夢の中に目がさめる 何かかかわりのある夢である
いねおばさんと歩いてゐた。おばさんはしやんとしてゐた 若い頃のことか今は二つにまがつてゐる。二人でどこかに行つた はつきりしない道である。大きな広い倉庫でその中を通ると近道である。その中に部屋もありその部屋部屋では共産党みたいな人達がひそひそと話してゐる。その倉庫にはハゼの実が一ぱい積み重ねてある。ロウを作る原料である。
その昔、私の家でもロウをしぼつてゐた。ハゼを家一ぱい買入れた乾燥場に倉庫に何万斤(ぎん)だつたらうか、まあよく集まつた。夢からさめて昔の事がしきりと思い出される 主人の事業家であつたこと思い出す そして早く逝つたことのくやしさがのこる。ロウをしぼつてゐた事の頃を思い 書き残し度くなつた。
何万斤と集まつた原料のハゼの実が裏の倉庫 蚕乾燥場に一ぱい山積してある。何十台もトラックで運び込む 毎日毎日来た
鹿児島にハゼを買入れに行くこともある 東京から取り寄せることもあつた。
油圧機械が据えてあつた。ボイラーをたいて蒸気で蒸して圧力ポンプでしぼるのである。じゆうと液体になつて出て来る 冷めると堅くなる わん型の中で冷め ロウが出来る。それを白く晒に出す。柳川の三橋と云うところの石橋さんに出した。廣い畑の中にそのロウをきざんで干してある 何日か干すと白くなる それを忠印の型に入れ きれいな白ロウになつて帰つて来る。
東京、京都方面へ送る。三十六キロ 八貫目である 前の貫数で五十斤である。
荷送りにも手傳つた。男むすびもおぼえた。
朝は早くからボイラーをもやし湯を立てておくと仕事の都合がよい。その頃はよく働いた。面白かつた。若くて油ののつてゐた頃である。なつかしく思出は盡きない。
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ばあちゃんの食いもん |