナルティエリア内まで持ち込み、DFを引きつけてアウトサイドで中央へパス。
走り込んだ奥が、左足で強烈なグラウンダーのシュートを放つ。
ナラは体で止めるのが精一杯で、こぼれ球を中山がつめて先制……と思いきや、オフサイドの判定。
ドゥンガが審判にすごい勢いで詰め寄る。その時、すでにボールはジュビロ陣内に。
さすがに主審が気がついて、やり直しさせられたけど。

31分
右サイドを波戸が突破。ジュビロの出足が全体的に遅く、そのまま中へ切れ込んで、左足でミドルを放つ。
しっかりミートせず、ボールはクロスバーの上を越える。

32分
ゴール前へ出たスルーパスに奥が反応し、シュート体制に入る。
前からはナラが飛び込み、後ろからは前田がスライディングして、なんとか事無きを得る。

35分
ゴール正面やや右からの直接FK。アツが地をはうボールを蹴るが、ゴール目前で大神がコーナーに逃げる。
今日は、威力のないボールしか蹴れないフットレがいないので、セットプレーはアツの独壇場。
若い攻撃陣をまとめあげて、攻撃を組み立てた……とはお世辞にも言えないが、アツ自身の動きはよく、生き生きとプレーしていた。日本代表候補にも選ばれたしね。

38分
自陣左サイドからの攻撃。清水がドゥンガにヒールで戻して、清水、ドゥンガとパス交換。
ドゥンガはいったん前線左に張っている奥に預け、戻ったボールを右足でゴール前へスルー。
中山のマークについていた尽の反応が一瞬遅れ、オフサイドにはならず。
抜け出した中山はナラと1対1に。落ち着いて、飛び込んだナラの股間を抜いて、ジュビロ先制。
前田浩二もサツも中途半端な位置におり、反応できなかった。
というか、反応させてもらえないないほどの素早いパスまわしを誉めるべきか。

44分
藤田が右サイドを突破。マークはまったく追いつかず、ゴールへ向けて一直線。
ペナルティエリア内からフリーでシュートするも、ゴールを外れる。

前半の感想
(あくまで私個人にとって)念願の3−5−2の復活。
3−4−3がしっかり機能してくれていれば、なにもそんなこと願わなかったのだが。
にしても、思い切った人選だこと。今年の開幕メンバーに匹敵する驚き。
ここ数試合、サイドから崩されまくった守備。相手が相手だけに無傷とはいかないものの、4試合ほど出番すら与えられなかった前田浩二が、最終ラインで獅子奮迅の活躍。
そう考えると、やはりレシャックは中堅(まだ20代ですから)をないがしろにしすぎたと思う。
若手起用と戦術に固執して、プロにあるまじき試合を観客に観せるのは問題外。

ハーフタイム
「世田谷からお越し○○様、駐車場が一杯なので……」との場内放送に、観客席爆笑。
なんて言ってました? 全部聞き取れなかったもので。

54分
右サイドから入ったクロスに、密集地帯にいる中山がヘディングシュート。
叩きつけたボールはゴール右へ外れる。

59分
バウンドした(スルーパスと書くにはスマートさに欠ける)ボールへの対応を尽が誤まり、中山が抜け出す。
このままではナラと1対1になってしまうと考えてか、ミスを取り返そうとする一念からか、ともかく、追いかけた尽がペナルティエリア内で中山を倒してしまう。
むろん、判定はPK。そして尽にはレッドカードが出され、一発退場。
「PKとったんだからレッドカードはないだろ〜」という声が上がる。
気持ちはわからないでもないが、ぜんぜん理屈が通ってないぞ、それ。
後ろから、しかも左手で足を払ってしまっているので、レッドカードは当然。

60分
自分で得たPKを、自らゴール右隅に蹴り込んで、中山この日2点目。
ゴールの瞬間、一斉に湧くサポーター。そして中山「隊長」コール。
迫力があって、見た目にも美しい。傍目には、まとめるのに苦労しているとはとても思えないのだが。
ジュビロサポの友人曰く、フリエサポを評して…… ……ごもっとも。

63分 選手交代:井上雄幾→大島秀夫
尽が退場したため、フラットな4バックに変更。
ポストプレーのできる大島をトップに入れて、吉田が下がって久保山と2列目に。
交代した井上に代わって、アツが左サイドバックの位置に入る。

70分
自陣左サイド深くから、アツが大きくフィード。
サンパイオが鈴木秀人と競り合い、バランスを崩しながらもバックヘッドでゴール前へ。
前田浩二が抜け出して、ダイビングヘッド。しかし、飛び出したGK大神に体で止められる。
戻ったアジウソンがクリアしようとするが、前田浩二が身を挺して阻止。ボールは依然ゴール前に。
さらに、走り込んだ久保山が無人のゴールに右足で押し込もうとするが、
遠いサイドから戻った田中誠が、スライディングしてこれをクリア。
フリエ最大のチャンス。
前田浩二のシュートは、大神に距離を完全につめられていたので仕方がないとして、クリアしようとするアジウソンに蹴られながらも、ボールの位置を足で微妙に変えたプレーはさすが。
最後の久保山は、歩幅が合わなかったのか利き足で蹴ろうとしたのかわからないが、足が伸び切ってしまい、押し込む感じでシュートに威力がなかった。
シュートの瞬間はフリーだったので、落ち着いて決めてほしかったところだ。

74分 選手交代:ドゥンガ→高原直泰
奥がボランチに下がって、中山と高原の2トップに。

75分
ペナルティエリア内右サイドから、中山が切り返して、前に立つ前田浩二を避けて左足でシュート。
ナラが両手で反対サイドにはじくが、そのボールに奥(か清水:背番号判別不可)が飛び込み、
戻った山口に競り勝ってヘディングシュート。

ナラの頭上を通過しようかというボールは、再び両手ではじかれて、勢いを殺がれながらもゴールへ。
山なりでゴールに入る寸前、あわてて戻ったナラが手でかき出す。
そのボールを走り込んだ中山が、角度のないところからシュートするが、サイドネットに。
ナラの見せ場、と言えば聞こえはいいが、完全に1点もののプレー。
前田浩二は、中山の動きにまったく反応ができていなかったので、そろそろ疲れが見えてきたか。
中山のシュートが外れた後、ゴール前の古賀が両手を広げてアピール。
「フリーで俺がいるだろうが」という意味か。

79分 選手交代:久保山由清→大久保貴広
動きの落ちてきた久保山に変えて、同じくドリブラーの大久保を投入。
アツを中盤に戻して、大久保は左サイドバックに。
大久保はかなり高い位置を取っていたので、守備力の低下には目をつぶって、勝負に出たと思われる。

83分
右サイドからのFK。藤田が上げて、遠いサイドの田中誠がジャンピングボレー。
無理な体勢だったためか、ミートしたもののボールはバーの上へ。

86分
中央藤田から、右前方へスルーパス。フリーで中山が右足のシュート。
一度はナラに止められたが、跳ね返ったボールをもう一度右足で押し込んで、ハットトリック達成。
中山についていた前田浩二は反応できず、いち早く反応したサツのスライディングも間に合わず。
にしても、中山の得点感覚の鋭さは相変わらず素晴らしい。

87分 選手交代:中山雅史→川口信男

89分
右サイドから左サイドへボールがまわり、左サイドからフリーで川口がシュート。
スタンドからは入ったように見えたが、ゴールに嫌われて出てきた(ように見えた)。

ロスタイム
左サイドの川口へスルーパスが通り、ペナルティエリア内ゴールラインぎりぎりから折り返す。
高原が前田浩二をかわして右足アウトサイドでシュート。
ナラがはじいたところを、つめていた古賀が押し込んで、余計な余計な4点目。
はじいた瞬間に動いた古賀と、ぴくっと反応したが立ち尽してしまった大久保。
ひとり少なくなった上に勝負に出たことで、結局は守備が崩壊してしまった。
それでも、何もしないままに負けを待つよりはましな気がする。

後半の感想
佐藤尽の退場がすべてでした。はい、おしまい。

ジュビロ 評
ここも素晴らしい選手が多く、層も厚い。
フランスにぜひ連れていってほしかった藤田、2002年の守備を任せたい田中誠と鈴木秀人。
名波が欠場しても、代役の清水がきっちりと仕事をこなす。
もしかしたら今年初出場じゃないかな。昨年終盤には代表かと言われた男が。
そういえば、日本代表候補の福西も出ていない。弱点は右サイドバックだけか。
その補強を狙って獲得したフリエの森山は、サテライトでの出場すら困難な状況とか。
日本でもっとも速いパスまわしのできるチーム、ジュビロ。
1st Stage同様、よく4失点で済んだということになりそうだ。

フリエのこれから
3−5−2の不動のレギュラーだったのは、ナラ、前田浩二、サツ、山口、サンパイオの5人。
左ウイングバックから中盤にポジションが変わったのがアツ。
波戸と尽は数試合出場しただけだし、吉田は出場試合数こそ多いものの、そのほとんどは途中出場。

にしては、守備はまずまずかな、と。
ハイボールに競り負けず、クロスにはダイビングヘッド、そしてスルーパスには斜め後ろから足を入れる。
前田浩二とサツの安定した動きを見るに、守備は合格と言ってもいいだろう。
尽に不安は残ったが、彼の高さと強さは貴重。次節登場するであろう、埜下と比較されることになる。
現段階での実力は、埜下の方が上だろう。昨年も、前田や大嶽が不在の間、その穴をよく埋めていた。
しかし、すでに28歳と中堅の域に達していながら、レギュラーに定着できていない埜下。
結論は、次節のヴェルディ戦を観てから。

一方、攻撃は…… ふぅ。
そもそも吉田は、最前線向きの選手じゃないんですよね。前に高さのある選手がひとりいて、それで飛び出して行くいわゆるセカンドストライカー的な使われ方が似合っている選手でしょう。
だから、吉田がボールを持って左右に開いたとき、中央で合わせられる選手がいない。
ついでにセンタリングの精度も低い。前線に高さのある選手がいないから、仕方ないのだが。
大島はまだまだ未熟だし、アルゼンチン帰りの桜井に至ってはトップに上がってすらこない。

こうして考えてみると、服部をフロンターレに出したことが悔やまれる。
出てないんですよ服部、フロンターレでも。
ヴァルディネイとツゥットの2トップが固定されて、出場しても89分からとか。
フリエにいた頃とぜんぜん変わらないんですよ。
なんで出したんだろ。確かに、レシャックはFWに守ることを要求しなかったけどね。

攻撃陣の人数が減ったため、永井やイゴールが戻ってきたとき、彼らをどこで使うのか。
それとも、若手の育成のために2nd Stageを費やすのか。
エンゲルス監督のこれからの采配が、依然注目される。

なお、10月17日から、タイでU-19アジアユース選手権が開催されるため、遠藤と手島は戦力に数えられない。
バックアップメンバーに入っている辻本と大島も、呼ばれないとは限らないことを付け加えておく。

横浜フリューゲルス
前半ジュビロ磐田
後半
会場:横浜市三ツ沢公園球技場/観衆:14473人
得点:0-1 中山雅史(38分、アシスト=ドゥンガ)
0-2 中山雅史(60分、PK)
0-3 中山雅史(86分、藤田俊哉)
0-4 古賀琢磨(89分)

横浜フリューゲルスジュビロ磐田
GK楢崎正剛GK大神友明
DF佐藤 尽DF服部年宏
DF前田浩二DF田中 誠
DF薩川了洋DFアジウソン
MF井上雄幾DF古賀琢磨
FW63大島秀夫MF鈴木秀人
MF波戸康広MFドゥンガ
MFサンパイオFW73高原直泰
MF山口素弘MF清水範久
MF三浦淳宏MF藤田俊哉
FW久保山由清FW奥 大介
FW79大久保貴広FW中山雅史
FW吉田孝行FW87川口信男
SUB佐藤 浩SUB尾崎勇史
SUB埜下荘司SUBデジマール
SUB原田武男SUB喜多 靖

注釈:三ツ沢球技場のHOME側からは時計が見えないので、時間は手元の時計で計っています。
ですから、公式記録とは確実に1分程度のずれが生じていると思います。
三ツ沢の時計はアナログだから、例え見えてても…… だけどね。
情報源によって、井上雄幾の登録がDFのものとMFのものがあります。

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