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 中庸の徳とはおもしろみのない教えである。そして私はいまでも覚えているが、私が若かったころ、私はこの徳を軽蔑と憤激をもって、拒否したものであった。つまり、青春のころ、私が賛美したのは英雄的な極端であったからだ。けれども、真理というものはいつでもおもしろくないものだ。ところが、多くの事柄は、事実上、それが有益なものである大した証拠がないにもかかわらず、おもしろいものであるからという理由で、信じられている。中庸の徳もまた一つの適例である。それはたしかに一つのおもしろくない教義であるだろう、しかし、それは実に多くの場合においてひとつの真実の訓えである。


バートランド・ラッセル『幸福論』




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