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ギフト

監督:サム・ライミ
出演:ケイト・ブランシェット、キアヌ・リーブス、ジョヴァンニ・リビシー、
ケイト・ホームズ、グレッグ・キニア、ヒラリー・スワンク

 超常的な能力を持つ主人公が、その能力(「ギフト」)のおかげで 殺人事件を発端とする危険な出来事に巻き込まれていくというストーリー。

 いやあ怖かった。 この監督ってこんなに神経症的な映像、得意な人だったっけ?と思ったよ。 でもって私も、スプラッタがバシューみたいな(笑)映像なんかより、 こういうののほうが全然怖いの。というか弱い。再認識しました。 久しぶりに、途中で「観るの、もうきついよ」って感じになりました。 「ああもう止めてよ、ごめんなさい、もう堪忍、頼みます」って。 (ちょっと弱ってるのかもしれない。笑)

 どんどん精神的に追い詰められていって、 空気中を風や雨に乗って何かとても怖いエネルギーが迫ってきて、 神経の小さなささくれを指先で静かにこすり撫でられていく。 だんだん静かに限界がくる... 。
 (ああ、すごく嫌だなあ... )

 主人公が「ギフト」を持つことの意味って何だろう。 主人公にとってその能力を持つことはとても苦しいことだ。 裁判の証言で「このような能力を持つことが、本当に嬉しいと思うの?」 と叫ぶ彼女はとても痛々しい。
 この映画には精神的に病んだ人たちが何人も出てくる。
 人を愛せず妻に暴力を振るう夫、 痛めつけられながらも精神的に彼に依存せざるを得ない妻、 子どもの頃の性的虐待から立ち直れない男、etc.
 主人公の祖母は、「その能力は神様からのギフト。信じなさい。」と言う。 そして最後に主人公を助ける '彼' も、 「あなたの能力は皆にとって必要だ。皆を助けてあげてください。」と彼女に伝え、 去っていく。 病んで追い詰められておかしくなっていく人たち。 現実にも大勢いる。 実際に何かの、あるいは誰かの「ギフト」によって救われる人もいればそうでない人もいる。 己の持つ「ギフト」によって他者を救う、それは原始宗教の始まりだ。 だけどそういうことを言っているわけでもないだろう。 「ギフト」のような、ふいに神様が残酷な出来心で恵んでくれたようなものに よってしかすでに救われない、そういう状況。 ... まあ別にこういうことを言っているわけでもないとは思うけど。

 主人公役のケイト・ブランシェットはよかった。 印象の強くなさすぎない感じの顔立ちがこの映画によくはまってる。 キアヌ・リーブスも汚れ役全開でなかなか。 父親を焼き殺す役のジョバンニ・リビシーは、顔がめちゃめちゃ怖かった。 この映画の怖さの一角を明確に担ってるね、あの顔立ち。

 冒頭の、水の中に林立する森の映像は鮮烈だった。奇麗で怖くて。 なぜか、一昨年東北を放浪中に見た風景を強く思い出しました。 (一応観光地というか天然記念物だった... 池の中から林立する何百年も前の枯れた木立。 でも名前が出てこない... )
 映画等の映像からフラッシュバックする記憶の中の映像は旅先のものが多い、 というのはいつも不思議。 旅してる最中は、それだけ感覚器が外に向けて開いてるのかな。 だとすれば、定期的に旅をしてないと脳が老化しちゃいそうですね、私。(笑)

2001/6/30, 港北109シネマズ
2001/7/1 記


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