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− 徒然 −

最近読んだ本 2002/8/28 編


田口ランディ。凄い。圧倒されました。
山田詠美は久しぶりに読んだけど、やっぱりいいなあ。


『コンセント』 田口ランディ
『マグネット』 山田詠美
『働く女』 群ようこ


■ 『コンセント』 田口ランディ 幻冬舎文庫
 圧倒された。
 この人の書くものは、それほど読んだことはなかった。エッセイと、短編集と、対談集。実際、ほんの数冊程度だ。 読むたびに、凄い才能だと思いながらも、なんとなくそれで満足して終わってしまっていた。
 だけど前回も、この人の本を読んで、なぜ今この文章に出会えたのだろう? と思えるほどの衝撃を受けたのだ。 (「衝撃」なんていうと大げさかな。 だけど、自分自身に対していろいろと勝手に落ち込んでいた時で、 その文章を読んだことで、自分なりの「落としどころ」が見えたような気がしたのだった。)
 というわけで、なんとなく、不思議な縁のようなものを感じたりしていた。

 そしてこの『コンセント』。 著者の処女作であり、おそらく原点と言ってもいい作品なのだと思う。 この人は魂の奥そこから、この本を書きたかったのだ、というより、 書かなければいけなかったんだということが凄い勢いで伝わってくる感じだった。
 物語は、主人公の兄が、引きこもりの末にアパートの一室で緩慢な自殺 ─ 餓死 ─ とも思える形で死ぬところから始まる。主人公は兄の死に衝撃を受け、それに囚われ、 さまざまな人に会い、さまざまなことを体験し、意識が変容していく。 死、生、魂、覚醒、鎮魂。そして再生。 著者自身も主人公と同じように、引きこもりの兄を亡くしている。
 続編(というより3部作?)に『アンテナ』『モザイク』という本があるとのこと。 主人公は異なるが、それぞれが、あらかじめ失われた何ものかを捜し求める物語。 近いうちに読んでみたいと思う。

 コンセント=生命エネルギー
 トランス状態になること=コンセントが抜けること、トランスパーソナル、
 解離性障害、シャーマン

 田口ランディは、時代の空気をとてもよく吸っている、シンクロしている

 ある種の、いわゆる分裂症に対する解釈

 自発性トランス
 意識の変容
 覚醒、浄化、再生

 アカイックレコード

 繰り返されるフレーズ ─ 「風が吹き、雲が生まれ、雨が降るのは、それが祈りだから。」
 祈り…鎮魂

 ガルシア・マルケス『百年の孤独』

 真木悠介(合田宗介)『気流の鳴る音』

 ジョン・アーヴィング『未亡人の一年』

 性描写や、死体の腐っていくさまの描写など、悪趣味とも思えるくらい過激な部分もある。 きっと嫌悪感を持って受けつけない人もいるだろう。
 また小説中に出てくる、例えば人間の心理をコンピュータ用語に置き換えて語るところなど、 ちょっとなあ、と思うところもあった。が、全般的に見てそういうことは重箱の隅をつつくようなものに思える。

 そして、文庫版で解説を書いている藤本由香里さんという人。 ごく最近名前を読んだような、と思っていたら、 つい先日読んだ上野千鶴子と小倉千加子の対談集 『ザ・フェミニズム』 を作った編集者だった。上野千鶴子が「あとがき」にて名前を挙げていた。
 ちょっとした偶然。

■ 『マグネット』 山田詠美 幻冬舎文庫  → 目次
 久しぶりにこの人の小説を読んだ。 以前は単行本が出たら必ず買っていた作家の一人だったのだけど、 最近はしばらくご無沙汰になっていた。
 「罪と罰」というテーマ沿って書かれた、9つの短編が集められた本。 なんだか、とてもよく出来た CD のアルバムみたいな本だった。 物語のひとつひとつが、異なった音色を持っている。 文体もそれぞれ微妙に違って、楽しい。 「文章を味わう」とは官能的な行為なのだなあ、ということを思い起こさせてくれる。 読み終えるのが惜しい。

 一編一編のストーリーの中で描かれる、ちょっとしたディテール、心の動き、主人公たちが感じるもの。 そういったものの描き方が、やっぱり山田詠美だよなあと思う。 わたしに響く。
 人間の犯す罪、そしてその罪を犯す人間の心の流れ。

 以下、ほぼ自分用のメモ書き。(笑)

 一話目「熱いジャズの焼き菓子」 ─ 殺人。 読み終わった後ため息をついてしまう。切ない感情。
 二話目「解凍」 ─ 放火。 衝撃的。怖くて、寒い。 絶対的な愛情、自分から絶対に離れない人を求めてしまう、人間の、怖さ。悲しさ。 それに応えようとしてしまう人間の寂しさ。
 三話目「YO-YO」 ─ 買春・売春。恋愛が始まる時のわくわく感。 そしてこの話に出てくる「門田」という男、すごくいいなあ。 主人公二人の関係もすごく好き。 この本の中では、一番好きな話かもしれない。 それにしてもこのタイトルってどういう意味?
 四話目「瞳の致死量」 ─ 覗き。 かなり、ブラック。
 五話目「LIPS」 ─ 結婚詐欺。 シニカルでディープ、不思議な印象。
 六話目「マグネット」 ─ 未成年者猥褻。 中学校の教師との出来事。意思的な女という形容がぴったり当てはまる感じ。
 七話目「COX」 ─ 同性愛。 ....「正確」?
 八話目「アイロン」 ─ 痴漢。 すごく勢いがあって楽しい。ポップ。読んでいて元気をもらえる感じ。
 九話目「最後の資料」 ─ 罪。 淡々と描かれる義弟の死。私小説ともいうべき物語。 ごく親しい人間が目の前から永遠にいなくなってしまうということ。重い。

■ 『働く女』 群ようこ 集英社文庫  → 目次
 そこはかとなく元気が出る本だった。
 働く女たちを描いた短編集。一つの短編で一人の「働く女」が描かれている。 本の帯には、「ほら、あなたが ここにいる!」 の文字。 百貨店外商部のチハル、 一般事務職のトモミ、 コンビニパートのミサコ、 元一般企業総合職のクルミ、 フリーラーターのエリコ、 女優のチユキ、 エステティシャンのタマエ、 呉服店店主のテルコ、 元銀行員のミドリ、 ラブホテル店長のチアキ。 さまざまな境遇でさまざまに十人十色の、「働く女」たち。

 この本の主人公たちは、なんだか大変なのだ、皆。 それは自業自得でしょうという人もいるし、これは可哀想だよなあと思ってしまう人もいる。 だが、皆、いろいろと大変で疲れていて、でも 「しょうがないよなあ」 という感じで明日もきっと仕事に行く。 それを読んでいるこちらも、 いろいろと大変で疲れていたりすることもあって、 「でもまあ、しょうがないよなあ」 と思わずつぶやいて明日も仕事に行く元気をちょっともらう、そんな感じの本だった。
 やっぱり群ようこはいいなあ。大好き。わたしにとっての「癒し系」 (笑)です。

2002/8/28 記


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