悲運のディードーよ、では、あの知らせは本当だったのか、 そなたが剣で命を絶ち、最期を遂げたと言ってきたのは。 ああ、そなたの死の因はわたしだったのか、星にかけて誓う、 天上の神々と、もし地の底に信義があるなら、それにも誓う。 女王よ、そなたの岸から去ったのは本意ではなかった。 神々の命令だったのだ。それがいまも、これら亡霊のあいだを行け、 わびしく捨て置かれた場所と底深き夜を抜けよ、と強いている。 この命令に駆り立てられたのだ。それに、思いもよらなかった。 わたしの出発がそなたの心にこれほどにも大きな痛みをもたらすとは。 歩みを止めてくれ。離れずにいて、そなたの姿を見せてくれ。 誰から逃げるのだ。そなたと話すのもこれが最後だ。それが運命なのだ。
プブリウス・ウェルギリウス・マロ『アエネーイス』第六歌 岡道男・高橋宏幸(訳) 西洋古典叢書 京都大学学術出版会 2001年
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