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和歌山私鉄紀行

有田鉄道

 

 

都市迷彩野郎


 

 既報にてご存じの方も多いでしょうが、五月二六日付で南海和歌山港線の水軒駅が廃止されました。それに合わせて「さよならイベント」なるものが催されましたので行ってまいりました。で、せっかく和歌山まで足をのばすならば物のついでということで、和歌山県内にある私鉄、有田鉄道と紀州鉄道を訪ね歩いてきました。まずは有田鉄道のレポートをお送りします。

 

 いざ紀州路へ

 

 せっかく平日に休みを取ったので、平日しか乗れない「びわこライナー」で旅は始まります。どうせ乗るなら始発駅から、というわけで米原駅から乗車。そもそも一日二往復しかなく、しかも午前中のみという有田鉄道のダイヤに間に合わせるためにはこの列車が最適だったというのが最大の理由ではあります。この列車は運用上は全席指定の快速列車のようなものですが、車両は特急型485系が用いられています。いちいち外すのが面倒なのか、サボ受けには堂々と「特急」のサボが掲げられております。通勤ライナー数々あれど、乗り得感の高さではこれが筆頭でしょう。

 和歌山までは東海道本線‐大阪環状線‐阪和線‐紀勢本線と乗り継ぎますが、乗換時間が軒並み三分から五分と、あまり余裕がありません。大阪・天王寺とバタバタ乗り換えていきます。天王寺からは紀州路快速であります。223系0番台は乗り心地は快適なのですが、シート配置が2+1というのが痛し痒し。せめて和歌山行きだけでも四列シートにしていただきたいものですが、どれに乗ってもロングシートばかりのJR東日本に辟易されている向きには贅沢な物言いと受け止められるでしょうか。

 和歌山からは113系に乗り換え。MT54が唸りをあげて紀州路を走り抜けます。最近はVVVFの金切り声にすっかり耳が慣れていただけに、久しぶりに聴く「電車のモーター音」は新鮮でもあり、懐かしくもあり。

 

 有田鉄道概要

 

 藤並で途中下車。ここから有田鉄道に乗り換えます。乗り換え待ち時間が二分と、あまり余裕がないのでどうなることかと心配していたのですが、新宮行き方面からの乗り換えは同じホームの向かい側なので十分余裕がありました。発車前のレールバスを撮影して乗り込んだら、すぐに発車。ひょっとして私が乗るのを待っていてくれたのでしょうか? 迷惑を掛けてしまったかなぁと少々反省。車内には明らかに鉄分の濃そうな人々が五〜六人。わざわざ平日に休みを取って乗りに来るとは、皆様お暇なようで・・・人のことは言えませんね。

 

 さて、乗り込みました車両は昭和五九年製造の富士重工製ハイモ180型レールバスであります。車内には車単部にロングシート、中央部分に固定式クロスシートが並んでいますが、左右のシートはそれぞれ逆方向に配置されており、進行方向に向かって右側のシートに座ると進行方向と同じ向きに座ることが出来る様になっています。車両両端に運転席と運賃箱が設置されています。運賃の支払い方法はバスそのものです。

 

 レールバスに揺られて

 

 レールバスは藤並を出発してしばらくは紀勢本線と並行して進み、すぐに右にカーブして蜜柑畑の中へと分け入っていきます。最初の停車駅「田殿口」でお婆さんが一人乗り込んでこられた以外には、途中の駅で乗降する人もなく点の金屋口駅までガタゴトと揺られていきます。この揺れ方が物凄いです。普通に道路を走るバスでもここまでは揺れないだろうと思えるもので、これは是非体感していただきたく。この揺れに加えて、車両の両脇には蜜柑の木や民家の軒先が迫っているため、なかなかにスリリングです。そういえば、「御霊」駅の近辺で、沿線に生えている蜜柑の枝が車体に当たったような音がしました。こんな体験も滅多に出来ないでしょう。

 

 金屋口駅

 

 一〇分少々の乗車もあっという間に終わり、終点の金屋口駅に到着です。駅の軌道終端部分には有田鉄道の沿革を記した看板が掲げられており、足元にはおそらく廃車解体されたキハ58のものと思われる動輪が二組並んでいました。沿革を読んでみますと、昔は国鉄藤並‐湯浅を経由して湯浅海岸まで鉄路が通じていたそうで、終戦前年の昭和一九年に営業休止したと記されております。今度来たときは廃線跡を訪ねてみたいものです。駅では折り返しの藤並行きの便を待つ地元の老人が、私と一緒に同乗してきた鉄道ファンとおぼしき人と色々話をされておりまして、昔は結構な利用客があったと懐かしそうに話しておられました。

 

 いつまで続くか

 

 当初の予定では藤並駅までの折り返しはバスで行こうと思っていたのですが、せっかくの機会なのでレールバスで藤並まで戻ることにしました。乗車待ちの合間に「藤並‐金屋口」間の硬券切符を買いました。もはや記念品扱いで、ここ近年は切符として使われた実績はほとんど無いと思われます。さて、この有田鉄道ですが、去年一一月の時刻改訂で鉄道便は一日二往復と、大幅に減便されてしまいました。先にも書いたとおり、列車の運行は午前中でお終い。金屋口を11:35に出発し、折り返し藤並駅を12:00に出発する便です。

 

 そもそも、この調子だといつ廃止になるか分からないから乗れるうちに乗っておこうというのが今回の旅のきっかけでもあったわけですが、この原稿が日の目を見る頃には廃止届けが出されているかも知れません。乗るのも撮るのもお早めに、と申し上げておきましょう。

 

2002/06

 


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