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の不思議な ボタン配置 |
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ボタンの数のスタンダードは右38個、左33個計71個である。引きと押しで音が違うから、142個の音があることになり、4通りの配列があることになる。
ちなみに、音名は次のようになる。
c d e f g a b c
ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド
ハ ニ ホ ヘ ト イ ロ ハ
| 右・引き | |||||
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| 右・押し | |||||
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| 左・引き | |||||
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| 左・押し | |||||
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ダイアトニック・バンドネオンのボタンの配列は
何故あんなに目茶苦茶なのだろうか
配置表に見られるように、その配列は目茶苦茶だ。(なお「クロマチック・バンドネオンとダイアトニック・バンドネオンとはどこが違うのか」を参照)。しかしボタンは、最初から71個あったわけではない。
製造初期には、31個であり、だんだん増加して、44個、52個、65個と増え、71個となった。これでは足りず、なお追加している人もある。特に左が足りないようだ。
ロス・セニョーレス・デル・タンゴのバンドネオン奏者のアンヘル・ラモスは98個のボタンの楽器を弾き、フランシスコ・カナロ楽団にいたミノット・ディ・チコは、118個ボタンの楽器を使用していたという。
(舳松伸男「タンゴ 歴史とバンドネオン」186P 東方出版社 1991年)
「サバド・イングレス(イギリス人の土曜日:つまり半ドンということ)」というタンゴの作曲家としてしられる ファン・マグリオ・パチョは、最初31個しかないバンドネオンで演奏し、厳しい練習を重ねて44個、52個、65個と増やしていったという。
(木田寿司「タンゴ この一冊であたなもタンゴ通 」86p:昭和62年:毎日新聞社)
このように必要に応じて、だんだんボタンの数が増えていったので、その場所がまちまちになったのではないかと推察される。最初の31個のボタンの右左の配列を知りたいものだ。
こう見てくると、バンドネオンというのは全くの手工業的、あるいは職人的産品なのだ。逆に言うと、非常に個性的とも言える。
そのまた逆を言うと、普遍性がないので、極めて民族的な楽器とも言える。ただし、民族楽器とは言えない。なぜなら、作っているところと、使うところとが違うからだ。
クロマチック・バンドネオンが後から作られたことも、普遍性が求められての結果とすればよく理解される。
クロマチックとダイアトニックとでは、リードの配列を除いては全く同じ構造だが、押し引きによる音の出方、ボタンの配列が違うから、奏法が異なってくる。
ダイアトニックでは、押しと引き、右と左でそれぞれ別々の音が出るので、併せて4種類の音階を覚えなければならない。それを覚えて引きこなすというのは、右手と左手とで配列の異なるタイプライターでタイピングをするようなものだ。
ボタンについて言うと、右38個の内、28個、左33個のうち31個が、押し引き別々の音が出るので合わせて、118個のボタンの音がある。また、右10個、左2個は押し引き同音であるが、それぞれの音階スケールに組み込まれると指順が異なるので、やはり24個の音となる。
従って、そのそれぞれのボタンを押したときの音が、右か左か、押しの時か引きの時かを頭にいれながら、130〜142個のボタンの位置を覚えなければならない。これは、慣れるより仕方がないと思う。だから、しばらく触らないでいるとすぐ忘れてしまうのだ。
しかし、プロの言うことは少し違う。プロのバンドネオン奏者である田邉義博氏は「ディアトニコ・タイプは難しいといわれるが、変奏やソロの曲などは開閉のボタンの共通音を生かして、案外うまく指が流れるように運指が工夫されているから、慣れると意外にハンディキャップは感じない。」と言っている。
(田邉義博 「バンドネオン1.歴史、基本構造 」
タンゴ、バンドネオン、ブエノス・アイレス ホームページ)
タンゴの生命は、何と言ってもあの歯切れのよいスタッカートのリズムだ。その歯切れのよさは、蛇腹を引いた時の音から作られる。蛇腹を引くと同時につま先立てた足のかかとを降ろすと強烈なインパクトを持った音が響きわたる。(石居先生に教わったが、未だ十分には出来ない)。
この奏法は多分クロマチックでも出来ると思うのだが、押引同音だと不自然な動きになるのかもしれない。ダイアトニックだと、空気抜きのバルブを押して瞬間的に蛇腹を戻し、次のリズムを刻まざるを得ない。何と言っても引きの時が押しの時よりも安定した音が出る。 曲に切れ目がなく、レガートのようにメロディーが長く続く演奏は、クロマチック向きだろう。
もう一つには、和音の作りやすさがあると思われる。ダイアトニックは、すぐ隣に1オクターブ高い音があったりするので、高度複雑な色々な和音を作れる(そうだ)。 こうした要素から、クロマチックやアコーディオンではまねの出来ない、より奏者の個性を引きださせる要素をもっている。いわばアルゼンチンタンゴ独特の奏法が生まれた。それがダイアトニックと深く結びついているのだと理解される。
また、バリエーションもクロマチックより、ダイアトニックの方が押し引き取り混ぜて演奏できるから豊かな表現が出来ると考えられる。
メロディックなタンゴはクロマチックで十分表現できる。アルフレッド・ハウゼの楽団に二人のバンドネオン奏者がいたが、これはクロマチックに近いクセロ方式だそうだ。
(蟹江丈夫:”バンドネオンの話”「タンゴ 世紀を超えて」)。
難しい和音に挑戦するのならいざ知らず、趣味で楽しむには、難しいダイアトニックにこだわる理由はない。哀愁に満ちた音色に親しみ、ある程度のリズムを表現できるクロマチックで十分ではないかと思える。
ところでピアソラの音楽は、ダイアトニック向きなのだろうか。そうなんだろうな。和音が複雑そうに聞こえる。