1998年1月23日21:03~21:09
観測場所:大東諸島南方海上
(北緯21度22.67分、東経130度52.22分)
南方での調査が終わり、帰途につくことになった。この日が最後の観測になる
。
彗星はかじき座β星の南西約1度の位置にあった。全光度は8等でコマ直径は5
分、拡散状で北に10分ほどの短い尾が伸びていた。
1998年1月22日 21:12~21:40
観測場所:フィリピン東方海上
(北緯18度30.02分、東経129度33.84分)
この日も空の状態は良いが透明度は前日より多少劣る様である。彗星の全光度
は8等でコマ直径は5分、拡散状で北に10分ほどの幅の広い尾が伸びている。
1998年1月21日21:22~21:28
観測場所:フィリピン東方海上
(北緯18度44.00分、東経126度26.94分)
この日は快晴で空の状態が良く、最微等級は6.5等、シーイング、透明度はと
もに良かった。
彗星は光度は8等でコマ直径は5分、拡散状である。北に短い尾が伸びていた。
1998年1月20日 22:10~22:17
観測場所:フィリピン東方海上
(北緯18度54.07分、東経129度58.89分)
この日は雲が多く、空を高速で雲が流れていた。ある程度高い位置にあったテ
ンペル−タットル彗星ではそれほど問題にはならなかったが、低空にあるヘール−ボ
ップ彗星の場合、なかなか雲が切れず、雲が切れるのを待つのが非常に辛かった。
彗星はさらに西に移動していた。光度は8等でコマ直径は5分、尾は確認できな
かった。
1998年1月18日21:35~21:40
観測場所:フィリピン東方海上
(北緯17度59.45分、東経128度31.74分)
彗星はかじき座β星の南約1度の位置にあった。空の状態は良いが昨日よりも
少々劣る様である。彗星の全光度は8等、コマ直径は5分で拡散状、北に10分ほどの尾
が伸びている。尾はわからない。
1998年1月17日21:46~21:52
観測場所:フィリピン東方海上
(北緯17度51.12分、東経128度30.88分)
空の状態は相変わらず良くて最微等級は6.5等、シーイング、透明度ともに良
好だった。ただし、彗星がある水平線上10度の位置では大気減光がかなり激しくなる
。水蒸気量が多いため、海上では止むを得ない。彗星の全光度は7.5等から8等、コマ
直径は5分で拡散状、北に幅の広い尾が10分ほど伸びていた。少し北上したからか、
見え方が衰えてきた。
1998年1月16日20:52~21:02
観測場所:フィリピン東方海上
(北緯16度25.47分、東経129度49.65分)
この日の月齢は18で、夕方の空には月光の影響がなくなった。このため、最微
等級は6.5等が確保できた。
彗星は既に地球からも太陽からも4AU離れているので運動量は非常に小さい。
前回の観測からわずかに西に移動した程度である。彗星の全光度は7.5等から8等、コ
マ直径は7分で拡散状、北に幅の広い尾が20分ほど伸びているようである。伸びてい
るようである。
1998年1月14日22:28~22:40
観測場所:沖の鳥島南方海上
(北緯14度27.59分、東経134度329.00分)
この日の月齢は15.8で、夜は終始月光の影響を受ける。一応最微等級は5等だ
が、彗星は水平線上わずか10度の位置にあり、海上では結構大気減光が激しい。この
ため、かなり苦しい観測になった。。
彗星はかじき座δ星の北約1.5度の位置にあった。彗星の全光度は7等から7.5
等、コマ直径は10分で拡散状。北に15分ほどの幅の広い尾が伸びているようである。
以上の観測は自宅からである。使用器材はSpector LO-MAX 6cm望遠鏡+20mmアイピース+天頂プリズムとKonko Artos 10x40双眼鏡である。
1997年10月12日(10月13日早朝)28:32~28:37
今日早朝にはヘール−ボップ彗星(C/1995O1,Hale-Bopp)の観測も行った。
宇都宮彗星の観測から2時間後だが、この間の空の状態の変化はなかった。最
微等級は5.4等である。
彗星はとも座ζ星の南約3度の位置に移動していた。全光度は5等、コマ直径は
15分で、中央集光のある拡散状、尾は確認できなかった。
赤緯で-40度より南下しており、位置的に観測はかなり厳しくなっている。今
後は月光の影響を受け、月光の影響が無くなった時は地平線に近すぎて観測できなく
なっているだろう。
1997年10月8日(10月9日早朝) 28:25~28:38
10月8日は寒冷前線が通過し、その後ろから寒気が入って北日本では平地でも
雪が降った。関東でも急速に晴天が広がるとともに気温が下がり、強い北西の風が吹
いた。このため、深夜の宇都宮彗星(C/1997T1,Utsunomiya)の観測では彗星が北西の
空に見えていたこともあって北西風の影響をまともに受けたが、早朝には風も弱まり
、風の影響は少なくなった。望遠鏡観測では像の揺らぎが気になったが宇都宮彗星の
時ほどではなかった。最微等級は5.4等と目測した。
彗星はとも座ζ星の南東約1度の位置に移動していた。彗星が地平線に近づき
つつあるのを実感する。全光度は5.5等、核光度は7等、中央集光のある拡散状だった
。望遠鏡観測では中央集光は非対称なようで、北側が明るいようだ。コマ直径は10分
、ダストの尾が20分ほど西に伸びていたのを確認した。
1997年10月6日(10月7日早朝) 28:23~28:35
前回10月2日の観測以降日本の南海上に気圧の谷が残って天気が思わしくなか
った。そして天気が回復したのは6日夕方のことだった。
7日早朝、籠原の自宅では晴天が広がっていた。空の状態もよく、おうし座の
流星観測三角から最微等級は5.4等と見積もった。風も弱く、像の揺らぎも少なかっ
た。
彗星は2日の観測と比べて南に5度ほど移動しており、とも座ζ星の東約1度の
位置にあった。明らかに南下しており、観測の限界が近いことを感じた。Kenko
Artos 10x40双眼鏡で存在を確認し、さらにSpector LO-MAX
6cm望遠鏡でも観測を行った。
彗星は全光度5等、核光度7等、中央集光のある拡散状で、前の観測よりも拡散
がひどくなったように感じた。コマ直径は10分、西に尾が広がっているようで、尾の
長さは30分ほどを確認した。
1997年10月1日(10月2日早朝) 28:19~28:24
天気予報では東日本の晴天は今日までということになっていた。それを示すか
のように朝までは快晴だったが、海洋研に到着したときには曇り空が広がっていた。
朝は晴天が広がっていたのでヘール−ボップ彗星(C/1995O1,Hale-Bopp)の観測を行っ
た。
空は昨日までと比べ明らかに透明度が悪くなっていた。最微等級は4.8〜5.0等
と見積もった。低空も状態は良くなく、前日までと比べて星の輝きが衰えていた。そ
んな状態でも何とか彗星の姿は確認できた。
彗星の全光度は5等、核光度は6.5等と見積もった。コマ直径は10分、尾は確認
できなかった。前日との差は彗星が見にくくなった分と考えたほうがいいだろう。
1997年9月30日(10月1日早朝) 28:20~28:30
この日も空の状態は良かった。最尾等級は5.4等、シーイングは良かった。
やはり彗星の様子は変わらない。ただ、前日と比べて背景の星に対して明らか
に南に移動しているのを確認した。彗星の全光度は4.5等、核光度は6.5等、コマ直径
は15分である。核光度は前日と変わらないと思うが、いずれにせよ低空では暗く感じ
る。尾は西の方に広がっている。尾の長さは30分ほどのようだ。
1997年9月29日(9月30日早朝) 28:30~28:37
この日は前日と同程度の空の状態(最尾等級5.2等・シーイング良)だった。
しかし、南東の空に雲はなく、その分星の追跡が楽で彗星の導入は容易だった。
彗星の様子は前日と変わらなかった。全光度は4.5等、核光度は6等、コマ直径
は15分でコマは北西に広がっていた。方向の見積もりに戸惑ったが、尾は北西から西
に広がっているようである。
1997年9月28日(29日早朝) 28:28~28:35
台風20号は9月20日に日本の東海上に去ったが、高気圧が北に片寄って張り出
し、このために東日本、西日本では天気が悪かった。また、北日本でも寒気が入った
ために大気が不安定になり、にわか雨に見舞われた。高気圧が本州に張り出し、北高
型が解消したのは27日になってからだった。それでも前線が南東に離れたため、関東
はこの影響を受けた。
ヘール−ボップ彗星の観測は台風20号が去った20日朝にまず挑戦した。ただ、
この時は地平線近くの空の状態が思わしくなく、彗星の確認はできなかった。その後
は28日朝に挑戦した。この時は晴天が広がったが、肝心の南東の空にだけ雲が残り、
結局観測はできなかった。そして今朝も南東の空に雲が残っていたが、雲の量は少な
く、何とかその姿を確認できた。
空の状態は透明度、シーイングともに良かった。最微等級は5.1等から5.2等。
これは流星観測用の星図からの見積りで、これまでにも使ってきた方法である。
彗星の光度は4.5等、コマ直径は15分だった。コマは北西に大きく広がってい
るようで、これはダストの尾だろう。尾の長さは30分と見積もった。昨年秋の観測に
比べて光度は同程度だがコマ直径が小さくなったようだ。昨年はコマ直径は30分ほど
と観測している。地平光度が8度ほどの低い空で観測しているので大気減光もあるだ
ろうが、JPLで観測を見てもコマ直径は15分ほどである。恐らく近日点通過前とはコ
マの広がり方が変わっているのだろう。
東京大学海洋研究所 大洋底構造地質部門
東京大学大学院 理学系研究科 地質学専攻 D2
原口 悟