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 彼は人間が生まれながらにして善であることを知らなければならない。それを感じなければならない。自分の隣人を自分自身によって判断しなければならない。しかし、同時に、どのようにして社会が人間を堕落させ、邪悪にするかを見させるのだ。……

 この方法には、正直に言って、不都合な点がいろいろあり、実行は容易でない。もし青年があまりに早くから傍観者になるならば、もしあなた方が、彼をあまりに仔細に他人の行為を探るように訓練するならば、あなた方は、彼を悪口好きで皮肉な人間に、断定的で軽率に人を判断する人間にしてしまうであろうから。彼は何ごとにも悪意のこもった解釈を求め、よいものについてさえ、何も善意には解さないことに、いとうべき喜びを感ずるであろうから。

 J.J.ルソー『エミール』第四編

 戸部松実(訳)


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