「快便」像とは
 辻教授の「快便」像とは、下山教授とは1点だけ違う。水に浮かぶべきだというのだ。
「植物繊維が多ければガスが発生するから浮かび、数分後泡を残して沈みます」
 絵本「うんち」は、六カ国語に翻訳され「東洋の思想をウンコのレベルで描いた」などと評判を呼んだ。
 作者の五味太郎さんは便に見とれるときがある。枝豆の粒なんかを見つけると「おなかの中を通ってきたんだな」と切ない気持ちになる。「人間って大自然の一部なんですよ。汚いものにレッテルを貼って心身の状態を表現してくれるウンコを遠ざけておいて、山や川の自然を楽しめる分けないです」
 五味さんにとっての快便はどんな形なのだろう。
 「うんこしたいーって便所に入って、ほかのことを考える前にするっと出て、見たら大きいのが2本くらいあるのがいいね。素直なウンコってことかな。食べたり音楽を聴いたりするのと同じように、便所に行くことって本来は楽しいことなんだよ」

記者の一言
 取材を始めて以来、我が家の食卓は納豆や芋、豆が増え、久しく忘れていた直径2センチ級が出るようになった。たまにファストフードを食べるとてきめんに細くなる。体の変調をいち早く知らせるセンサーなのだ。「汚物」から目を背けるのではなく、毎朝きちんと対面しようと思った。        平成11年10月20日水曜日・日本経済新聞朝刊より


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