意外かもしれませんが、志穂美さんはアメリカやカナダなどでは最も名前を知られている女優さんの1人なのです。例えば、日本では大女優とされている吉永小百合さんなどでも、アメリカではほとんど名前を知れれていません。アメリカの検索エンジンで最も強力なAltaVisitaを使って調べても、吉永さんが載っている(英語の)ホームページは数件しか出できません。しかも、そのほとんど全てが日本国内の日本人が作ったページです。同じ検索エンジンで、志穂美さん("Sue Shiomi"と"Etsuko Shiomi")を検索すると、あわせて40件近いページが出てきます。まあ、日本の女優さんが全く知られてないということでもありますが。
それらのページのうちでは、既に"The Movie Shelf of Aparatment 304"と"Bejing Video"については紹介してます。ここでは、Peter Hustonさんのサイト Peter Huston's Official Web-Siteを紹介しましょう。実は、Hustonさんはこのサイトをしばしば訪れているとのことで、メールを頂いております。Hustonさんは作家ですが、アジアの歴史、文化や映画などについて幅広い関心を持っておられます。映画や大衆文化についてのページの日本映画の項に『女必殺拳』("Sister Streetfighter")と『激突! 殺人拳』("Streetfighter"の二つが載っています。この中で、Hustonさんは、志穂美さんのことをアクションが上手いだけではなく、とても可愛(cute)く、大好きな女優さんであると言ってます。さらに、『女必殺拳』を「これまで製作された中で最高の映画」(!)と評価してます。 なお、『女必殺拳』と『激突! 殺人拳』と三島由紀夫を扱った映画である"Mishima -A Life in Four Chapter"が並んでるのにはちょっとびっくりします。『女必殺拳』や『激突! 殺人拳』が小説家三島由紀夫と並んで日本の文化を代表するものになったということでしょうか。(笑)
余談ですが、『女必殺拳』で編み笠をかぶった武芸者の集団がバレー教室に押し入るシーンについて、Hustonさんが「どうしてあの悪者達は全員"バスケット"を頭にかぶっているのだ? 象徴主義的な意味があるに違いないが、誰か教えて下さい。」と言っております。誰か教えてやって下さい。(笑)
「香港のそっくりさん」「小説の中のそっくりさん」に続いて、「そっくりさん」シリーズの3回目、今回は「劇画の中のそっくりさん」です。劇画の中でのそっくりさんは、意外なというか、灯台下暗しという感もある作品に出ています。それは、TVドラマ化され、志穂美さんも出演されている『ドーベルマン刑事』(原作武論尊、画平松伸二)です。ただし、そっくりさんはTVで志穂美さんが演じている五十嵐薫刑事ではありません。この辺の事情は結構ややこしいのです。
まず、ご存知かもしれませんが、『ドーベルマン刑事』について少し説明しておきましょう。『少年ジャンプ』に連載されていた劇画『ドーベルマン刑事』は、黒の革のツナギ姿でオートバイを乗り回す、犯罪撲滅のためには滅法荒っぽい手段をとる刑事加納の活躍を描いたものです。黒のつなぎの加納がカッコ良く、当時の人気劇画でした。TVドラマでは、主人公の名前が同じというだけで、全く違った内容となってます。また、原作とTVドラマでは、主人公の加納以外の登場人物の名前は全く異なっています。さらに、TVドラマに登場するキャラで、原作に対応すると考えられるキャラはほとんどありません。ただ、志穂美さんが演じた五十嵐薫はその中ではやや例外に属します。 五十嵐薫は原作に無いキャラなのですが、対応すると思われる女性刑事のキャラはあるのです。三森竜子という美人で恐ろしく腕が立つ女性刑事です。三森と主人公の加納は恋人同士となり、二人で協力をしながら悪と闘っていきます。一時刑事という仕事と加納への愛の両立に悩み、加納の前から姿を消しますが、再び刑事に戻り以前にも増して活躍することになります。この三森刑事が志穂美さんのそっくりさんなのです。
三森刑事は、『ドーベルマン刑事』第5巻で初登場します。この最初に登場した5巻、6巻の三森刑事の姿を見て私はびっくり仰天しました。画像見てください。顔かたち、ヘアースタイル、服装といい、胸に13のマークこそありませんが『若い貴族たち 13階段のマキ』とかの志穂美さんそっくりです。しかも、第6巻には、映画プロデューサーの前でひったくり犯を捕まえた(画像はそのときのシーンです)ことから、
三森がアクション女優としてスカウトされる!!
という話まであるのです。三森はその話を断りますが、その後そプロデューサーが殺害されるという事件が起き、捜査の都合上その話を承諾したりふりをします。それで「現職女性刑事がアクション女優に!」というこで新聞の芸能面の記事になり、三森の写真が載るということになるのですが....。本当にビックリしました。ということで、どうも原作者の武論尊さん、あるいは作画担当の平松伸二さんが、志穂美さんを頭に描きながらこのキャラ作ったことは間違いないようです。当時、いかに志穂美さんのファンが多かったか分かります。こうしてみると、原作にある程度忠実な三森刑事が出る『ドーベルマン刑事』観たかった気がします。当時は、少年誌と青年誌の役割分担が今ほどはっきりしてなくて、現在では青年誌に載るような作品でも少年誌に連載されてます。この作品は少年誌に載った作品ですが、大人向けの内容となっており、三森の際どいシーンが結構多いのです。原作に忠実な形で映画化(TVの場合原作に忠実というのは無理のような気がします)場合、志穂美さんが三森を演じるのはこの点がネックになった気もします。でも、この話とかはそれほど際どいシーンとかはないので、この話だけでも原作に忠実にTV化あるいは映画化されたらよかったのにと思います。
付け加えておきますと、一度加納の前から姿を消していた三森が刑事として復帰してくるのですが、上の画像(第20巻)から分かるように再登場後の姿は『爆走ドーベルマン刑事』第1回の五十嵐薫そのまんまなのです!!
『ホンコン・コネクション』については、主な出演作品のコーナーで説明をしておりますが、最近「新・テレビ探偵団京都支局」というサイトを主催している市村様から画像を頂いたので、改めてここで少しお話します。『ホンコン・コネクション』は、1979年の法政大学映画研究会の自主製作映画で、国際麻薬密売組織を相手に活躍する内閣調査局員(要するにスパイ)のお話です。志穂美さんは、主人公(男性)が窮地に陥ったときに現われ、主人公を助ける美しく有能な女性スパイ"エメラリーダ志穂美"(笑)の役で特別出演しています。主人公が複数の敵を相手に苦戦しあわやというときに志穂美さん=エメラリーダ志穂美が突然現れ、ハイキックで敵を倒し、主人公を救います。主人公は、エメラリーダ志穂美に「今日の君は綺麗だ。今夜は○△で待っている。」というようなその夜のデートをほのめかすようなセリフを言って、志穂美さんの登場シーンは終わります。 私はこの映画の自主上映会が銀座ガスホールで開かれるということを偶然『ピア』で知り、この映画を観た訳です。ガスホールでの上映会では、志穂美さんの登場シーンで会場に大きな歓声が起こったことを未だに良く憶えています。
『柳生十兵衛あばれ旅』は志穂美さんのいろいろな姿(志穂美さんのコスプレですね(笑))が見られるという点では大変に楽しい作品なのですが、各回のストーリーとかには奇妙な点、腑に落ちない点が多い作品です。全体として脚本が不出来な回が多く、どちらかというと視聴者の間では不評な作品でした。このようになった原因はいくつか考えられます。
元々、この作品1980年から81年にかけて同じテレビ朝日系で放送された『柳生あばれ旅』の続編で、『柳生あばれ旅』のタイトルとなるはずでした。実際、ある時期までは『柳生あばれ旅』で番組の予告がされてます。ところが、千葉真一さんが自分の演じる十兵衛の作品における比重を以前の『柳生あばれ旅』より高めたいと考え、強引にタイトルに「十兵衛」を入れさせた上で、自分の出演シーン、とくに見せ場を多くしようとしたようです。そのため、十兵衛の変装である権兵衛爺さん、まぼろし天狗を登場させてます。さらに、JACの若手の売り出しの機会と考えて、十兵衛の忍者集団の頭目という性格を強めて、その忍者集団=裏柳生衆としてJACの若手を沢山出演させた訳です。このような理由から、この作品では登場するキャラが多くなり過ぎており、この多くのキャラのそれぞれ見せ場をある程度与え(もちろん、全ての回で千葉さんの十兵衛には一番目立つように見せ場を与えようとしています)ようとしたため、どうしても脚本に無理が生じるようになり、辻褄の合わないところや、ストーリーに魅力が欠けてしまうということになったと思えます。
例えば、11話の捕らえられた母子を助けようとして、地元の悪い親分のところに芝居の座長に扮して、芝居興行の挨拶に見せかけて乗り込むというシーンです。薩摩忍びの男は、芝居の座長に扮した美しい茜を見て下心を抱きます。親分は薩摩忍びの男の歓心を買うために、そのための部屋の用意がしてあることを言って、薩摩忍びの男をそそのかします。ところが、この辺のところを後の話の筋とかに利用していません。普通の時代劇ですと、茜が男の下心を利用して、薩摩忍びの男なり親分を人質にとって、捕らえられた親子と交換にするというのが自然な流れです。ところが、裏柳生が親子を助け、それも敵にすぐ見つかってしまうような助け方をします。そして、いきなりこの後、何の工夫もなく茜が親分の前に立ちはだかって立ち回りが始まります。ここで茜は扇子を使った立ち回りをします。確かに格好はいいですけど、よく考えれば茜の腕なら途中で敵の刀を取って闘うのが当然です。そして、扇子で闘ったために結局危機に陥ってしまい、千葉さんのまぼろし天狗が助けに来るという訳です。話がおかしかろうと何だろうと、無理矢理にでも千葉さんのまぼろし天狗を出す展開に持っていっています。他の回でも、どうも茜の変装が話の筋の中で上手く生かされてないというか、敵に対する「戦術」として有効に働くという筋になってなくて不自然なのです。変装以外でも、十兵衛や裏柳生衆の大勢のJAC軍団が茜を助けるというシーンを入れるために、わざわざ茜の活躍を中途半端にし、脚本の定石沿わないような筋にしていて、話の繋がりが不自然になり、スカッとしないストーリーとなっている傾向があります。
まぼろし天狗は、それがストーリ上不自然なことと、乗っている馬や衣装などが夜光塗料塗ったように光るというひどく珍妙なキャラであったため、視聴者にひどく不評で、14話以降は出なくなります。以後の回では、天狗の出番をつくるために、茜が変装して行動して危機に陥るように無理して筋を持ってくるということは無くなってきます。それはそれで良いところもあるのですが、今度は茜の変装が少なくなってしまします。志穂美さんのいろいろな姿が見られるという点では、前半はそれなりの楽しみがあります。前半の明るいタッチで、志穂美さんのコスプレはそのままにしておいて、天狗(とJAC軍団の大半)の出番だけ無くした方が良かったような気がします。
あと、このような根本的な問題点とは別に、気がついたところをもう1つだけお話しとます。巡検使の旅の様子ですが、縫之介(茜)、鏑木、阿里助が一緒にぶらぶら歩いて、物見遊山で旅しているような感じの歩き方に描かれてます。どうも、巡検使らしい威厳を持ったような道中姿で描かれてないのです。もっと言うと、幕府の公式の役目ですから、縫之介が、鏑木、阿里助を引き連れ、その後ろに荷物を持つ中間を引き連れたような道中姿でないといけないはずです。ああいう物見遊山のような感じにするのであれば、縫之介一行が巡検使であることを隠して旅している設定にしないとおかしい感じがします。ほかにもおかしい点は沢山ありますが、ここでやめにしておきます。
ということで、『柳生十兵衛あばれ旅』の文句を書きましたが、実は志穂美さんのコスプレがたくさん見られるので、出来は別としてこの作品とくに前半は好きなのです。(笑)
志穂美さんの主演映画でビデオ化されてるのは、『女必殺拳』シリーズ、(必ずしも主演映画とは思われてませんが)『宇宙からのメッセージ』、それに『二代目はクリスチャン』だけです。『女必殺五段拳』『必殺女拳士』『華麗なる追跡』『若い貴族たち・13階段のマキ』はビデオ化されておらず、CS放送が広まるまでは鑑賞できる機会が稀な作品となってました。
ところが、最近「極私的ディスコグラフィー」のコーナー等でお世話になっているゾンビ様から『必殺女拳士』のビデオ買ったというメールを頂きました。CSで放送したのを録画したものが勝手に売られていて、それを購入したように思えるかもしれませんが、そうではありません。種明かしをすると、『必殺女拳士』には英語版のビデオはあるのです。(それから、以前アシカ様からお寄せい頂いた情報によるとドイツ語版のビデオもあったそうです。)ゾンビさんは新宿の輸入ビデオ屋さんで英語版のビデオを手に入れたのです。
『必殺女拳士』英語版ですが、かなり以前から独立系のビデオ会社が売っていたようです。その後、廃盤となっていたのが、Xenonというビデオの会社が最近Deadly
China Dollsという香港の女性アクションものを集めたシリーズの中の一本として発売しました。志穂美さんが日本人ですし、主人公の桧垣由美も日本人ですのに香港女性アクション映画の中の1本のように扱われてしまっています。
ゾンビ様から送られたパッケージの画像(クリックすると拡大します)を載せましたが、注意してみると変なとこに気がつくと思います。ビデオのパッケージの写真には『必殺女拳士』の画像だけではなく、『女必殺拳』シリーズそれに『女必殺五段拳』の画像も使われてます。パッケージ表面のヌンチャクを構えた写真は『帰ってきた女必殺拳』ですし、裏面の倉田さんとの写真は『女必殺拳危機一発』のものですし、道場での空手の道着姿の写真は『女必殺五段拳』のものです。ということで、パッケージの写真だけみると何の映画か分からないものになってす。(笑 それから、裏面の粗筋紹介では志穂美さんが千葉さんと一緒に闘うことになってまして、かなり適当なストーリー紹介となってます。
なお、この英語版『必殺女拳士』の批評が下のページの2つのページに載ってます。
htttp://www.j-pop.com/music/archive/reviews/15/02_dragonprincess.html
lhttp://www.alex-in-wonderland.com/MovieReviews/Asian-D/DragonPrincess.html
後者を読むと、志穂美さん演じる桧垣由美から『ストリート・ファイターU』の春麗を連想してます。父の復讐を果たせば、普通の女性として生きることができる(
"Once I avenge my father's death, I can live my life as a normal girl.")と考える女性キャラであるという点に、由美と春麗の強い類似点を感じている訳です。通常、日本人は、李紅竜や(『直撃地獄拳・大逆転』の)紅美湖から春麗を連想することはあっても、桧垣由美からは連想することはないと思うので、この辺の感じ方の違いって面白いと思います。父の復讐のために心ならずも闘わなければならないヒロインという設定が、アメリカ人にとっては非常に「日本的」「アジア的」な感じなのでしょう。
最後に、この英語版を手に入れたい人のために情報提供をしておきます。一番簡単なのは、Horsemen Productionsという会社のサイトから購入することです。トップページのURLはhttp://horsemenproductions.bizland.com/
で、
http://horsemenproductions.bizland.com/tp2.htm
に、Deadly China Dollsシリーズのカタログがあります。ただ、十分に信頼がおけるか業者かどうかは私には分かりませんので、責任は負えません。ご自分でリスクを判断して下さい。