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ロード・オブ・ザ・リング

監督:ピーター・ジャクソン
出演:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、リヴ・タイラー、
ヴィゴ・モーテンセン、ショーン・アスティン、ケイト・ブランシェット、
ジョン・リス=デイヴィス、オーランド・ブルーム、クリストファー・リー、
ヒューゴ・ウィービング、ショーン・ビーン、イアン・ホルム

 トールキンの有名な「指輪物語」大叙事詩三部作、第一部の映画化。
 世界を支配する闇の力を持つ指輪を手に入れてしまったホビットの青年フロドと、 その仲間達が、指輪を破壊するための長い冒険に出かける。

 久しぶりに、物凄い映画を観た!という感じ。 実は私は「指輪物語」は読んだことがなくて、今それをとても残念に感じているところ なのだけど、原作を読んでいなくても感じる、物語の圧倒的な力、 そしてそれを丁寧に、大胆に、 物凄い情熱をもって映画化したスタッフたちの奇跡のような力を感じる。 子ども時代に(いや、大人になってからでも)この物語を実際に読んだことがあり、 その世界に引き込まれた経験を持つ人にとっても、 これは本当に奇跡のような映画なんじゃないかしら。

 物語自体はとても有名なので、それについてはここで感想を書くべきではないかもしれない。 だからあんまり書かないようにしよう... と思いつつ、 やはりこの物語の持つ力自体に初めて触れてしまったという衝撃も、大きい。
 トールキンはなんて凄いストーリーテラーなのだろう。 そしてこの「指輪物語」のテーマは、現代においても全く色褪せない。 人間の欲望の果てしなさ、そして弱さ、その結果として争いの絶えない世界、 素朴で優しい生活とそれを破壊する者たち、エゴイスティックな欲望、 支配欲、征服欲。 そして人間に残された最後の切り札である、友情と自己犠牲。
 監督ピーター・ジャクソンが語る通り、 「これはサバイバルと勇気の物語であり、 人類がさらに前進するための、 最後の抵抗を描いた感動的な作品」である。
 そして映画の中に立ち現れる、いくつもの、心に沁みる言葉。
 己の弱さに揺れ、指輪の力に翻弄され、 時には道を違えたりつまずいたりする登場人物たち。

 また映画としてとても素晴らしいと思ったのは、 ただただ、物語の世界を圧倒的なリアリティで再現してみせていることである。 ロケーション、CG、特殊メイク、さまざまな小道具や衣装、そして演出、 俳優たちの演技。 本当にこの「指輪物語」の世界、「中つ国」が、 スクリーンの向こうに存在するとしか思えない2時間58分だった。
 この世界に引きずり込まれ、はらはらと物語の行く末を見守っていると、 3時間なんて本当にあっという間なのだ。
 例えば、CG 。
 私はよく、映画で使われる CG の技術に感嘆する。 すごいなあ、この映像がコンピュータで可能なのね、と。 でもこの映画では、そのような「技術に対する」感嘆がつけ入る隙などない。
 ただただ、そのリアリティに圧倒される。物語の、映画の世界に引き込まれる。
 ちゃんと考えるともちろん CG なのだけどね。

 この映画の製作に関われた人々は本当に幸せだろう、 そういう感慨を持てた、久しぶりの映画でした。

 そうそう。 私はこの物語を読まずにドラクエやファイナルファンタジーに嵌った人なので、 「おおドラクエの世界がここに!」... じゃなくて(笑)、 「ああ、あの系統のロールプレイングゲームの源はこの物語なのね」という、 よく言われていたことを、ひたすらに実感しましたです。

 それと、原作者トールキン、映画監督ピーター・ジャクソンの想い入れがひとしおだと思われる、 「ホビット」という生きもの。 この種族の生活が、いいんですねえ。 優しく、自然を愛し、やっかいごとを嫌い、畑で農作物を作り、 洞窟に扉をつけて手仕事の家具をしつらえて住む。 とても素朴でシンプルな生活。
 映画の中でもこのホビットたちの生活がとても美しく描かれていて、 なんとなくじんとしました。

 三部作の撮影は既に終わっているが(撮影期間は 15 ヶ月だったらしい!)、 製作には三年かかるとのこと。 一年おきに一部ずつ公開されるという、かなり変則的なスケジュールだ。
 ということで、第二部は 2003 年公開。先は長いぞー。

 第二部の公開が、本当に待ち遠しいです。

2002/4/4, 港北109シネマズ
2002/4/6 記


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