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− 徒然 −

最近読んだ本 2002/5/25編


 自分の読書傾向を書くのは頭の中をさらけ出すようで恥ずかしいという感があり、 なぜか避けていました。 が、記録として残しておくのもまあたまにはいいかという気分になったので。
 例によって、基本的にメモに近いものです。 また、「最近読んだ本」とありますが、 実際は最近読んだ本をすべて書いているわけではないです。 最近読んだ本のなかから適当にピックアップして書いています。

『落下する夕方』 江國香織
『やられ女の言い分』 内田春菊
『いくつもの週末』 江國香織
『夢について』 吉本ばなな
『あなた、今、幸せ?』 槇村さとる&キム・ミョンガン


■ 『落下する夕方』 江國香織 集英社文庫
 この人の本は最近読み始めた。不思議な軽快感と透明感がある。
 主人公は三人。 子どもに絵を教える仕事をしている梨果、彼女と八年暮らした元・恋人の健吾、健吾が突然なすすべもなく恋に落ちた相手・華子。 この三人の奇妙な三角関係の物語。 梨果は健吾が好き、健吾は華子が好き、華子は特定の誰かに執着する性質ではない。 健吾が家を出て行き、入れかわりに華子が梨果のもとへ転がり込んでくる。 健吾の元・恋人の梨果と、現・恋人もしくは片想いの相手(?)の華子の同居が始まる。
 華子の不思議な、透明な存在感が秀逸。 また梨果の頭のよさ、きちんと自分の足で立ち ものごとを受け止める性質が、かなしくもきれい。
 そして主人公たちの生活のたたずまいが清潔で凛としている。 梨果が毎朝起きて植物をベランダに出して出勤し、 仕事から帰ってきて夕陽を見ながら植物を家の中に取り込むところなんかがいい。 華子なんて、いつもごろごろとソファで寝てばかりいるのだけど、 それでも凛とした空気がある。著者の、日々の生活に対する姿勢が表れている感じ。
 読後感は、重いような、でもじっとりした感じでもなくいい具合に乾いていて、 それでいて微妙にせつなくて、かなしくて、 「うん。こういうこともあるだろう。」 と思えるような、不思議な感触。
 こういう、「微妙にせつない」 感覚が残る小説は、いいなあと思う。 「微妙」なうれしさ、「微妙」なかなしさ、「微妙」なさびしさ、「微妙」なせつなさ。 そういったものを上手に書ける小説家だと思う。

■ 『やられ女の言い分』 内田春菊 文春文庫  → 目次
 内田春菊の、1993 年から 98 年にかけて書かれた文章 (エッセイ、自他の本のあとがき、書評、etc.)を集めた本。
 ご存じの方もいると思うが、著者は昨年だったか一昨年だったか、離婚と結婚をしている。 そのあたりも含めて、文章を書いた当時の状況について各文章の末尾に注釈が付いているのがなんだか感慨深い。 春菊マニアな人にはお勧めの一冊、という感じだ。
 私はこの人の書くものは、漫画でもエッセイでも小説でも、もう大抵のものが好きだ。 芯の部分の強さみたいなものに惹かれる。 そして潔くてユーモアがあり、辛辣で優しい。 自分にないものに憧れるんだろう。
 「文庫あとがき」が非常に壮絶だった。

■ 『いくつもの週末』 江國香織 集英社文庫
 江國香織の、自身の結婚について書かれた本。 およそ2年目から3年目の結婚生活を過ごしながらの、 結婚、夫婦、生活、喧嘩や仲直り、などについて書かれている。
 私は結婚はしていないが同居人がいて、ああ同じようなことをしている、だとか、 こんな感じなんだうちとは全然ちがう、などと思いながら読んだ。
 くっついているからこんなにかなしいおもいをするのだ。
 ほんとうに、しみじみとそう思う。 そうして、それなのにどうしてもついくっついてしまうのだ。 二人はときどき途方もなく淋しい (一人の孤独は気持ちがいいのに、二人の孤独はどうしてこうもぞっとするのだろう)。

(「月曜日」より)
 私も基本的に一人で暮らすのが好きだ。 なのに、どうして二人でいるんだろうと時々思う。
 でも、ちゃんと理由もわかっている。ときどき見失うけど。(笑)

■ 『夢について』 吉本ばなな 幻冬舎文庫  → 目次
 吉本ばななの、夢に代表されるなにか混沌と不思議な現象について書かれたエッセイ。
 思うところあって最近読み返した。 私はもともとあまり夢を見ない(正確にいうと、覚えていない、だろうか) のだけど、ここ一週間あまり、ものすごい勢いで夢を見る。 ちょっといろいろとあってしんどかったせいだと思うけれど。 ストーリーもちゃんとしていて、夢の中でかなしくて泣いたり感動したりもする。
 この本の中では、オカルト体質の筆者が夢を通して経験する不思議なことどもを つづってある。とても強く「伝えたい」と思っていたことが、 実際に本人から連絡があるより先に、夢で伝わっていたという経験。 ある夜、皆が同じ夢を見ていたこと。 親しい人々に伝わる、念のようなもの。
 残念ながら私自身は、そういう不思議な経験はない。 でもそういうことって、科学で解明できるわけではないけれど 実際には結構あるのかもしれない、と思う。
 私が夢の中で伝えたかったことも、相手に伝わっていてくれたらいい、と思った。

■ 『あなた、今、幸せ?』 槇村さとる&キム・ミョンガン 海拓社  → 目次
 漫画家、槇村さとるとその夫で性人類学者のキム・ミョンガンお二人のエッセイ集。 自立、恋愛、生き方、結婚について、槇村さとるのエッセイがだーっと続き、 各章の章末にキム・ミョンガンのコメントが数ページさし挟まれている。
 私は実は槇村さとるの漫画を読んだことがない。 「おいしい関係」とか「イマジン」とか、ドラマになったものも観たことがない。 でもこの本を読んで、強烈に 「この人の描いた漫画を読んでみたい!」 と思った。それから、この本の前に『イマジン・ノート』というエッセイもあるらしい。 そちらも、ぜひ読んでみたい。
 とにかく、才能があって、頭がよくて、強くて、柔らかい。なによりも、「潔い」 人。
 こういった「潔い」人の書くものを読むと、とてもパワーをもらえる気がする。 ぐずぐずと考えているときに読み返して、元気をもらいたいと思える本。
 かなり辛辣なこともズバズバと書いている。 それがいちいち、ああもっともだ、と思える。 内田春菊の書くものに通じる辛辣さだ。
 キム・ミョンガン氏とのパートナーシップもすごくいい感じだった。

2002/5/25 記


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