インカレ・リバイバル

第6回 第9回(愛知)インカレ(2)

篠崎 東雄(HE・早稲田大学第2走者)

不安はいっぱいあった。学連リレーat「館」での一走の失敗。またもやリレーで失敗してしまった…。この3年間リレーでまともに走れたことがなかった。パックで走るのが下手なのか。精神的に気負い過ぎなのか。技術的に下手で短いレースで必ずつぼってしまうのか。俺はどちらかというとWinning Timeの長いSurvivalレースが得意だった。少しずつはつぼるがミスを最小限に抑え、後半 Toughな体力を使って追い上げるパターン。中央大大会や日本海大会みたいな…。でもそれって安定した技術型の人のパターンじゃない?おまえ、技術あんのかよ?じゃあ、スピードレースは?冬のOC杯みたいなやつ。俺ってスピード型のオリエンティアかよ??なんでリレーになると駄目なんだよ??…。自分のOLに関していろいろ疑心暗鬼になっていた。

僕の情けないところを白戸さんが言葉でえぐってくる。学連リレーのあとの千葉大とのコンパで「おめー、もうリレー止めな!走んねー方がいいよ!。」しかし、ある時は「おめー、最近安定してきたじゃん!」白戸さんなりに俺に気を使ってくれ、アメとムチの二つの言葉で俺を奮い立たせてくれた。

春合宿になるともう、たまらなかった。俺はエリート走れるかなあ。走れてもみんなの足引っぱらねえかな?もう、そればっかりである。すずらん荘では自分のことばっかり考え、また駒ヶ根の雪景色を見て「かっちょいー!」とはしゃいでばかりいた。あんまり渉外部長としての心配をしていなかったと思うし、発言もとげとげしかったんじゃないかと思う。スマン。どこからかの噂、個人戦で僕と飯山で調子の良かった方を使うという。そうだろうなあとも思った。

個人戦。2時間8分。俺のタイム。飯山が1時間58分。そうか、そうだろうなと思った。そしてあとは素直にレースの行方がどうなるかを楽しんだ。

個人戦会場でのミーティング。倫也さんに聞かれ、ちょっとばかし大きいことを言った。すると俺が2走になった。アレッ?と少しだけ思った。でもそのための心の準備と体の調整はしたはずだ。しかし徐々に焦ってくる。う〜む、まじか?みんなに頑張れと言われる。西村さんにも言われる。OBにも山ちゃんにも言われる。う〜む、まじだ。

第2選手村では思ったほど精神的プレッシャーはなかった。酒が飲めないのと異常に寒いのだけが参った。疲れは不思議となかった。

団体戦の日。みんなから加代ちゃんマーク入りの寄せ書きTシャツをもらう。こういうノリは好きなので、えらく感激した。

「なんか主役だなあ、まるっきり。いいなあー。」

と僕が言うと、

「そうよ、主役なんだからねっ!」

と吉松さんに言われた。やっぱり感激してしまった。

応援合戦が始まるともう、じっとしていられなくてUpをして走り回っていた。

小野さんのスタートを横目でちらっと見た。心臓に悪いので応援歌も歌わなかった。「フレー、フレー、はるお」と言われても無視していた。無視してもやっぱりビビリまくっていた。みんなに何か言われて笑っても、おそらく顔が引きつっていただろう。Last Post。小野さんが10位で通過のアナウンスが入る。吉松さんと西村さんだったと思う。

「おまえは大関飯山と横綱白戸を信じて、きちんと自分のレースをすればいいんだぞ!」

待機枠に入る。みんなが歌を歌う。小野さんと−タッチ。第一コーナーを曲がって会場を出る。最後のところに白戸さんがいた。「落ち着けよー。」この言葉を最後に辺りはいきなりシーンとする。自分の足音だけだ。地図を取った瞬間、「おっ!見やすい地図!」と思って嬉しくなって走りだした。この時、足に昨日の疲れがあるのに気付いた。このやろう!と思って1番ポストへ2、3度立ち止まってアタック。農工大がうろうろしている。一丁あがり。2番へ行く途中の分岐で金沢大がいた。2丁あがり。3番ポストをチェックし4番は有人だった。8位かなと思ってチェックする。道走り中に大事なレッグだと思っていた5→6を確実なOLを心がけて何とかミスをせずに6番チェック。ここで、なかなかさすがにトップグループとは会えないなと思ってスピードを上げようとしたが、すぐにマイペースの言葉を思い返す。6→7と慎重な慎重なOLをする。7番のチェック後、東北大(吉田佳一郎)と神戸大が前にいる。8番をほぼ同時にチェックしたら佳一郎がいきなり変な方向に走りだした。(ラストポストをテープ誘導のほうからアタックしようとしたのだ。)ちょっとつられたが、思いなおして正しいほうへ走りだす。後ろを向くと神戸大がいた。「おめーもあっち行け!」と思ったが仕方ないから一緒にラストポストへ行く。ラストポストからはもう無我夢中である。みんなの前をまず通って再び林へ一瞬静かになって少し辛い。折り返すと再びスピードが出る。走る。階段を降りる。走る。

飯山にタッチしたあと、吉松さんが毛布を持って待っていてくれた。

「やったね、よくやったよ、はるお…」

と言われて毛布を掛けてくれた。ぐっと来た。みんなからも言われた。そのたびにぐっと来ていた。本当に嬉しかったのだ。

結果は5位。残念な結果だった。これについてはいろんな評価があるだろう。ぼくの2走についてもいろんな見方があると思う。僕のレースはつぼらなかったが、林のなかのスピードのないレースだった。そして今までで唯一まともなリレーであったことは確かだった。

今思い出してこの文章を書いていても体が熱くなってくる。応援してくれたみんなへの感謝の気持ちで一杯だ。昔、宮川さんも書いていたけれどOLの新しい面白さを体験することができたと思っている。ラストポストからのあの声援。ほんとに至福の時だったのだ。

今回でクセになったので、あの瞬間を今度もまた味わいたいと思っている。そして優勝というもっと大きな喜びを夢想してしまう。最高の瞬間を手に入れるためのまた新しい1年が始まる。

−最高の瞬間−touch of glory−   

(わせだUNIV.OCレポート1986年度vol.17) ※次回は第10回(群馬)インカレ第4走者、前野直樹氏です。


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