原口博士のテンペル−タットル彗星(55P/1997E1,Tempel-Tuttle)観測
2月8日19:50~20:10
観測場所:埼玉県深谷市東方
 2月7日夜から8日朝にかけて気圧の谷が通過し、久しぶりに雨が降った。雨は 明け方には上がったが、雲が抜け切らず、一部の地域では午後になってにわか雨が降 った。しかし、夕方になって急速に雲が切れるとともに北西の季節風が吹き始めた。
 彗星の観測は自宅裏で行った。上弦の月の影響を受けたが最微等級は4.5等ほ どを確保した。透明度は良かったが季節風のためにシーイングはあまり良くなかった 。
 彗星はペガサス座からうお座に移動していた。全光度は8等でコマ直径は7分、 中央集光のある拡散状だった。月光の影響もあるかもしれないが1月末の観測よりも 明らかに暗くなっていた。また、コマ直径も小さくなっており、これは地球から急速 に遠ざかりつつあることと月光の影響の両方だろう。尾は確認できなかった。

1月29日21:42~21:52
観測場所:埼玉県深谷市東方
 冬型の気圧配置が続いており、相変わらず寒い、東京でも上越線からやってく る貨物列車が雪まみれになっているのを見た。ただ、風は前日に比べて弱くなってい る。最微等級は5等、シーイング、透明度はともに良いが、昨日よりは透明度が落ち る気がする。
 彗星が南下しつつあるため、西に障害物がある自宅のベランダからは観測でき ず、自宅裏に出かけた。4月から5月に夕方の空のヘール−ボップ彗星(C/1995O1,Hale -Bopp)を観測したポイントである。
 彗星は南に移動し、アンドロメダ座β星の西約3度の位置にあった。見え方は 前日とさほど変わらず、光度は7等から7.5等、コマ直径は10分の中央集光のある拡散 状である。核光度は9等、コマは大きく広がった印象である。また、コマは北東に大 きく広がっていた。尾は確認できていない。

1月28日22:18~22:26
観測場所:埼玉県深谷市東方
 故郷復帰後最初の彗星観測である。観測場所は自宅である。
 本州の南を低気圧が通過したが、陸地への影響はほとんどなく、北日本は相変 わらず冬型の気圧配置が続いている。北関東も北星の季節風が吹き、空は澄んでいる 。最微等級は5等程度、シーイング、透明度はともに良好である。ただ、彗星が北星 の空に見えているので冷たい季節風がまともに吹き付け、南洋に慣れた身としては寒 さが応える。観測はSpector LO-MAX6cm屈折望遠鏡とKenko Artos 10x40双眼鏡を使用した。
 彗星はアンドロメダ座β星の北東約5度の位置に移動していた。全光度は7〜7. 5等、中央集光のある拡散状で核光度は9等だった。コマ直径は10分ほどで、望遠鏡観 測では大きく広がった印象である。コマは北東に大きく広がっているようだが、顕著 な尾は確認できない。ジェットの発達ははないようだ。

 1月8日から26日までの観測は海洋科学技術センター(JAMSTEC)の研究船「かいれい 」によるマリアナ諸島近海からフィリピン東方海上の航海(KR98-01航海)の間の観 測である。使用器材はFriend Binoculars Super Star12x50双眼鏡である。

1月26日20:46~21:05
観測場所:三浦半島近海
    (北緯35度06.57分、東経139度45.55分)
 翌日にJAMSTECへの入港を控え、陸地にかなり接近している。陸地の光がわか り、低空は影響を受けているようだ。最微等級も6等程度でこれまでよりは良くない 。
 彗星はアンドロメダ座ω星の南約2度の位置に移動していた。彗星の全光度は7 .5等でコマ直径は7分、中央集光のある拡散状である。前日よりも明らかに見え方が 衰えた。尾はあまり伸びていないようである。

1月25日20:20~20:32
観測場所:紀伊半島南方海上
    (北緯30度22.23分、東経135度26.39分)
 日本近海まで北上した。冬型の気圧配置が弱まりつつあり、風も弱くなって波 も収まりつつある。南方とは違って風が冷たい。空の状態は良く、最微等級は6.5等 、低緯度よりも星の輝きが鋭い気がする。
 彗星はアンドロメダ座に移動し、アンドロメダ座ω星の北約2度の位置にあっ た。全光度は7等でコマ直径は15分、中央集光のある拡散状である。核光度は9等、コ マは北東に大きく広がっており、そこから細い尾が伸びているようだ。

1月23日20:56~21:09
観測場所:大東諸島南方海上
    (北緯21度22.67分、東経130度52.22分)
 南方での調査が終わり、帰途につくことになった。この日が南方での最後の観 測になる。
 彗星はさらに南下し、カシオペア座δ星の南約5度の位置にあった。全光度は7 .5等でコマ直径は8分、中央集光のある拡散状である。核光度は9.5等で北東に細い尾 が伸びているようだ。

1月22日21:10~21:40
観測場所:フィリピン東方海上
    (北緯18度30.02分、東経129度33.84分)
 この日も空の状態は良いが透明度は前日より多少劣る様である。彗星はカシオ ペア座δ星の東約3度の位置に移動していた。散開星団M103の近くである。彗星の全 光度は7.5等でコマ直径は7分、中央集光のある拡散状である。細い尾が北東に伸びて いるようだ。光度はM103よりやや暗いか。

1月21日21:34~21:40
観測場所:フィリピン東方海上
    (北緯18度44.00分、東経126度26.94分)
 この日は快晴で空の状態が良く、最微等級は6.5等、シーイング、透明度はと もに良かった。
 彗星は昨日の位置から南南西に7度ほど移動し、カシオペア座ε星の北約2度の 位置にあった。赤緯+70度線を南に越え、この緯度ではあまり高い位置に上らなくな った。光度は7.5等でコマ直径は10分、中央集光のある拡散状である。東よりに幅の 狭い尾が伸びているようである。

1月20日22:00~22:13
観測場所:フィリピン東方海上
    (北緯18度54.03分、東経129度58.89分)
 この日は雲が多く、視界を雲が流れる中の観測になったが空の状態は良いよう だ。
 彗星はカシオペア座に移動し、カシオペア座ω星の北東約3度の位置にあった 。彗星の全光度は7.5等から8等、コマ直径は8分で核光度は7等から9.5等だった。南 に尾が伸びているようである。前回観測よりも暗く感じた。

1月18日12:21~21:38
観測場所:フィリピン東方海上
    (北緯17度59.45分、東経128度31.74分)
 彗星はさらに西に移動し、こぐま座にあった。この日、彗星は最も北上した様 である。空の状態は良いが昨日よりも少々劣る様である。彗星の全光度は8等、コマ 直径は8分で中央集光のある拡散状、核光度は9等から10等である。この日も彗星の移 動が確認できた。

1月17日21:26~21:45
観測場所:フィリピン東方海上
    (北緯17度51.12分、東経128度30.88分)
 彗星は昨日の観測時から西に7度近く移動し、天の北極から7度程度の位置にあ った。空の状態は相変わらず良くて最微等級は6.5等、シーイング、透明度ともに良 好だった。彗星の全光度は7.5等、コマ直径は10分で中央集光のある拡散状、南にプ ラズマの尾と思われる細い尾が伸びているようだ。これとは別に幅の広い尾がコマか ら広がり、30分ほどの長さがあるようだ。この日は彗星の移動を確認した。

1月16日20:42~20:52
測場所:フィリピン東方海上
    (北緯16度25.47分、東経129度49.65分)
 この日の月齢は18で、夕方の空には月光の影響がなくなった。このため、最微 等級は6.5等が確保できた。
 彗星は赤緯+80度を越え、りゅう座ときりん座との境界付近に移動していた。 彗星の全光度は7等から7.5等と前回観測に比べて大幅に明るくなっていた。コマ直径 は10分で中央集光のある拡散状、核光度は9等である。南に幅の広い尾が伸びている ようである。

1月14日22:37~22:43
観測場所:沖の鳥島南方海上
    (北緯14度27.59分、東経134度329.00分)
 この日の月齢は15.8で、夜は終始月光の影響を受ける。彗星が大きく北上して 夕方も観測が可能になり、ハートレー第2彗星、ヘール−ボップ彗星の観測にも対応 するために夕方の観測に移行することにした。今航海初めての夕方の空での観測であ る。
 月が出ているものの最微等級は5等と前回よりも星がよく見える。彗星はりゅ う座λ星の北約2度の位置に移動しており、赤緯+70度を越えた。彗星の全光度は8等 、コマ直径は8分で拡散状である。

1月12日28:38~28:45
観測場所:マリアナ諸島南西方海上
    (北緯11度23.67分、東経142度11.30分)
 この日の月齢は13で、薄明開始までに月が沈まず、月光下の観測になった。シ ーイング、透明度はともに良好だが、最微等級は4等程度である。双眼鏡でもあまり 星が見えず、月光の影響は歴然としている。
 月光下でも彗星の確認はなんとかできた。彗星はおおぐま座δ星の北約5度の 位置に移動し、赤緯+60度を越えている。全光度は8等から8.5等、コマ直径は3分で拡 散状、それ以上はわからない。観測の限界か。
 今航海最南端での彗星観測である。

1月10日28:40~28:50
観測場所:マリアナ諸島西方海上
    (北緯15度20.55分、東経140度30.46分)
 彗星はおおぐま座δ星の南約3度の位置に移動し、前回の観測から7度ほど北上 していた。全光度は8.5等から9等、前回観測よりも明るくなった気がする。コマ直径 は5分で拡散状、南西にコマが広がっているようだ。
 空の状態は相変わらず良好である。北緯20度を越えたため、北極星の高度が非 常に低い。

1998年1月8日27:40~27:55
観測場所:小笠原諸島南東海上
    (北緯21度53.75分、東経139度21.89分)
 彗星はおおぐま座γ星の南東約8度の位置、系外銀河M106の東約2度の位置にあ った。光度は9.5等、コマ直径は4分でM106と同じくらいだろうか。拡散状でコマ、尾 は確認できなかった。
 空の状態は極めて良く、最微等級は6.5等、シーイング、透明度はともに良か った。ただ、海上で水蒸気が多いためか像のシャープさがいまいちの様に感じる。彗 星の観測後、南十字座を確認、ω星団も双眼鏡で球状星団であることがわかる。


東京大学海洋研究所 大洋底構造地質部門
東京大学大学院 理学系研究科 地質学専攻 D2

原口 悟


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