ベルマーレ平塚戦 観戦記

ワールドカップ予選、生卵が乱れ飛んだあの日以来の国立。
試合開始直前には降り止んだものの、依然として晴れ間の見えない空。
何か両チームの現状を象徴しているかのよう。

試合開始5分前
ベルマーレのマスコットの着ぐるみが、フリエゴール裏までやってくる。
親指を下にしたブーイングポーズを見せて、帰って行く。
歩いているその後ろ姿が妙にユーモラスで、自然と笑みがこぼれてしまう。

フリエの布陣
最終ラインは中央に原田、左に井上、右に薩川。
中盤下がり目にサンパイオと山口、左にアツ、右に氏家。
前線は左に永井、右に一樹がはって、中央やや右にフットレ。
が基本だったのだが、実際は……(詳しくは本文を参照)

0分
右サイドから、クラウジオの強烈なFK。
中途半端に避けた永井の背中に当たってコースが変わり、1分もたたずにベルマーレ先制。
壁は3枚。クラウジオから見て、右が氏家、中央アツ、左が永井。
壁の左を狙ったボールは、体をひねった永井の背中に当たって軌道が変わり、ゴール左隅へ。
顔面や腹部に直撃すれば、担架が必要になるほどの威力があるのだが、壁である以上は避けるべきではない。その恐怖は十二分にわかるのだが。
これがまた、性質の悪いことにほとんど壁に当たるんだ……

7分
右サイド深いところから、リカルジーニョがいったん後ろの岩元に戻す。
岩元が右足で上げたクロスに、遠いサイドの呂比須が頭で合わせてあっさり2点目。
呂比須は、いったん中に入ってサツを押さえ、外に流れて角度のないところからシュート。
基本通りの動きでマークを外し、難しいシュートをなんなく決めた。

11分
右サイドのワンツー。岩元が外の松川に出して、リターンをもらって中へクロスを入れる。
走り込んだ呂比須にはタイミングが合わず、そのままゴールラインを割る。
攻撃でみせる右サイドの突破力といい、名塚やクラウジオが抜かれた際のカバーリングといい、近年の岩元(イワゲン)の成長には目を見張るものがある。
かつて岩本輝雄と名良橋がいたころは、守るだけの選手という印象だったのに。

12分
中盤でボールをカットした田坂から、右サイドでフリーの呂比須へ。
DFに寄せられる前に、スリッピーなグラウンドを活かして低いミドルを放つ。
ナラがなんとか手ではじくも、こぼれ球を拾われてピンチは続く。

16分
中盤で自由にボールをまわして、ゴール前へセンタリングを上げる。
飛び出した高田保則がフリーでヘディングするも、ナラの真正面に。

24分
右サイドからのFK。フットレが遠いサイドに上げたボールを呂比須がクリアミス。
ゴール前に落ちたボールを、サンパイオが右足で合わせて1点差に詰め寄る。
「アシスト=呂比須ワグナー」と公式記録に載せたいほど、きれいなアシスト。
首を振ってヘディングしているので、本人は大きくクリアしたかったのだろうが。

26分
センターサークル付近から、右サイドの高田保則へ大きくサイドチェンジ。
そのまま高田が突破するが、サンパイオにペナルティエリア内で倒されてPKを得る。
スライディングタックルは、横から入っているし、ボールに行っていると思った…
…けど、たいていリプレイで見ると審判が正しいんだ、これが。
このプレーも、確かに着地した足も一緒に払ってしまっているのがわかる。

27分
呂比須のPKはいったんナラに止められるも、こぼれ球を押し込んですかさず突き放す。
ナラはしっかりコースを読んで、難しい高さのボールを左手で止めた。
ボールが真正面に転がったのは、不運だったとしか言いようがない。

40分
中央のフットレが、素早いリスタートで右サイドの永井へスルーパス。
フリーの永井が右アウトサイドで、同じくゴール前フリーで待つ山口の足元へ正確なボールが入る。
トラップにもたつきDFに寄せられながらも、小島の位置をよく見てループシュート。
ボールは惜しくもゴールネットの上へ。
ゴール前のもたつきといい、ループといい、ワールドカップ予選の韓国戦を彷彿とさせるプレー。

フリエの布陣 そのに
30分過ぎにサンパイオが最終ライン中央に入り、原田が右にまわる。
井上は山口とともにボランチに…… と思ったら、いつのまにか山口はトップ下に。
フットレには右サイドに流れる傾向があるので…… ということは、山口がトップぅぅ!?

前半の感想
なんか、気づいたら2点も取られてた、ってな感じ。
左右からフリーで上げられるくせは全然直っておらず、ゴール前もフリー。
最終ラインには高さもなければ、マンマーカーもいないんだよ。それでどうするの?

45分 選手交代:呂比須ワグナー→西山哲平
前半終了直前に右足をひきずる姿が見られたので、大事をとったのだろう。
相手の攻撃力が低下した後半こそ、フリエには攻める姿勢を見せてほしかったのだが。

50分
左サイドから切れ込んだ西山が、切り返して右足で遠いサイドへクロスを上げる。
大外から走り込んだ松山が、胸でトラップして右足でシュートを狙うも、ゴールへは向かわず。

51分
左サイドを永井がドリブルで突破。
岩元とクラウジオの間をすりぬけ、中央へ切れ込みながらシュートを放つも、ゴール左へ外れる。

54分 選手交代:氏家英行→大島秀夫

フリエの布陣 そのさん
大島が前線中央に入り、ポスト役に。フットレが右サイドにまわり、行き場を失った一樹は中盤に。
サツが積極的に上がるため、最終ラインが左からサンパイオ、原田、一樹なんて時間帯も。
ちなみに、山口は依然としてトップ下。

58分
右サイドから松川が中央へスルーパス。走り込んだのはなんと田坂。
フリーでシュートかと思われたが、横からサツがなんとかコーナーに逃げる。

59分
その右からのCK。リカルジーニョが上げて、中央でフリーの名塚がヘディングシュート。
ゴール左に外れるが、なんとか押し込もうと高田哲也が頭から飛び込む。

60分
西山がボールを受け取り、振り向きざまにサツをかわして、グラウンダーの強烈なミドル。
ゴール左に外れる。

63分
中央の山口から、右サイドを疾走する一樹へスルーパス。
一樹がゴールラインぎりぎりから折り返し、中央走り込んだ永井がジャンピングボレーを狙うが、ボールは無情にもその右足の上を通過した。
一樹が右サイドを自由に動きまわっている。……ということは、フットレの足が完全に止まっているということ。
なんで交代させないのか。そもそも、なんでそんな状態のフットレを出場させるのか。
アンデルソンはいったいどうしたのか。疑問と憤りが、次々と湧き起こる。

68分
自陣から右サイドを岩元が突破。前で待つ高田保則にパス──と思いきや、オフサイドトラップを仕掛けられたことを察知した高田は、まったく反応せず。
岩元は出したボールをそのまま拾い、手を挙げたままのフリエDFを尻目にさらに前進。
ペナルティエリア内まで切れ込んで、強烈なシュート。ナラがなんとか体で止め、原田が蹴り出す。

68分
上のプレーで得た右CK。リカルジーニョがカーブのかかった低いボールを蹴る。
ゴール前で西山が強烈なダイビングヘッド。瞬時にナラが反応し、右手でバーの上へ押し出す。

72分
右サイドでのワンツーから、洪明甫の強烈な右足のグラウンダーのシュート。
ナラが手で弾いて、そのままタッチラインを割ってスローインに。
あまりに度重なるベルマーレの攻撃に、どのプレーにコメントをつけるべきか迷うほど。
"強烈"という言葉を乱発しているが、決して私のボキャブラリーが不足しているわけではなく(汗)フリーで好きなように打たせているため、ほんとに強烈なシュートが乱れ飛んでいるのだ。
呂比須がいたら、いったい何点入っていたことか。

フリエの布陣 そのよん
気がつくと、前線が右に大島、中央一樹、左に井上というわけのわからないことになっている。
いったい何がやりたいのか、まったくもって理解に苦しむ。

87分 選手交代:岩元洋成→臼井幸平

87分
シュート気味のボールに反応した小島が、勢い余ってゴールに飛び込みネットにからまる。小島も苦笑い。
この試合を前に、頭を丸めた小島。
日本代表では川口、ナラに次ぐ第3のGKに終わったが、その実力は決してふたりに劣るものではない。
とくに、素早い飛び出しには定評があり、フリエのスルーパスとの対決が見たかった。

後半……に限らないけど 感想
完敗続きで4連敗。いったい何がやりたいのかが、全然見えてこない。
ゴール前での約束事がない、というか意思疎通ができていない。
結局、無理なドリブル突破で止められるか、ワンツーリターンに頼ってパスカットにあうか。
運動量を要求されるから、疲れて足が止まる。最終ラインすら安定しない。

悪いところを上げればキリがないが、ひとつだけ心配なことがある。
服部、奥野を放出してまで若手を起用するのは、監督の方針なのか。数年後を見据えてのことなのか。
3−4−3というシステムに固執する監督と、選手たちの間に溝はないのか。
上手くいっているのであれば、一ファンが口を差し挟むべき問題ではない。
しかし、上手くいっていないのであれば……
という考えを抱いて国立を後にしたら、翌日の日刊スポーツでセルジオ越後氏がしっかり述べられていた。
監督を代えるべきだ、と。

第10節以降の下位チームとの対戦で、帳尻を合わせることは可能かもしれない。
ただし、現在のモチベーションの低さでは、J1生き残りをかける相手に簡単に勝てるとはとても思えない。
1st Stageのように、簡単にはいかないだろう。
はっきり主張しておこう。3−4−3はフリエでは無理だ、と。
高さのあるセンターフォワード、俊足で1対1で勝負できるウイング、ボールをキープできる中盤、そして運動量があって総合力に優れたディフェンダー。タレントが揃って、はじめて機能する布陣であると。

最後に。日本代表監督のトルシエ氏が観戦に訪れていたようだが、ナラ"だけ"には注目してくれたことだろう。
なにしろ、あれだけの決定機をつくられながら、3失点に抑えたのだから。
フィールドプレイヤーが呼ばれることは、決してないだろうが。
#呼ばれましたねぇ、アツと山口が。認められたのは潜在能力と過去の実績だろうな、たぶん。(98.9.30)

最後に。ボールを持ったときに前へ向かう姿勢の見られない、佐藤一樹に一言苦言をば。
「才能を持たざる者にとって、才能を活かそうとしない者ほど、腹立たしい者はいない」
テクニックがないのは、重々承知している。それでも、ボールを持ったら勝負してほしい。
縦へ突破してクロスを上げるのが、ウイングの役割なのだから。

ベルマーレ平塚
前半横浜フリューゲルス
後半
会場:国立霞ヶ丘競技場/観衆:17164人
得点:1-0 クラウジオ(0分、FK)
2-0 呂比須ワグナー(7分、アシスト=岩元洋成)
2-1 サンパイオ(24分)
3-1 呂比須ワグナー(27分)

ベルマーレ平塚横浜フリューゲルス
GK小島伸幸GK楢崎正剛
DF高田哲也DF井上雄幾
DFクラウジオDF原田武男
DF名塚善寛DF薩川了洋
DF岩元洋成MF山口素弘
DF87臼井幸平MFサンパイオ
MF田坂和昭MF三浦淳宏
MF洪 明甫MF氏家英行
MF松川友明FW54大島秀夫
MFリカルジーニョFW永井秀樹
FW呂比須ワグナーFWフットレ
MF45西山哲平FW佐藤一樹
FW高田保則SUB佐藤 浩
SUB掛川 誠SUB埜下荘司
SUB三木隆司SUB波戸康広
SUB川口卓哉SUB吉田孝行

注釈:競技場で観戦しながら取ったメモを参考にしているので、若干誤りがあるかもしれません。
気付かれた方は、どんどんご指摘下さいませ。
なお、時間については競技場の電光掲示板の時計を参考にしましたが、1分程度の誤差はあります。

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