怪奇大作戦
昭和43年9月から昭和44年3月までTBSで放送された、円谷プロダクション制作のミステリー作品。脱・怪獣路線をめざし、新たな空想科学番組として誕生した。怪奇な事件や犯罪を「科学」という観点から解決していく。こうしたプロットは、後に「10-4
10-10(テンフォー テンテン)」などの番組に受け継がれていった。近年放送された「ブラックアウト」にも、怪奇大作戦の影響が見られる。
しかし、全体的にダークなテイストと、悲しみに満ちた結末は、当時小学生だった私には「恐い」という印象を強く植え付けたのであった。
監修/円谷英二、プロデューサー/橋本洋二(TBS)・守田康司・野口光一
出演/三沢京助・・・勝呂誉、牧史郎・・・岸田森、野村洋・・・松山省二、小川さおり・・・小橋玲子、的矢忠・・・原保美、町田警部・・・小林昭二
放送話数 | タイトル | 脚本 | 監督 |
1 | 壁ぬけ男 | 上原正三 | 飯島敏宏 |
2 | 人喰い蛾 | 金城哲夫 | 円谷 一 |
3 | 白い顔 | 金城哲夫、上原正三 | 飯島敏宏 |
4 | 恐怖の電話 | 佐々木 守 | 実相時昭雄 |
5 | 死神の子守歌 | 佐々木 守 | 実相時昭雄 |
6 | 吸血地獄 | 金城哲夫 | 円谷 一 |
7 | 青い血の女 | 若槻文三 | 鈴木俊継 |
8 | 光る通り魔 | 上原正三、市川森一 | 円谷 一 |
9 | 散歩する首 | 若槻文三 | 小林恒夫 |
10 | 死を呼ぶ電波 | 福田 純 | 長野 卓 |
11 | ジャガーの眼は赤い | 高橋辰雄 | 小林恒夫 |
12 | 霧の童話 | 上原正三 | 飯島敏宏 |
13 | 氷の死刑台 | 若槻文三 | 安藤達己 |
14 | オヤスミナサイ | 藤川圭介 | 飯島敏宏 |
15 | 24年目の復讐 | 上原正三 | 鈴木俊継 |
16 | かまいたち | 上原正三 | 長野 卓 |
17 | 幻の死神 | 田辺虎男 | 仲木繁夫 |
18 | 死者がささやく | 若槻文三 | 仲木繁夫 |
19 | こうもり男 | 上原正三 | 安藤達己 |
20 | 殺人回路 | 市川森一、福田 純 | 福田 純 |
21 | 美女と花粉 | 石堂淑朗 | 長野 卓 |
22 | 果てしなき暴走 | 市川森一 | 鈴木俊継 |
23 | 呪いの壷 | 石堂淑朗 | 実相時昭雄 |
24 | 狂鬼人間 | 山浦弘靖 | 満田 |
25 | 京都買います | 佐々木 守 | 実相時昭雄 |
26 | ゆきおんな | 藤川圭介 | 飯島敏宏 |
あらすじと解説
予告状通りに盗みを繰り返す怪盗「キングアラジン」。彼は、警官達の見ている前で壁を抜けるように消えていくのだ。協力依頼を受けたSRIは、キングアラジンを追跡、鳩を使ったトリックで脱出するキングアラジンの撮影に成功する。彼の正体は天才奇術師一鉄斉春光であった。そして、彼の屋敷に向かったSRIを待っていたものは・・・。
記念すべき第一作。にも関わらず、SRIについては「科学で犯罪を調査する組織」としか紹介されない。LDの解説書で設立背景を読んでびっくり、である。登場人物の性格描写などは、元々第一話になるはずだった「人喰い蛾」の方が詳しい。なにせ、後半SRIのメンバーは、ただ観ているだけの展開なのだから。劇中、野村が町田警部に向かって「恐かったですよ、信号無視にスピード違反。先輩は事件となると人が変わるんだから。」というセリフがあるが、信号無視もスピード違反も立派な犯罪。注意しない町田警部も立派な警官とはいえないぞ。
皮膚が泡状に溶けるという怪異な死体が発見される。連続して起こる謎の怪死事件に、警視庁はSRIに調査を依頼する。牧は死体から、蛾の燐粉とともに肉体を溶かすチラス菌が発見、これが原因であると推測する。一方、被害者の中にマルス自動車の社員が2名含まれていることから、三沢は何らかの犯罪ではないかと推理し、牧と対立してしまい独自の捜査を開始する。
冷静沈着、博識の牧と肉体派、行動派の三沢という図式を明確にする第二話。人間に合成される泡の映像が、本当に溶けているようでよい。今ならCGでリアルなものを作れるかもしれないが、泡が人を溶かす怖さは表現できないかもしれない。
女性が冷凍され、殺されるという事件が発生、SRIは早速調査に乗り出す。牧は被害者の肉体から「ガンマG線」が使用されたことを見つけ出す。一方、三沢は現場から立ち去った女性が、「死神の子守歌」というヒット曲を歌う高木京子であることをつきとめる。そして、彼女が歌う「死神の子守歌」の内容そのままに女性達が死んでいくことに気がつく。
実相時監督作品。恐怖というよりもやるせない、どうしようもない寂しさが根底に流れる作品。母の体内で被爆した妹を救うために犯罪を犯す兄。その兄を説得しようとする牧。同じ科学者でありながら、立場が異なるふたりを描くことで、正義とは何か?を問い掛けている。
ドラッグを飲みながら運転していたために交通事故を起こしてしまった恋人達。運転していた山本は生き残り、助手席にいたニーナは死んでしまう。しかし、葬儀の夜、ニーナは蘇り巡回中の警官の血を吸う。そして数日後、警官同様血を吸われて死んだニーナの養父の調査に現れた的矢は、ニーナがペンシルバニアで拾われた孤児であったことを知る。そして熊本で発生した吸血殺人事件の調査に向かった牧が見たものは・・・
なぜニーナは血を必要としたのか、本当に吸血鬼であったのか、というなぞ解きは行われないまま、事件は決着を迎える。しかし、ここで描かれていたのは山本とニーナの愛。愛があれば、恋人を救うために人を殺せるのか、自分を犠牲にできるのか?
夜の道路で発生する交通事故。目撃者は、現場で浮かぶ女の生首を見る。一方、死体遺棄事件の死体から猛毒のジキタリスを発見した牧は、以前病院でジキタリスを研究していた男を思い出す。そんな折り、ハイカーを同乗させたカップルの車が谷底へ落下、生き残った運転手が浮かぶ生首を見たという証言で、牧は現場へとぶ。そこで事故の第一発見者として現れたのは、ジキタリスの研究をしていた峰村だった。そして、その夜、死体のひとつが忽然と消えてしまった。
この話では、自分の研究を世の中に認めさせるための「科学者の暴走」が描かれる。生首のトリックは、他の話と比べて現実性が高い。
全国運輸の経理課長で、社長である村木剛造の息子、秋彦が自宅で死んだ。胸を高熱で貫かれて。部屋のテレビのチャンネルが、放送されていないバンドになっていたことから、牧はテレビを分解調査する。その頃、趣味の飛行機操縦を終えて自宅に戻ろうとした剛造を、車内のテレビから5年前に死んだ小山内久市が脅迫する。「次はお前だ!」やっとのことでテレビに仕掛けられた装置を見つけた牧は、特殊電波の発信源を特定しようとする。その時、精神的に追いつめられた剛造が、セスナで逃亡を図る。
復讐のために利用される科学。ここで牧が、犯人と同じように犯罪で両親を失っていることが語られる。「おまえ達に何が判る!」と叫んで自殺する犯人は、もうひとりの牧なのかもしれない。時代を感じさせるのは、捜査のために剛造の自宅に盗聴器の設置を提案する野村に対して、「近頃はプライバシーとかがうるさくてなぁ」と答える町田警部。じゃぁ、それまではやっていたのか(^^;イミシンである。
ひとりの男が死体で発見された。首の周りは、極低温による組織の破壊が起こっていた。同夜、ある家の前では体中から青白い煙を放つ、不気味な人間が目撃される。そうさする牧と町田警部の前に、その男が現れ格闘となる。腕を掴まれた牧は、その異常な冷たさに驚く。宇宙開発のために低温で人間を保存する技術の開発の犠牲者ではないかと推測する牧は、最初に目撃された家の前で待ち伏せする。
全編を通じて、唯一の大型兵器《サンビーム500》が登場する。
ここでも宇宙開発のためという大義名分をかざした「科学の暴走」による悲劇が描かれる。科学は、犠牲なしには発展することはできないのだろうか。
高原のヒュッテで、2年間の渡米を前にした志村竜夫と杉江ユキは、送別のキャンドルパーティーをふたりだけで行なっていた。しかし、ふざけて投げたインディアン人形の矢が、竜夫の胸に当たり竜夫は死んでしまう。そこへ道に迷った牧が現れる。死体を冷蔵庫に隠したユキは、牧に部屋を貸す。深夜、牧の部屋に男が侵入、格闘となり、牧は相手を殺してしまう。その瞬間、目覚めた牧は夢かと思ったが、浴室には死体が。しかも、ユキはそれを自分が殺した竜夫だという。死体は誰が殺したのか?
話がほとんどヒュッテの中だけで進められる異色作。前半はヒッチコックばりの展開だが、シナリオが藤川桂介なので、「いくらなんでもそりゃねぇだろ」と思ってしまうのだった。ちなみに志村竜夫とその弟のひとり二役を、あの佐々木功(現、ささきいさお)が演じている。若いね>ささきさん。
静かな瀬戸内海で、遊覧船の乗客が見たものは、海から現れる無数の手と死神の姿!平家の落ち武者の呪いではないか。一方、東京では外人女優の首から、衆人注目の中ネックレスが奪い取られた。記者のカメラには、ネックレスを外す白い手だけが浮かび上がっていた。瀬戸内海での騒ぎと白い手の関連性に気がついた的矢と三沢は、調査のため瀬戸内海へ向かう。
タイアップによる地方ロケ(^^;である。トリックはすごく大掛かりなのにチープ。瀬戸内海観光スポットめぐりにもなっている。まだ、瀬戸大橋はない。
妻と観光に訪れた伊豆の海岸で、中年男の死体を発見した田原。死体は警視庁の警部補だった。それ以来、死体の幻聴や幻覚に悩まされる田原。しかも、殺した覚えもない警部補殺しの犯人として逮捕されてしまう。殺害現場には田原の指紋が残され、死体は田原の髪の毛を握っていたためだった。護送の途中に脱走した田原は、SRIに助けを求める。「同じ指紋を持つ人間がふたりいる可能性はないのか」と。
地下銀行って、この頃からあったんだなぁ。しかし、ここまで周到に犯人に仕立て上げるより、死体を見つからないように処分した方が簡単なんじゃない?