訴状

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 なお、被告の個人名は伏せ字としました。 また、訴状に添付された資料は今のところ公開できません。 数字等の表記は読みやすさを考えて適宜、アラビア数字で置き換えました。



       請求の趣旨

一、
被告らは、被告ニフティ株式会社の主宰する商用ネットワ−ク・NIFTY-Serveの現代思想フォーラムの電子会議室に書込まれている別紙目録一記載の発言を削除せよ。
二、
被告らは、原告のために、被告ニフティ株式会社の主宰する商用ネットワ−ク・NIFTY-Serveにおいて、別紙目録二記載の謝罪広告を同別紙記載の掲載条件で掲載せよ。
三、
被告らは、原告に対し、連帯して金200万円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払済までに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
四、
訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決及び第三項につき仮執行宣言を求める。



       請求の原因

一、
被告ニフティ株式会社は、商用ネットワ−ク・NIFTY-Serve(以下「ニフティサ−ブ」という)の主宰者であり、被告××××は、ニフティサ−ブの現代思想フォーラム(以下「FSHISO」という)のシステム・オペレ−タ−(以下「シスオペ」という)である。シスオペとは、被告ニフティ株式会社から依頼されて、ニフティサ−ブ中の特定のフォーラムの運用を依託されている者のことである。ニフティサ−ブのフォーラムには、会員が自由に文章を書込むことが可能で、そこにアクセスすれば誰でも書かれた文章を読むことができる電子会議と呼ばれる機能があり、テ−マ別に複数の電子会議室が設置されている。
二、
原告は昭和63年3月頃にニフティサ−ブに加入して以来、ネットワ−クの可能性を信じ、積極的にその普及のために活動し、またニフティサ−ブの複数のフォーラムに参加してきた。
 原告はニフティサ−ブ上ではCookieと名乗っていたが、原告は会員情報を公開しており、またプロフィールにも人物を特定できる真実の内容を記載していたため、ニフティサ−ブの照会機能を用いればCookieが原告であると知ることは可能である。事実、Cookieが原告であることは広く知られていた。
三、
被告○○○○は、平成5年11月頃よりLEE THE SHOGUNとの名称で、FSHISOの複数の電子会議室に原告の名誉を毀損する文章を書込んだ。被告○○○○のIDはVFC03154である。なお、電子会議室の文章は掲載者のIDが自動的に付与され、ニフティサ−ブのIDは本人以外は使用できないため、ID番号VFC03154の使用者が名誉毀損にあたる発言をしたことになる。
 平成5年12月、原告は友人からの知らせによって、FSHISOの7番会議室「FSHISO・WHY・HOW・WHAT」の発言番号#343、#362、#391、#435、#438、#484に原告の名誉を毀損する内容が含まれているのを知り、被告ニフティ株式会社のセンタ−宛てに電子メール等で当該発言の削除を求めたが、原告の要求は受け容れられず、その後もLEE THE SHOGUNによる原告の名誉を毀損する発言は続いた。
 同じ頃、生涯学習フォーラムの電子会議室においても、原告の名誉を毀損する内容を含む発言が数度にわたって書込まれたが、こちらは同フォーラムのシスオペが誹謗中傷と判断してすべて削除した。削除された発言はやはり被告○○○○のIDであるVFC03154によるものであった。
 なお、前記六発言以外にも今日に至るまで削除されていないものとして、別紙目録一記載の発言がある。いずれも発言者のIDはVFC03154であり、発言者の名称はLEE THE SHOGUNまたは気がちいさい李である。
四、
平成6年2月14日、原告はやむなく被告ニフティ株式会社及びFSHISOのシスオペである被告××××に対し、名誉毀損に該当する発言を削除すること、LEE THE SHOGUNの氏名、住所を開示すること等を要求書を送付した。
 右、被告らは、原告が先に削除を要求したLEE THE SHOGUNの発言を削除したものの、それ以外の同一IDによる原告の名誉を毀損する発言は放置した。また、被告ニフティ株式会社は原告の要求にもかかわらず、電気通信事業法第104条を根拠に、ID番号VFC03154の使用者の氏名、住所の開示を拒否した。なお、ID番号VFC03154を使用しているLEE THE SHOGUNまたは気が小さい李とは、実は被告○○○○のことであったが、同被告はニフティサ−ブにおける会員情報を非公開としており、匿名の状態で発言していたため、原告は被告○○○○の住所、氏名の調査に多大な時間と労力を費やした。また、被告ニフティ株式会社が、LEE THE SHOGUNの住所、氏名の開示を拒否したため、原告は被告○○○○に対し警告書すら送付できず、被告○○○○による原告の名誉毀損発言は本訴提起直前まで行われ、結果的に被告○○○○による原告の被害は拡大した。
五、
パソコン通信が参加者の自由な討論の場を提供することによりこれまで発展してきた経過に鑑みれば、発言者の表現の自由を尊重することは重要であり、ネットワ−クの主宰者がシスオペに過度の介入をすることは、あまり望ましいことではない。
 しかし、他方、ネットワ−クの会員が数十万人にもなると、ネットワ−クはプライベ−トな討論の場から、不特定多数の人々が参加できる公の討論の場へと変貌してきていることも事実である。もはや、ネットワ−クは新聞、雑誌に代る第三のメディアになってきていると言わざるをえず、ネットワ−クにもル−ルやマナ−が確立されることが望まれる。少なくとも他人の名誉を毀損する発言がネットワ−クにおいて許される理由は一切存しないはずである。
 したがって、新聞、雑誌等が他人の名誉を毀損する発言を掲載すれば、執筆者及びメディア自体が名誉毀損の非を問われると同様に、ネットワ−クにおいてもフォーラムに他人の名誉を毀損する発言を書込んだ者のみならず、その発言を削除せず放置したシスオペ及びネットワ−ク主宰者自身も名誉毀損の責任を負うべきである。
 すなわち、ニフティサ−ブを主宰する被告ニフティ株式会社には、ネットワ−クの管理責任の一内容として、他人の名誉を毀損する発言を許してはならない、という一般的義務があると解される。そこでこの義務に反すれば、被告ニフティ株式会社、シスオペ及び発言者の三者が他人の名誉を毀損したことになり、民法上の共同不法行為が成立すると解される。
 特にニフティ株式会社は原告の要求にも関わらず被告○○○○の氏名、住所を開示せず、そのことが原因で原告の損害が拡大したのであるから、被告ニフティ株式会社の責任は重大である。
六、
もちろん、多数の会議室に自由に書込まれる発言のすべてをチェックすることは、被告ニフティ株式会社には、不可能であり、ネットワ−クは通常のメディアと異なる、との反論もあり得る。
 しかし、被告××××のようなシスオペが被告ニフティ株式会社の依託を受けて各フォーラムを管理している以上、シスオペによる名誉毀損る発言のチェックは充分可能である。
七、
なお、原告はネットワ−クの将来性に期待していただけに、不特定多数の会員の読むことの出来る電子会議室上で、議論の正当な範囲を飛び越えて、事実誤認に基づき原告に関する虚偽の事実を公表したり、原告を犯罪者扱いしたりする被告○○○○の名誉毀損発言により、原告は精神的に多大な損害を被った。
 加えて原告が名誉毀損発言の削除を要求した後にも、被告××××及び被告ニフティ株式会社は被告○○○○による原告の名誉毀損発言を放置しており、被告○○○○の名誉毀損発言により原告が多大な精神的損害を被っていることを配慮しなかった。
 以上の経緯で原告が被った精神的損害は、少なくとも金200万円を下ることはない。
八、
以上により、原告としては、あまりに悪質な名誉毀損発言に耐えかねて、法的な対応を求めることを決意し、被告らに請求の趣旨記載の行為を求めて本訴を提起 して次第である。

 なお、右一連の名誉毀損は、ネットワ−ク上で行われたものであり、名誉毀損発言はすべてネットワ−ク主宰者のホストコンピューターに記録、蓄積されている。したがって不法行為地は、被告ニフティ株式会社の本社所在地である。


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