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という楽器 |
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バンドネオンってどんな楽器か。重さは約5キロ。両膝あるいは片膝の上に乗せて弾く。椅子に腰掛けて弾くのが通常だが、アストル・ピアソラのように立って弾く人もある。そもそも発祥の時には首から吊っていたので古い楽器にはその名残がある。
構造的には、空気を送り込んでリード板を震わせ、笛のように穴から音を出すフリーリードの楽器である。リード楽器はリード(金属の薄い板状のもの)を震わせて音を出す(草の葉を吹くと音がでる様を思い浮かべればよい)。リードの使い方によって「ビーティングリード」と「フリーリード」の2種類に分類される。
「ビーティングリード」は、リードにぶっつけて音を出す。クラリネットやオーボエなどがある。「フリーリード」リードに空気を吹きつけて震わせて音を出す。パイプオルガン、オルガン、アコーディオン、笙(しょう)などがある。
手で蛇腹を押したり引いたりして空気を送り込む仕組みの楽器が、アコーディオンであり、バンドネオンであり、コンサーティーナである。アコーデオンは鍵盤が左から右に行くに従い音が高くなるように規則的に並んでいるが、バンドネオンにあるのは一見バラバラに配置されたような30個ばかりのボタンだけだ。
しかも,このボタンは右と左の両方にほぼ同じ数配置され,蛇腹を押したときと引いたときで違う音が出るようになっている。どうしてこんな複雑な構造になっているのか。誰が考えついたのだろう。面倒な楽器なのに、なぜ人はそれを弾くのだろう等々いろいろな疑問が湧いてくる。
なにはともあれ、その構造を眺めてみよう

各部は次のような働きを持っている。

上から右側を見たもの。
4隅にネジがあり、共鳴枠と音源板の取りはずしが出来るようになっている。

上から左側を見たもの。右側にはない共鳴ボックスがついている。
左側の枠を外して、右側のリードを内側から見たもの。
左右の枠を外すと、中はがらんどう。真中に垂れて見えるのは、エアー・バルブにつながる紐。
音源板の表側。ボタンとボタン・レバー。レバーの根元はバルブになっており、ボタンを押すと、バルブが開く。
音源板の裏側。リードがついている。バルブが開くと、リードが震え音が出る。
蛇腹を使った楽器という点でいうと、バンドネオンはアコーディオンの仲間である。世間的にはアコーディオンとその仲間達と言うのが一般的だろうが、このページでの主役はバンドネオンなので、バンドネオンとその仲間達といわせてもらう。両者とも蛇腹式楽器である。 蛇腹の延び・縮みで空気の流れが直接伝わるのバンドネオンだ。それだけ音の切れが良く、感情が込められる。
それぞれに、クロマチックとディアトニックがある。 リードを使った楽器となると、もっと仲間が増える。オルガン、ハーモニカが加わる。リードを使った楽器は中国の笙(しょう)が起源で、西に伝わって色々工夫されて19世紀の初めリード・オルガンとなった。笙は日本にも伝わって、今でも雅楽に用いられている。 バンドネオンにも色々種類があり、5種類の形式があるという。 ディアトニック方式、クロマティック方式、クセロ方式(クロマチックに近い配列)、ピアノ方式、メイセル方式(クロマチックに近い配列) (蟹江丈夫 ”バンドネオンの話”「タンゴ 世紀を超えて」78〜79p)
左手:ベースボタン
左手:ベースボタン
音階が左右で独立している
クロマチック・バンドネオン と ディアトニック・バンドネオンとの違い
第一に、クロマチック・バンドネオンは押引同音、ディアトニック・バンドネオンは押引異音である。
第二に、ボタンの配列が違う。クロマチックの音階配列は、ボタン式アコーディオンに近く、半音階的に比較的規則的に並んでいる。一方ディアトニックは、言うなれば目茶苦茶な配置に近い。
この点についてはは、舳松伸男「タンゴ 歴史とバンドネオン」が詳しい(164P〜169)。図による詳細な説明がある。楽器としては、クロマチックの方が合理的だし弾きやすく、また覚えやすいことになる。(ただし私は触ったことはない)。
クロマチック・バンドネオンは1910年ごろパリでタンゴ熱が高まった頃、フランスのアコーディオン奏者の要望に応えて開発された。ディアトニックは、蛇腹の押した場合と弾いた場合との音階を別々に覚えなければならず、しかもそれぞれの音の配列がお互いにばらばらで、それが右と左とある。
アルゼンチンタンゴでは、ディアトニック・バンドネオンを使うが、日本ではクロマチック・バンドネオンが使われることが多かった。第二次大戦後のタンゴ・ブームの時代に活躍した早川真平とオルケスタ・ティピカ・東京や、坂本政一が率いるオルケスタ・ティピカ・ポルテニアなどはクロマチックバンドネオンを使用していたという。昭和29年ファン・カナロによるタンゴの日本演奏を契機にディアトニックを志す者が出て来たという。
(舳松伸男:「タンゴ 歴史とバンドネオン」202p、213p、217p)
バンドネオンとアコーディオンの音の区別がつかない人がいる。バンドネオンの音質はやや固く金属的な感じを与えるが、アコーディオンは柔らかい音がする。バンドネオンは重く、メランコリックであるが、アコーディオンは軽く、華やかである。シャラ、シャラ、シャラとしたミュゼット音楽は、バンドネオンでは無理だ。しかし、バンドネオンは、演奏者の気持ちの表現が伸び縮みの激しい蛇腹の動きを通じてアコーディオンより素直に伝わる。
バンドネオンは、赤とんぼ、月の砂漠、小さい秋など日本の叙情的な曲にピッタリだ。ドイツ民謡にも合うに違いない。最初、携帯オルガンとして使われたようにバロック音楽にもぴったりである。しかし、アルゼンチンの人達というよりタンゴ弾きの人達はどうしてバンドネオンが気に入ったのだろう。
音は左の方が低音域で,右の方が高温域である。左と右とでは音質が少し違う。左側についている掌台の効果だろう。バンドネオン奏者の田邉義博氏は次のように言っている。「左手の方は甘く、くすんだビオラの様な音色で右手の方は鋭い音が出る。この違いを生かしてプグリエーセ楽団などはうまい表現するのだが、これには案外無関心な人が多い。」
(田邉義博 「バンドネオン1.歴史、基本構造 」
タンゴ、バンドネオン、ブエノス・アイレス ホームページ)
以下は、あくまで音であり、音楽ではないことをお断りしておく。(なお音を聞くにはQuick Timeが必要。)
バンドネオンの右の音 (ドレミ) バンドネオンの右の音(メロディー)
バンドネオンの左の音 (ドレミ) バンドネオンの左の音(メロディー)