--- インタビュー記事 ---

ベルリンの音楽誌「artefakt」に向けておこなわれたインタビューの内容です。

●99/5のインタビュー●

1. NNNにおけるパートナーについて教えてください。

nnnはtagomagoとhiroshi kumakiriによるユニットです。 hiroshiはCGアーティストでもあります。 彼のハンドメイドによる発信器によりnnnの音楽は制作されています。 その発信器はシステム・ブルーシステム、システム・ルージュ、 システム・ブルーウインクと名付けられています。

2. これら2つのトラックが継続した曲なのはなぜすでか? ここで私がお聞きしたいのは、これらのトラックがなぜ生じたのか、 どんな装置やソフトウエアのためなのか、ということです。

160/240はそれぞれ1台の発信器を鳴らしたまま手を加えずに録音したものです。

この曲の重要な要素はそのプロセスにあります。 制作する上でまず考えたことは、いかに手を加えずに予測不可能なものをつくる かと言うことです。 nnnの発信器は電池で動いています。内部が単純な構造のために電池の容量が減 っていく課程で発声される音が少しずつ変化してゆき、人間の叩くパーカッショ ンに似た不思議なグルーブ感を出すことに成功しました。 本当に手は加えていません! 2曲構成にしたことは2つの異なったグルーブ感を対比させたかったからです。

3. 160/240というタイトルに隠された意味をおしえてください。

160/240というタイトルはそれぞれの曲のbpmを表しています。

4. 160/240に隠されたコンセプトは、゛反復"のように思えるのですが そうですか? それぞれの曲が30分もの長さであることについておうかがいした いのです。(私は、ちょっと大胆だなあ、と感心しました)。 このCDのコンセプトについて、できるだけコンセプトを 説明していただけませんか? ひとつだけでもいいです。 もしかしたら、2番の質問と同じになってしまうかもしれませんが、 とても興味があるのです。

コンセプトは反復といえるでしょう。 しかし、一般的なミニマルミュージックのようなアカデミックなイメージには したくありませんでした。無邪気な子供の変化を傍観する視点があります。 30分の長さにしたのは出来る限り発信器の勝手気ままな変化を記録に残したかっ た気持ちがあります。

5. 私は、あなたのソロプロジェクトTagomagoについて良く知りません。 それはnnnとは何がちがうのでしょうか? nnnの他の作品は、 160/240とどう違うのでしょうか?

tagomagoはクラブカルチャーを意識しながらノイズ、プログレ、ドラムンベース などを取り入れ、常に新しい試みをしてきました。 nnnと違う点は1つにはhiroshiの作った発信器をメインに作曲し、基本となる音 は彼にまかせて、僕はコンセプトやエフェクトを中心に担当していることです。

hiroshiはユニークな人物で、ライブを行う時には彼のキャラクターもnnnの重要 なファクターになります。 2つには常にストイックなスタイルで音そのものによる表現に徹していることです。 nnnの1stのthis island earthはplane,storm,mountainなどの曲名から連想され るように具象的イメージを単純な電子音で表現した作品です。 2ndのchamber music for factoryは60minリアルタイムで録音した内装工事の音 に電子音をオーバーダビングしたユニークな作品です。 160/240は前作と違って、作曲のプロセスそのものをコンセプトとした無機質な 作品といえます。
●99/11のインタビュー●

1.だれがマシンを作っているのか?なにに影響されてマシンをつくったのか?

熊切寛が当初、美術作品として作ったものです。 幼いころ見たSFの漫画、テレビなどにより、いつのころからか 自分の中に確かな未来像が出来あがっていました。 ところが、いつになっても透明チューブの中を走る電車や 空飛ぶ車は現れません。 待ちきれなかったので、まず自分で作ってみよう、と思いました。

2.nnnの一般的(普遍的?)な目的はなにか? nnnに隠された確かなコンセプト、すべてのcdに共通したコンセプトは あるのか? 一般的な答えをください。

Nerve Net(デジタルのシステム)にとっての Noize(異世界)でありたい。

3.nnnのトラックのためにリハーサルをするか?

一般的な意味でのリハーサルは行いませんが、夢を膨らませます。

4.nnnのトラックのために作曲するか? 'island earth' と'chambermusic' はそうだと思うが、'160/240'は? '160/240'は機械だけですよね?

われわれのマシンは、従来のアナログシンセサイザーの音作りの基本である VCO,VCF,VCAの流れを持ってはいません。 なぜなら、さまざまな波が互いに変調し合いながら、音、メロディー、楽曲、 言語、が次第に生まれていく、という音世界の階層を表現するためです。 これは、世界とは何か、我々とは何か、という問いかけでもあります。

'160/240'のメロディーは4つのオシレータの干渉によって生まれています。 録音中は楽器には一切手を触れていませんが、時々わずかに タイミングが変わったり、別の音色が聞こえて来たりすると思います。 その音色を出すためのセッティングが作曲です。 '160/240'は特に、作為的でなくランダム(思考の放棄)でもない 曲作りを心がけました。演奏と非演奏のあいだを熟慮した作品です。

5.サンプラーはつかっている? (使っていないと思うけど)どうして使わないの?

我々の音作りはいつも不自由で制御不能です。 そのほうが、電子部品たちの歌声をより引き出してやれます。 しかし、デジタル反対、というわけではないので 我々らしい使い方があれば、使おうと思います。

6.nnnのニューアルバムが作られますよね?('various amusements'のこと)

ストイックなコンセプトは我々の本質ではない、と思い、 活発で軽快なイメージのアルバムにしました。 未来の若い女性サイボーグの一日の体内音、というかんじです。 '160/240'と同様、環境音といっしょにスピーカーから聞くと より楽しめると思います。

7.nnnはどんな音楽に影響をうけているの?

電子音楽に関わらず2人が今まで経験してきた 音環境すべてが関わっています。たとえばラジオのノイズや、 虫の鳴き声など。

8.nnnと比較できるようなバンドはある?

表面的には類似したものはありますが、本質的な部分ではわかりません。

9.けして人間の声を使わないのはどうして?

我々のマシンの音色は充分言語的だから。 声を使わないというわけではないが、未来人はテレパシーで話すので 音としての声はあまり意味を持たなくなるだろう。 最近の東京の若者は口をあまりあけずにしゃべる傾向にある。 母音は変化し、発音器官がしだいに麻痺しているように思われる。 しかし、コミニュケーションは減るどころか増大している。 我々の音楽は、こういった現象のアイロニカルな表現でもある。

ベルリンとのメールでのやり取りはとても 楽しいものでした。 音楽が海を渡っていくのを実感しました。 英語力のないわれわれにとって、このやり取りは常に興奮と恐怖を伴いました。 忙しい中、手を貸してくださった、すずえりさんをはじめとする皆様に 深く感謝したいと思います。

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