インカレ・リバイバル

第15回 第13回(岐阜)インカレ(2)                 

西連寺 弓子(DE・日本女子大学第1走者)

みんなの前で学生注目をやって、またしても「私は絶好調である!」なんて言ってしまった。あーどうしよう。

スタート位置にいた10分は長く辛い時間だった。まさに緊張の極限に達するとは、ああいうことをいうのだろうなと思った。今年はさすがに失敗しないと自分に言い聞かせていた。でも、次の瞬間、またつぼったら…との考えが浮かんできて、怖くて仕方がなくなる。最初のうちは余裕の笑顔で、隣にいた北大の岡本さんに頑張ろうね、なんて言っていたのに、次第に顔がこわばる自分に気付く。沢山の声援に埋もれてしまいそうな中で、涙が出てくる。ああ、最後なんだな。本当にちゃんと帰ってこれるのかな。帰ってこれなかったらみんなに会わす顔がない…、あーどうしよう。

もうスタートまであと2、3分となったとき、「さいれん!さいれん!」と呼ぶ声がきこえた。誰?どこにいるの?あまりの緊張のためか、なかなか探せない。誰だろう?そしてやっとそれは、たがちゃんだとわかった。。たがちゃんと宮川(祐)さんがすぐ近くまで来て、手を振っている。何故だかわからないけど、それで緊張やら涙やらがどこかに消えていった。

地図をもらってスタート。天野さんの「最後尾で行け」という言葉を思い出し、ゆっくり走る。その間考えていたことは、みんなに手を振ろうかどうしようかということだった。みんなの前に来たら、やっぱり手を振ってしまった。ま、振ったほうが私らしいからいいや。そしたら、誰かに「地図を見ろ」と言われ、ああそうだったと気がついた。

こうして団体戦のレースが始まった。

ゆっくり走りながら、筑波をマークする。1番ポストは違っていた。とりあえず私はいちばん最後にチェックする。あー、やっぱり体力がないやー。金並さんが私の前を走っている。結構いい線行くんじゃないかな、などと考える。2番の近くまで来ると、筑波をはじめ5、6人が前にいる。多分、それより前に行った人はいないだろうと思う。

2→3はロングレッグだった。ここは、みんなと同じ方向に行こうと決める。横国や昨日速かった京女の人もいた。ちょっとした登りや倒木で、筑波に遅れをとった。見えなくなる。でも、3番ポストが見えると、違う方向から来る熊林さんがいる。行き過ぎたのかしら、もしかしたらあまり調子が良くないのでは?と期待する。

3→4はみんな揃っていく。4番ポストは有人だった。みんな私がトップ集団にいるのがわかって喜んでくれているかなあ、と考える。

4→5は地図読みがおろそかになって、一瞬危なかったけどみんなについていってチェック。

5→6がポイントだった。私はピークにある小凹地で静大や広大の人と一緒だった。横国も筑波も違うようだ。そして途中で、立ち止まって正置する熊林さんの姿を見る。もしかして、つぼっているのかもしれない!Lucky!私は難なく6番をチェック。いつの間にか、京女はいなくなったけど、先に行かれても平気だった。前には、静大と広大がいるだけである。横国もきっとつぼっているに違いない。筑波と横国より早く帰れたら満点だ。やっぱり、私は絶好調だな、と思う。

6→7で、多少疲れてしまい、前の二人に追いつけない。でも、静大は3走が2年生だから負けないし、広大は誰も知らないや、と思ったらもう私には優勝しかないと思えてきた。(なんてずうずうしい。)途中、一般クラスの人達に会い応援されて、とても嬉しかった。本当に優勝しちゃうかもしれないと思ってドキドキしていた。7番は遠くから見えるポストだったので迷わずチェック。

7→8でちょっと行くと広大の人に追いついた。だけど広大の人と違うほうに行ってみた。やっぱり同じ方に行けばよかったかなぁと思いながら走っていると宅間君の姿を遠くに発見する。まわりに男子エリートの姿が見えないからきっと一番だろうと思う。頑張れーと応援する。そして8番をチェック。ここには役員の人がたくさんいた。

車道に出るとゴールが見えた。あんなに遠いのー?ちょっとショックを受けた。そして、静大と広大の人が走っている姿を確認。このくらいの遅れは許容範囲よね、と思う。ゴールに向かって走る。とてもいい気分。1走合格だな、なんて思いながら、悠長に長い道走りをした。

私が来たことをみんなわかったみたいで声が聞こえる。と言っても、他の人に向けられる声も自分への応援のような気がしたけど…。

一般ゴールに行きかけたりしながら、こんちゃんの待つゴールへ笑って走ることができた。こんちゃんも笑っている。みんな笑っている。あー、幸せだなぁと感じる。そしてタッチ。ゴールの横には香織さんが待っていてくれた。ほっとしたら涙が出てきた。本当に良いレースができた。良かった。みんなと顔が会わせられる。あー良かった。

あとは、こんちゃんとたがちゃんが良いレースができることだけを祈った。私は嬉しくて嬉しくて、じっとしていられなかった。

たがちゃんを待つ間もじっとしていられなかったのでうろうろしていたら、更衣室の前で山に向かって目を閉じて、手を組んでお祈りしている筑波の二人と宮川(祐)さんの姿があった。石田さんが出てから、ずーっとそうしているのだろうか。この祈りが石田さんに届いてあんなに速く帰ってきたのだろうか。やっぱり筑波には勝てなかったな…そう思った。

今回のインカレは今までになく思い入れが強かった。「最後」という言葉。何でも最後だと思うことにより、今までにないくらい真剣になった。特に団体戦に関しては、自分のため、そしてみんなのために頑張ろうと思っていた。緊張のために胃が痛くなることも経験した。

日本女子大学は結果として3位になった。去年は2位だったから、順位だけを見れば一つ下がったことになる。しかし、内容からすれば、あっけなく筑波の優勝が決まってしまった去年よりも今年のほうが良かったのではないかと思う。(自分が去年良くなかったこともあるけど…。)だけど、優勝するということは簡単にはできないことなんだなぁと実感した。これからのみんな、ぜひ頑張ってね。

最後に…。インカレはどうしてもエリート中心になってしまい私はいつも申し訳ないなと思っていた。今年もそう思っていたけど、今年は自分がエリートで良かったと思った。みんなに応援してもらって、3位になることができて本当に嬉しかった。みんな、本当にどうもありがとう。本当にいいインカレだった。

みんなにとってもいい思い出になっていますように…         (わせだUNIV.OCレポート1991年度vol.3)


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