ロンドンの空にUFOをみる


 ぬいぐるみ作家ミヤタケイコさんの個展がロンドンのギャラリー、 「97−99」で開かれる。 そのオープニング・パーティーに向けたサウンドチェックを終えて、 ミヤタさん、コトブキ氏の奥さんのナナエさん、ギャラリーの アルフレッドと僕らプノンペンモデルは、さびれた裏道を、 そぞろ歩きしていた。

 「あ、飛行機だ。いや、UFOだ!」
松本氏の声に、皆、空を見上げる。
 古いビルの壁のずうっと上の青空には、 きれいな半月が浮かんでいた。 その傍らを球形の物体が1直線に通りぬけようとしてる。 西日を受けて輝いており、かすむほどの高度ではない。

 「どれどれ?」 「飛行機だよ」 「風船だよ」
すると、そんな我々の騒ぎを聞きつけたかのようにUFOは スピードを落とし始め、停止かと思われたとき、 今度はゆっくりと輪を描き始めたではないか。
 UFOではない、という証拠をいち早く見つけようとしていた我々の 試みはあっさり打ち砕かれた。いかに不思議好きのミュージシャンと いえど、見たことの無いものを見るのはやはり怖いのだ。



 UFOはきれいな円を描き終えると、口をあけたままの我々を残して 別の角度へ飛び去っていった。 「見えない!」「まだいる!」「カメラ!」 と、その後5分ほど 興奮は続いたのだが、そのとき僕はある事を思い出していた。

 松本氏は、先日までいたマルタ島でりんごチップス(シナモン味)を 発見して一躍チップス・リーダーに踊り出ていた。 彼はここロンドンでも その使命を果たそうと、店に入っては 珍しいチップスを捜し求めていた。 そして、きのう入ったお菓子屋で、インベーダー・チップスなるもの を買っていたのだった。
 袋には小躍りするグレイの絵がかかれており、ひしゃげた涙型の チップスにはそれぞれ3つの穴が開いている。つまり、宇宙人の 顔になっているのだ。

そして、その味のすっぱいこと!



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