ニフティ、送金代行システムの終了

オンラインソフトの送金システムとして、長く利用されてきたNIFTY-Serve(現@Nifty)のシェアウェア送金代行システムが、2001年の3月をもって一旦終了することとなった。今回は、サービス終了に関してその経過と理由について取材を行った。

 まず、ご存知のない方のために、シェアウェア送金代行システムについて簡単に説明しておこう。シェアウェア送金代行システムは、その名前の通りシェアウェア作者に代わってNIFTYが料金の回収を行うシステムだ。ユーザー側はクレジットカードの情報を入力する必要がなく、NIFTYの使用料金に上乗せされて請求されるため手間がかからない。簡単で安全な支払い方法であるため、約3000名のシェアウェア作者が利用している。

 ところが、このサービスが突然終了するという情報が、一部のシェアウェア作者だけに通知された。これを伝え聞いたシェアウェア作者の一部では、終了の理由と今後の対策をNIFTYに求めるなどの行動を起こした。その後、シェアウェア作者の会議室でNIFTY側担当者から説明があったが、不信感は拭いきれていないようだ。NIFTYも、会議室やメールで通知するだけでなく、葉書を使ってシェアウェア送金代行システムの終了を、シェアウェア作者に告知したり、終了までの期間を長く取るなどの配慮は見せているのだが、筆者から見ると説明不足の感は否めない。

 今回の取材にあたり、多くのシェアウェア作者にアンケートでご協力をいただいた。そのアンケートによると、送金全体のシェアウェア送金代行システムの占める割合は、2割から5割程度。システムの終了が影響ないとはいえないが、徐々にインターネットでの決済システムに移行しつつあるのが現状のようだ。作品のヘルプファイルや添付文書の変更が必要になるが、閉じたパソコン通信から開かれたインターネットへという時代の移り変わりのなかで、こうしたサービスが終了するのは、残念だが仕方がないことだ、と冷静に受け止めるシェアウェア作者が多かった。「オンラインソフトの発展に多大な貢献をしてきた業績は称えるべき」(ike氏)「シェアウェアという一つの分野を広く普及させた貢献度は、計りがたい」(K2氏)というように、シェアウェア送金代行システムの果たした功績を称える意見もある。

 一方で、「Vectorでは手数料が余分に取られるので、作者の預かり知らぬ部分で(ユーザーにとって)『値上げ』になってしまう」(shoda.T氏)、「出店料を取ってもいいから続けて欲しい」(Kaige氏)という存続を希望する声が事実だ。「『使われなくなったから廃止』ではなくて、うまくインターネットに移行させていく方法を考えてほしい」(秀まるお氏)、「もっとやるべきことをやってから廃止すべき」(h_tosh氏)などの意見もある。

 時代の流れ、といってしまえば簡単だが、まだまだ利用者もあり知名度もあるサービスを終了させるのはなぜなのだろう?この点をニフティ株式会社フォーラム・コミュニティ部担当部長、伊藤氏に伺ったところ、そもそもNIFTYがシェアウェア送金代行システムを開始した背景には、シェアウェアの送金を容易にすることで、フォーラム上での作者とユーザー間のコミュニケーションを活性化させるという意図があったという。つまり、現在Vectorが行っているシェアレジのような「ビジネス」として企画運営されたものではなく、あくまでも会議室やフォーラムの活性化のための「サービス」の一環としてなのだ。その結果としてNIFTY全体のアクセス時間が増えることを期待してのサービスなのだろうが、それ自体で採算を考えてはいなかったようだ。多くのシェアウェア作者はシェアウェア送金代行システムが、NIFTYの一機能、すなわちビジネスの一部であると認識し、一方でNIFTYはあくまでサービスであるという位置付けから、相互の意見のすれ違いが発生したのではないかと思われる。

 今回、シェアウェア送金代行システムがサービスを終了する理由には、サービスとして提供する意義が薄れてきたことが挙げられる。インターネットの普及により、ダウンロードはインターネットで送金はNIFTYで、というスタイルも多くなり、作者との交流もウェブ上あるいは電子メールによるものへと変化した。つまり、(NIFTYとしては)本来の目的であるフォーラムへのアクセスが減少しているのだ。

 では、シェアウェア送金代行システムが終了した後はどうなるのか。NIFTYはシェアウェア作者に対して、Vector上で展開する「 iREGi」への移行を勧めている。しかし、Vectorの決済システムでは手数料が高くなるため、ユーザーに負担が掛かってしまうのでは、と躊躇する作者もいる。また、様々な理由で移行できない作者も存在するようだ。
 NIFTYとしては、パソコン通信ソフトやオートパイロットツールなど、インターネットとは関連のないシェアウェアに関しては、シェアウェア送金代行システムに代わる、何らかの方策をとる意向だ。ただし、具体的には何も決まっていない状態なので、意見や良いアイディアがあれば、NIFTYに連絡するとよいだろう。

 ユーザーの立場からすれば、利便性の高い安全な送金手段が失われるわけだが、それに代わるiREGiやその他の決済システムがきちんと稼動してくれればと願うだけだ。シェアウェア送金代行システムが終了するからといって、気に入って利用しているシェアウェアに対して送金しない理由の免罪符とはならないことだけは確かだ。

| OnlineSoft CloseUp | | Link |