富山第一高校の布陣
ＧＫは高原。最終ラインは右から中川、本田、金森、西川郷。
中盤はボランチが篠川と加納、右に舟木（主将）、左に北川。前線は石黒と西野。

鹿児島実業高校の布陣
ＧＫは野崎。最終ラインは右から上村、上本、那須、川邊。
中盤はボランチが前田と池畑（主将）、右に萩原和、左に内野。前線は松井と田原。

６分
中盤でボールを奪って左に流し、内野が中に切れ込んで中川をかわして右足でシュート。
クロスバーの上を越える。

12分
中央やや右で、後方からのフィードを受けた舟木が、ディフェンスに囲まれる前に反転。
左から走り込む石黒に、左足でロングパスを通す。
ペナルティエリアに入ったところで石黒が右足でトラップするが、大きすぎて直接野崎に押さえられる。
もったいない……　エースストライカーにフリーでボールが渡るなんて、そう何度もないだろうに。

19分
池畑の左ＣＫ。遠いサイドでフリーの那須がヘディングで合わせるが、ゴール右に外れる。
決定的な場面だったが、基本に忠実な那須が叩きつけすぎた。

21分
左サイドで川邊からパスを受け、内野は前方の松井にボールを預けて、自らは前線に上がっていく。
松井はサイドに出し、上がってきた川邊がダイレクトに右足アウトサイドでゴール前へ放り込む。
ペナルティエリアに入った内野がいち早く落下点に達し、飛び出した高原の目前でボールを浮かせる。
頭上を越された本田と、篠川の間に走り込んだ萩原和が左足で合わせ、ゴールネットを揺らす。
松井が中盤に下がったことで中川の位置も自然と高くなり、生じたスペースに内野に走り込まれた。
中川も内野についていたのだが、中途半端に距離をおきすぎて最後まで捕まえられなかった。
解説の李国秀氏がコメントしていたように、内野が浮かせた時点で勝負あった。

25分
センターサークルで西野がスルー、石黒が難しい体勢から右前方のスペースに出す。
舟木が右足でカーブをかけたクロスを上げ、西野が囮になってその外側から篠川が走り込む。
篠川はワントラップして右足でシュートするが、野崎は両手できっちり弾く。
石黒が起点となって、富山第一がカウンターから初めての決定機を迎えた。
篠川がフリーで放ったシュートが、野崎の守備範囲に飛んだことだけが不運だった。

27分
中盤右サイドから最前線にボールを放り込み、内野がくさびになって左サイドに展開する。
池畑が左足でクロスを入れ、内野がペナルティエリアに入ったところで左足でトラップ、右足でシュートしようとするが、後方からディフェンスに足を入れられて、エンドラインを割る。
内野が頭を抱えて天を仰いだので、池畑はボールを見送ってＣＫを選択したようだが……

34分
篠川が左サイドで池畑と上村に囲まれながら懸命にボールをキープ、抜け出して北川に渡す。
北川が右サイドのスペースに展開し、走り込んだ舟木が切り返して中央に流し入れる。
石黒がペナルティアークから左足で合わせるが、ディフェンスの足に阻まれる。

34分
石黒のシュートのこぼれ球をディフェンスがクリアし、内野が受けて左サイドをドリブルで上がる。
ハーフウェーラインを越えたところで切り返し、右から上がる松井にロングパスを通す。
金森と加納の間を抜け出した松井は、胸でトラップして高原と１対１になるが、右足で浮かそうとしたシュートは力なく、高原に真正面で押さえられる。

36分
自陣左サイドで松井からパスを受けた内野が、右サイドの萩原和に大きくサイドチェンジ。
萩原和はボールを浮かせて西川郷の頭上を抜き、オーバーラップした上村が走り込んでこれを受ける。
ペナルティエリアに切れ込んで左足でシュートを放つが、ゴールの右に外れる。

ロスタイム（41分）
左サイドから池畑が右足でクロスを上げるが、ヘディングの競り合いは西川郷が制す。
こぼれ球に素早く内野が詰めて右足でシュートを放つが、高原の右手に当たってゴールラインを割る。
走り込んで体をひねりながらのシュートにしては、低く押さえられたいいシュートだったが。

ロスタイム（42分、公式記録では39分）
上記のプレーからふたつの左ＣＫを挟み、サイドを変えた三本目のＣＫ。
池畑がカーブをかけて蹴ったボールを、那須が高い打点から叩きつけて、ゴール左隅に豪快に沈める。
野崎の負傷でロスタイムが３分と長かっただけに、富山第一は安易にコーナーに逃げすぎた感がある。
一応、金森が競ってはいるのだが、問題にもならなかったな。

ロスタイム（43分）
舟木が左サイドを抜け出して、ディフェンスをかわしてエンドラインに沿って中に切れ込む。
ゴール前へのマイナスのパスを西野がスルーして、走り込んだ北川が右足で強烈なシュート。
ディフェンスにブロックされて、大きくゴールラインを割る。
体勢が充分ではなかったか、タイミングが合わなかったか、スルーした西野の判断は悪くはなかった。
ただ、ゴール前の鹿児島実業の壁が厚かった。

ロスタイム（44分）
上記のプレーで得た舟木の右ＣＫ。いったんはクリアされるが、篠川が拾って左の北川へ。
北川がゴール前に放り込み、西野がヘディングの競り合いに勝って、石黒の足下に落とす。
石黒が上本のマークをかいくぐってシュートを放つが、わずかにゴールの右に外れる。
滞空時間の長いヘディングでふたりに競り勝った西野、ボールを足下でぴたりと止めた石黒。
それぞれの特長がよく出た素晴らしい攻撃ではあったが、惜しむらくは……

前半の感想
戦前の予想に違わず、試合を支配しているのは鹿児島実業。
それにしても、なんとも内容の濃いロスタイムだったなぁ。待望の追加点も入ったことだし。
最小得点差で折り返せれば、富山第一にも光明を見出すこともできたのだろうが。

ハーフタイム
私はメインホーム寄りに陣取っていたが、上の方から青いグラウンドコートの一団が降りてくる。
どうやら決勝に駒を進めた市立船橋の選手たちが、最上段で試合を観戦していたらしい。
食べ終わった弁当箱の山を抱える背番号の大きな選手に続いて、エースストライカーの原竜太の姿が。
子供たちは握手を求めに駆け寄っていったが……

45分
高原のパントキックを石黒がヘディングで前方に流し、上本のクリアがミスキックになる。
走り込んだ石黒が拾い、最終ラインが整わないのを見て取って、すかさず右前方の舟木にはたく。
舟木が軽く浮かせたボールは、飛び出した野崎の上を越えてゴールネットに吸い込まれる。
ロングボールから相手のミスにつけ込んでの得点ではあるが、いい時間帯に追撃の狼煙が上がった。

49分
松井が中盤からドリブルで中央を突破し、右サイドに切れ込んで後方の萩原和に預ける。
萩原和が上げたクロスボールが遠いサイドの内野に渡り、フェイントで中川をあっさりかわす。
角度のないところから左足でシュートを放つが、高原に正面で押さえられる。

52分
右サイドからのスローインがペナルティエリアに入り、フリーの田原が右足でシュートするが、ボールが揺らしたのはサイドネットの外側。
思わず天を仰ぐ田原。あわてて金森が体を寄せていったが、あまりにマークが甘すぎる。

59分
ロングボールの処理を上本がもたつき、西野が奪って野崎と１対１になる。
左足でシュートを放つが、野崎の左足に阻まれる。
野崎が目前に迫っていただけに、真正直なシュートではなく、浮かせるなど一工夫欲しかったところ。
もったいない、と思う間もなく──

60分
最終ラインの上村がクリアしたボールが、金森を追い越してひとり抜け出した田原に渡る。
田原は胸でトラップした後、飛び出した高原を嘲笑うかのように、ふわりと浮かしてゴールに沈める。
──あっさり突き放されてしまい、結果的に西野のシュートは勝負を決するものになってしまった。
これが一工夫というもの。それにしても、富山第一の最終ラインはあまりに集中力を欠いていた。

61分
上村がドリブルで右サイドを上がり、ワンツーリターンでペナルティエリアに進入する。
右足でクロスを上げるが、フリーで飛んだ田原にはわずかにタイミングが合わない。
たたみかける、たたみかける。

63分
選手交代：池畑辰徳→夏迫陽平
選手交代：萩原和志→毛井陽祐
夏迫陽平と夏迫良平は双子の兄弟。萩原和志が後半途中に下がるのは、今大会ではおなじみの光景。

65分
選手交代：金森文洋→岡田悠史
加納が金森の抜けたセンターバックに、北川が加納のいたボランチに、それぞれ下がる。
ふたりともこの位置が本来のポジション。交代出場の岡田は、北川のいた中盤の左に入る。

67分
スローインを受けた石黒が、岡田とのワンツーリターンで右サイドを抜け出す。
石黒の上げたクロスに、走り込んだ篠川が合わせるが、クロスバーのはるか上を越える。
フリーで走り込んだまではよかったが、タイミングが合わなかったかぁ（嘆息）

69分
上村の右ＣＫ。ゴール前、フリーの上本がヘディングで合わせ、高原の手を弾いてゴールに叩き込む。
本来のプレスキッカーである池畑がピッチを退いたため、あわてて上村が蹴りに向かった。
ゴールを決めた上本も、半径４ｍ以内に誰もいないのだから、外すほうが難しかったかもしれない。

70分
自陣左サイドからのフィードを受けた松井が、オフサイドぎりぎりのタイミングで前方に出す。
右サイドから上がってきた毛井が高原と１対１になり、ドリブルでかわそうと試みるが、高原が倒れ込みながらも懸命に右手を伸ばして、ボールを押さえる。

78分 選手交代：内野大輔→東 太陽

ロスタイム
富山第一の栗尾が交代用紙を提出するが、出場はかなわずタイムアップを迎える。

後半の感想
結果的には４−１と大差がついたものの、同点にされかける場面も見られるなど、鹿児島実業の出来は、決して誉められたものではない。
一回戦から決定力のなさが目についていたが、準決勝に至ってもまだ克服できてはいないようだ。
準決勝２試合を観戦した結果、市立船橋の優位は動かないことを確信して、国立競技場を後にした。

富山第一高校 評
今大会、これまで９得点をあげている石黒と、西野の２トップはまずまず評価できるが、鹿児島実業を相手にするには、ディフェンスがあまりにもろすぎる。
組み合わせに恵まれて、国立競技場に辿り着いたという印象はぬぐえない。
もちろん、それはそれで素晴らしいことではあるが。

富山第一高校の応援
チアガールの中に、謎の着ぐるみが２体いたのだが、あれはいったい……？

解説者としての李国秀氏
しっかりとした理論で解説して頂ける方は、一視聴者としては大変有り難いのだが、いざ観戦記を書こうとすると、その甲斐がなくなってしまう。
実際、私のコメントの半分近くは、ＴＶ中継の中で氏に言われてしまっている。
凡庸な解説者だと筆も走るんだけど、加藤久とか松本育夫とか……
＃プロ野球などは、時代錯誤の精神論がいまだにはびこってますけどね（嘲笑）