紫微斗数における時差計算

紫微斗数を始めとして占術で使用する時刻は地方時(local time)です。地方時を知るためには地方標準時(local standard time)との間の時差を知る必要があります。例えば日本における地方標準時である日本標準時(Japan Standard Time: JST)は、東経135°の子午線上の地方時として定められていて、東京(東経139°45’)は+19分の時差を持っています。

東京(東経139°45’)の時差+19分がどのように計算されるかを説明します。地球の全周は360°で24時間かかって1周します。従って経度が1度異なると、

24×604
360

上式から4分の時差が発生します。地球の回転方向から東になるとプラス、西になるとマイナスの値となります。東京は東経135°よりも東になるのでプラスの時差で以下のような計算となります。

[{139+(45/60)}-135]×4=19(分)

この計算によって東京の地方時は日本標準時に19分を加えたものとなります。

ここで時刻としては真太陽時を使用するべきであり、均時差の補正を行う必要があるのではないか?という疑問のある方もいらっしゃるかもしれませんが、紫微斗数における命宮の出し方が実在天体を使用する七星四餘における命宮の出し方の元にしていることは明らかです。従って紫微斗数も七星四餘と同じく時刻のシステムは恒星時がベースにあると考えられます。真太陽時は恒星時とは対応しておらず、平均太陽時こそが恒星時と対応しているので、少なくとも紫微斗数において、均時差の補正を行うことは誤りと考えてよいでしょう。

さて日本国内の時差計算については上記のような計算をすればよいわけですが、国外における時差計算をしようとすると、その場所での地方標準時がどこを基準としているかを調べる必要がありますし、国や時代、時期によっては夏時間を使用したりということがあるので地方標準時がどのようになっているのかを調べなくてはいけません。

地方標準時を調べるときに非常に便利なサイトがあり、以下ではそのサイトを利用方法と時差計算のやり方を説明して行きます。

そのサイトはAstrodienst - Atlas Queryです。リンクをクリックしてみて下さい。下の図1のような都市名を入力して検索する画面となります。

図1. 都市名入力画面.

都市名は英語表記(日本の場合はヘボン式のローマ字表記)で行います。ためしに“los angels”と入れてみると図2のような“Los Angels”という名前の都市一覧が出てきます。

図2. Los Angels一覧.

ここで一番ポピュラーなカリフォルニアの“Los Angeles, CA (US): 34n03, 118w15, California”を選んでリンクをクリックすると図3のような世界地図が出てきます。

図3. Los Angelsの位置と地方標準時.

“Los Angeles”は北緯34°3’、西経118°15’に位置していて、マンガの吹き出しのような中に“h7w”もしくは“h8w”と出てきます。この“h7w”もしくは“h8w”は“Los Angeles”が所属している地方標準時が世界標準時から西に(つまりマイナスに)7もしくは8時間ずれているということを表しています。ずれる時間が2種類あるのは“Los Angeles”が夏時間を採用しているのを補正するためです。図3は夏時間の場合となっています。紫微斗数で出生時刻を計算する場合は、世界地図の上にある出生時入力欄に出生日時を入力して“continue”のボタンをクリックしてみて下さい。正しい地方標準時のズレを得ることができます。

ここで夏時間採用期間における“Los Angeles”の地方標準時との時差(夏時間補正済)を求める計算式は以下のようになります。

-{118+(15/60)}×4 - 60×(-7) = -473 + 420 = -53(分)

従って“Los Angeles”の時計で示された出生時刻から53分を引けば地方時における出生時刻を得ることができます。このように“Astrodienst - Atlas Query”は夏時間の補正まで行ってくれる非常に便利なサイトです。

“Los Angeles”を例に西半球での計算例を示してきましたが、次に東半球の例を示します。都市名入力画面で“beijing”(北京)を入力すると図4のように“Beijing”の一覧が出てきます。

図4. Beijing(北京)一覧.

北京は1つしかないのでそれを選んでクリックすると図5の世界地図が出てきます。

図5. Beijing(北京)の位置と地方標準時.

北京の位置は北緯39°55’、東経116°25’で地方標準時の世界標準時とのズレは“h8e”で示されるプラスに8時間です。北京における地方時との時差は以下の計算となります。

{116+(25/60)}×4 - 60×8 = 465分40秒 - 480分 = -14分20秒

従って北京の時計で示された出生時刻から14分20秒を引けば北京の地方時における出生時刻を得ることができます。