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いずれにせよ筆者は、以上のような点で『YU-NO』は、現世編のシステムではデータベース消費の二層構造を、現世編のドラマでは多重人格的な生き方を、そして異世界編のドラマでは物語消費の幻想の限界を描いた、きわめて周到な作品だと考えている。「ポストモダン」や「オタク系文化」というと、社会的な現実から切り離され、虚構のなかに自閉したシミュラークルの戯れを想像する読者も多いかもしれないが、そこにもやはりこのような作品があるのだ。このようなすぐれた作品について、ハイカルチャーだサブカルチャーだ、学問だオタクだ、大人向けだ子供向けだ、芸術だエンターテインメントだといった区別なしに、自由に分析し、自由に批評できるような時代を作るために、本書は書かれている。これ以降の展開は、読者ひとりひとりの手に委ねたい。

東浩紀『動物化するポストモダン』


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