東芝サポート問題

事件の概要

まず事件の概要について説明しておこうか。事の発端は、福岡に住むA氏が東芝製ビデオを購入したが、S-VHSで録画されたテープの再生に問題があり、修理を依頼したところたらい回しにされたあげく、最期は東芝の渉外対策課という総会屋専門の部署に電話を回され、罵詈雑言を浴びせられたというものだ。

どんなこと言われたの?

そりゃもう酷い内容だよ。
あれを聞いたらこっちがムカムカするくらいだね。『あんたみたいのはクレーマーっていうの』とか『何が目的なの?』なんて、少なくとも客に向かって言う言葉じゃない。

そんなのよくあることじゃないの?

頻繁にあったら困るんだけどね(^_^;)
で、その人は途中からテープに会話を録音していたんだ。それをインターネットの自分のページで公開したところ、すごい騒ぎになった。内容もさることながら、その言葉の端々に浮かぶ軽蔑や恫喝がダイレクトに聞き取れる。とてもインパクトがあったよ。だから、多くの人が問題意識を持ち話題にしたんだよ。
東芝も最初は無視をしていたんだ。東芝のサイトにあった掲示板に、この問題について書き込まれたら掲示板そのものを消してしまったり、東芝の運営する『駅前探検倶楽部』の掲示板もメンテナンスといって休止してしまうという徹底した無視ぶりだ。
けれど、インターネットを中心として話題が広がり、マスコミに取り上げられるようになると、今度はA氏に対してページの閉鎖を求める仮処分申請を出すという強気にでた。またこれが反感を買うことになり、結局、ウェブページ上で謝罪文を掲載し副社長がA氏に会いに行って一段落した。今はA氏のページも東芝の謝罪文も存在しない。

ふぅん。で、どっちが悪いの?

どっちが悪いと簡単には言い切れないけど、『サポート』という点では、東芝に非があることは明らかだね。謝罪文の中でも、東芝もそれを認めていたし。
ただ、ぼくたちが知っている事実は『東芝社員と名乗る男が罵詈雑言を放った』ということだけだ。それに至る経緯は、A氏がページ上で公開していたが、それが真実だという証拠はない。嘘だという証拠もないけどね。

へぇ。それ言ったって、本当に東芝の社員なの?

公式の場で、東芝も社員だと認めているよ。ただし、総会屋対策のために雇った警察OBだという噂はあるけどね。それなら、あの人を見下したような傲慢な物言いや横柄な雰囲気は納得できる。

サポートって大変なんでしょ?しつこい客は、怖いとこに回したっていいんじゃない?

そんなこといったら、サポートを置く意味がないよ。確かに本物の総会屋だったりゴネて金品をせしめようとする奴がいるのは事実だけど、サポートが大変なのはどこでも同じ。ぼくらの飼い主のオスの方もサポートの経験があるそうだけど、大変だと言ってたよ。でも、だからといって別の部署に回してしまうのは仕事を放棄しているのとおんなじだよ。
会社もいけないと思うよ。企業は利益を挙げることが第一だから、サポートのような後ろ向きと思えるような仕事は重視しないんだ。客と直接対話する部署だというのにね。

サポートがしっかりしないと、ということなのね。

その通り。相手が総会屋だろうがヤクザだろうが、毅然とした態度で臨めばいいことだ。東芝は、そうした態度を取らなかった。また、自分の持っている情報を公開しなかったのも問題だよ。

事件の影響

で、結局東芝が悪いということで終わったんじゃないの?ことさら取り上げることでもないんじゃないの?

表面上は終了したけどね、事件の影響や残したものは未だにインターネット上にくすぶっている。

例えば?

例えば、『インターネットなら消費者でも意見を述べられる』ということが広く認知されたこと。東芝の対応は旧態依然としたもので、脅しとも取れる仮処分申請まで使って黙らせようとしたが、そんなことをしてもインターネット上での情報の広がりは止めることができないという事実が明確になったね。
また、A氏のページをきっかけにして、『企業を告発する』サイトが増えた。それまでにも、自分の意見として企業を告発するページはあったけど、A氏のページは肉声を掲載したというインパクトで注目をあつめたからね。事実、そうしたサイトの中には、企業と和解したところもある。

力のない消費者が、大企業に意見を言えるのはいいことじゃない。企業がそれを聞く度量があるかどうかは別にしてさ。その他は?

マスコミ、というかジャーナリズムの崩壊が認識できたということもあるね。東芝という大企業に慮ってか、東芝の名前を出さずに報道するメディアもあったし、TBSのニュース23に至っては、筑紫哲也が『インターネットは便所の落書き』なんて発言までしている。

まっ、お下品♪

筑紫哲也の真意は判らないけれどね。それに『週刊文春』の記事もマスコミの信用を落とした一因だね。

どんな記事だったの?

記事の内容は、A氏が名うてのクレーマーでそれまでも富士通の社長にパソコン送りつけたとか、まぁ、A氏を悪者にしたて挙げようとするものだね。

でも、事実なんでしょ?事実だったら、A氏を信じた人っていったい?

うーん、事実とは言い切れないよね。記事を読んだ限りじゃちゃんとした証拠があるわけじゃないし、インターネットに転がっている噂をまとめたという感じかな?それまでにもA氏がNIFTYの個人売買でトラブルを起こしていたという話は流れていたからね。
それに週刊文春の記事自体が、週刊朝日に対する対抗心だという話もあるんだ。

どういうこと?

元々、週刊朝日はA氏に好意的な記事を掲載していたし、東芝との面談にも記者が同席していた。文春は前から週刊朝日と対立していたからね、意地でもA氏擁護の立場はとれないということらしい。まぁ、これも噂だけどね。

噂ばっかりね

そう。第一、問題は『東芝が客に対して取った態度』なのであって、A氏がどんな人間でどんなことをやってきたかなんてことは関係ないはず。犯罪者だって人権を認められる国なんだからね、この日本の法律は。まぁ、人間の作ったものだからねぇ。
そう、人権といえば、個人情報に関する問題もあった。

個人情報?年齢とか住所とか?

そう。人間の中には愚かな奴もいて、A氏の個人情報をインターネットで流したんだ。こういう奴に限って自分が正義で対立する意見の持ち主が悪と決め付ける。かといって自分が同じ事をされるのはいやだというどーしようもない輩だよ。ととっ、話がそれた。
A氏はハンドルネームでページを開設していたから、企業を告発する以上実名でやるべきという意見もあった。でも、当事者の東芝はA氏の本名も住所も電話番号も知っているんだから、第三者がそれを知る必要はない。それでも、あえて個人情報を流出させるというのは、明確な攻撃だよ。

インターネットって怖いね

確かにインターネットでは、こうした個人情報が公開されてしまうという危険性をはらんでいることは事実だ。でもそれは、インターネットの問題じゃない。インターネットは道具に過ぎないんだ。肝心なのは道具を使う人間のモラルなんだよ。

結局何だったのか?

(インターネット上の資料を見て)A氏のページと東芝の謝罪文は消えちゃったけどまだいろいろと残っているのね。

あぁ、ハムスターの口に戸は立てられないっていうじゃないか。それにインターネットに公開された情報は簡単に複製できるからね。

でも、公式なものは少ないわね。

東芝は最初無視していれば消えるだろうくらいの態度だったから、もちろんなんのアクションも起こさなかったし、謝罪でもすべての情報を出していないからね。東芝は謝罪する段になっても、A氏を『重クレーマー』だといっているんだから、その証拠を出すべきだったと思うよ。

ゴネ奴は脅すぞということね。

そう取られてもしかたないだろうね。第一、どこまでゴネたら東芝のいう『重クレーマー』になるのか、ぼくらには判断材料すらないんだからね。正当な意見を言っても、ゴネたと言われてクレーマー扱いされたんじゃたまらないよ。

なんだか、すっきりしないわね。もやもやしてやな感じ。

それは多くの人間が感じていることだと思うよ。結局はうやむやのうちに終わってしまった感が拭えないからね。ぼくもまだうまく意見をまとめられないんだ。
でも、これを機会にして、サポートの質や量の向上、情報公開といったように、いい方向へ向かうといいね。企業はもっとサポートを大切にして、企業のイメージアップを図って欲しいな。


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■用語解説

クレーマー
クレームをつける=抗議するという言葉から派生した言葉か?『抗議する人』という意味らしいが、英語ではない。(と思う)そもそも、この事件が起こるまでは聞いたことがない。映画の『クレイマー・クレイマー』とは違うんだろうなぁ。
NIFTYの個人売買
NIFTY-Serveの『売ります・買います』掲示板では、以前から個人売買が盛んである。だが、犯罪や詐欺などのトラブルも少なくない。怪しげなものが多いので、見ている分には楽しいが、手を出すなら慎重に。最近では、インターネットのオークションもつまるところは個人売買。利用の際は十分注意しよう。

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