Part.2

6.ファンに不評だった映画

7.『若い貴族たち・13階段のマキ』:本当はこういう映画になるはずだった?

8. 香港のそっくりさん?:シンシア・カーン

9.小説の中のそっくりさん?

10.女性からのファンレター

ファンに不評だった映画

志穂美さんの主演映画で、公開された当時ファンに不評だった映画があります。それを挙げておくことにしましょう。その不評の理由を考えると、ファンの志穂美さんに対する思いが分かり興味深いものがあります。

(1)『若い貴族たち・13階段のマキ』

これは梶原一騎原作のスケバンものの劇画の映画化です。東映には、スケバンものというか不良少女ものの伝統があり、主人公のマキが空手を使うスケバンということもあって、志穂美さんが主演のこの映画が作られたわけです。ただし、作品紹介のページでも書きましたが、主人公マキの際どいシーンが全く無いという点で原作とは大きく異なってますが。しかし、志穂美さんに不良少女の役をやらせたということで、この作品志穂美さんのファンからは非常に不評でした。ファンにとっては、志穂美さんの清楚なところが魅力ということがあり、スケバンの役などとんでもないというところがあったのでしょう。志穂美さん自身も、演じる前から、このマキの役あんまり好きではなかったようです。亀有名画座で作ったチラシの中の紹介を引用しておきましょう。

「梶原一騎の原作を『不良番長』シリーズで知られる内藤誠監督が『ズベ公番長』『女番長(スケバン)』『恐怖女子高校』と脈々と続いていた東映不良少女路線のバッドテイストをふんだんに盛り込んだ傑作! ただし公開当時は、志穂美初の汚れ役のためファンからは、総スカンをくった。」

(2)『女必殺五段拳』

この映画、志穂美さんの立ち回りもいいし、しかも志穂美さんが少女ではなく美しい女性となっていて、後から見ると魅力的な映画です。(ただ、最後がちょっと尻切れトンボのような感はいなめませんが。)でも、やはり公開当時は、ファンの間ではあまり評判良く無かった記憶があります。その理由としては、志穂美さんが「女性」になっていて、助けてくれる渡瀬恒彦さんを男性として意識するように描かれているのが最大の理由でした。男女を問わず、当時のファンは志穂美さんを助けてくれる男性は、志穂美さんにとって「男」ではなく「兄」であるように描かれて欲しいと思ってたのですね。この辺、今から考えると大変に面白いと思います。

注) 画像はソンビさんから提供を受けたものです。

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若い貴族たち・13階段のマキ』:本当はこういう映画になるはずだった?

「ファンに不評だった映画」に書いたように、『若い貴族たち・13階段のマキ』は志穂美さんに不良少女の役をやらせたということ、(主人公マキの際どいシーンが無いという重要な違いはありますが)梶原一騎の原作ですので、どぎついシーンが多いというので、志穂美さんのファンには不評でした。また、脚本自体もストーリー的に破綻しているなどと言われていています。ただ、この映画の監督であり、脚本の執筆者の一人(金子武郎氏と共同)であった内藤誠氏は全く違うストーリーを考えていました。内藤氏は非常に深い教養を持った映画監督で、後に東映から離れ、独立プロで映画を撮ることになります。内藤氏がどういうストーリーにしたかったのが、御自身書いていることを紹介することにしましょう。内藤氏は、志穂美さんについての「タフでやさしい佳人のイメージ」という題のエッセーの中で次のように言っています。

「『若い貴族たち・13階段のマキ』を撮る仕事がぼくにまわってきたとき、悦ちゃんは、すでに東映アクション路線のドル箱スターであった。そこで、今度は少し変わったものをという提案があったとき、ぼくは武田泰淳の『十三妹』のようなものを撮ってみたいなとプロデユーサーにも悦ちゃんにも言っていたと思う。十三妹とは中国の女忍者で、科挙試験にもなかなかパスできぬグータラな亭主をかばいながら冒険的生涯を送る、タフでやさしい佳人である。 ・・・<中略>・・・ どうもぼくは武田泰淳の文学にしばしば出てくる一つのパターン、つまりやさしい男をかばうようにして生きるバネのきいた女にエロチシズムを感じるらしい。・・・<中略>・・・ そんなわけで、『若い貴族たち』の脚本を金子武郎さんと一緒に書いていたときにも、ぼくはつぎのような話にしたいと言った。それは、荒木一郎かなんかが演じる映画館の看板絵描きの青年がいて、たまたま仕事中、ペンキを下の通りをいくスケバン・グループの頭上に落としてしまう。そして、ワーッと集まってきたスケバン連中はどうあやまっても許してくれず、コテンパンに殴られている。そこへ悦ちゃんがきて、さっそうと助けてくれる。この世に美と理想を夢みるが生活力がない男と、具体的で強い女のめぐりあい。すてきな青春アクションになると思うけど、とぼくは言った。が、まるでそれじゃ『ネオンくらげ』のパターンじゃないかとエライ人に一笑されたように記憶する。で、まあ、梶原一騎の原作にかなり忠実な物語ができたわけだ。」(山根貞男編『女優 志穂美悦子』 芳賀書店、1981)

もし内藤誠監督が当初考えていたような設定およびストーリーだったなら、どういう映画になったでしょうか? いろいろと想像してしまいます。やはり、志穂美さんのファンには不評だったでしょうか?当時の志穂美さんのファンは、志穂美さんが男性に恋愛感情を持つような設定を嫌うような傾向もあったので、やはりあまりファンにとって歓迎されないような気もするのですが。

注) 『ネオンくらげ』 (監督内藤誠、 主演山内えみこ、1973年、東映)は、田舎から出て来た女性が荒木一郎演じる男性に引掛かり、夜の街で働くようになり....という映画です。『映画秘宝 セクシーダイナマイト猛爆撃』によると、全編ほとんどベッドシーンの「エロ映画」ということなのですが...。ただ、主演の山内えみこさんのキャラクターがカラッとして、ジメジメした暗いところがなく、その点が救いのようなのですが。

画像はソンビさんから提供を受けたものです。

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香港のそっくりさん?:シンシア・カーン

左の写真、一見すると化粧の濃い志穂美さんのように見えるかもしれません。(そうでもないかな?)でも、これは志穂美さんではなく、シンシア・カーン(楊麗青)さんという香港のアクション女優です。これは『Bart』という雑誌の香港の女優さんを紹介する記事の中での写真ですが、その記事の中で彼女がどのように紹介されているのかをちょっと述べておきましょう。

志穂美悦子ソックリ顔でピンとくるとおり、彼女はアクション女優だ。台湾でスカウトされて、単身香港にやってきた。2年間み〜ちりカンフーを習い、映画デビュー。『高いところから飛び下りて膝を骨折したり、腰の骨をはずしたり、撮影中に男優にホオを殴られたり、怪我ばっかし。恋愛女優だったら、もっと恋ができたかもしれないのに』」(『Bart』1992年10月26日号)

ただ、映画や他の写真では全く志穂美さんには似てないのに、この写真だけ似て写っているのは奇妙です。ちょうどミシェル・ヨー(キング)が結婚して一時スクリーンから遠ざかってた時期で、ミシェル・ヨーの後釜としてスカウトされたわけです。一時期は随分人気があった女優さんですが、その後香港での人気が下火となり、現在は主に独立系の香港の映画会社がフィリピンで制作する映画にもっぱら出演しているようです。興味を持たたれた方は、藤岡弘と西脇美智子が共演している『香港・東京特捜刑事』をご覧になって下さい。結構置いているビデオ店多いと思います。繰り返しますが、映画の中では志穂美さんには全く似てません。しかし、それなりに魅力的ではあると思います。

志穂美さんには直接関係ない話でしたが、お許し下さい。

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小説の中のそっくりさん?


上のシンシア・カーンさんは香港のそっくりさん(しかもアクション女優)として日本の雑誌に紹介されました。そっくりさんと言えば、掲示板で、故胡桃沢耕次氏の『翔んでる警視』シリーズに出てくる「志村みずえ」という女性刑事が志穂美さんそっくりという設定であるとの情報がTOM.Oさんによって提供されました。そこで、小説の中で志穂美さんにそっくり、あるいは良く似ているという設定の女性が出てくるものを紹介することにしましょう。

(1)『翔んでる警視』シリーズ(廣済堂文庫、胡桃沢耕次著)

これは先に述べたTOM.Oさんが書かれた情報によるものですが。この『翔んでる警視』シリーズの主人公岩崎白昼夢は東大卒のキャリア組(現在の国家公務員試験第1種、昔の上級職試験合格で警察庁に採用となった人のこと。)であり、天才的頭脳を持った警視です。志村みずえは、 この岩崎白昼夢に心を寄せる美人刑事ですが、後に岩崎と結婚することになります。最初、この志村みずえは「松坂慶子そっくりの美人」ということになってました。しかし、この作品郷ひろみさんが岩崎役、志穂美さんがみずえ役でテレビドラマ化された後では、胡桃沢さんはみずえのことを「志穂美悦子そっくりの美人」というように形容するようになってしまいました。TOM.Oさんは、このことから「志穂美さんって、正統派美人なんですよね。」とおっしゃってます。胡桃沢氏がお亡くなりになったこともあり、現在このシリーズ絶版となっているようですが、古本屋を探せば結構置いてあると思います。なお、このテレビドラマはビデオ化されてますので、興味がある方はご覧になって下さい。(ただし、志穂美さんがみずえを演じているのは第1作のみです。志穂美さんが引退後の第2作は、みずえは大地真央さんが演じています。)


(2)『姐御探偵』(一部が『巡回診療魔』として桃園文庫から出版、宇能鴻一郎著)

この作品については、悪友から「お前の好きな好きな志穂美悦子さんそっくりの女性スパイが活躍する作品があるよ。」と聞かされていたのですが、最近までどういう作品か分からなかったたのです。気になっていたので、調べてみて唖然、呆然。作者の名前からもわかるように、これはポ○ノであって、志穂美さんに失礼ですし、紹介するのは問題かもしれません。でも、最近ようやく内容を確認しましたので紹介しておくことにします。(それから、女性の方ごめんなさい。)この作品は、1984年に『小説CLUB』という(成人男性向けの)月刊小説雑誌に連載されました。主人公「姐御探偵」(姓名は不明)は、女性の探偵というよりスパイなのですが、「細川ガラシャの生まれ変わりで、志穂美悦子そっくりの美人」という奇妙奇天烈な設定となってます。おまけに、3人の男性の部下は『西遊記』の孫悟空、沙悟浄、猪八戒の生まれ変わりと言うあいた口がふさがらない設定になってます。つまり、細川ガラシャの生まれ変わりである志穂美さんソックリの美人スパイが、三蔵法師のように3人の手下を引き連れて、謎の事件に挑むと言うことなのですが....。作者が作者ですから、毎回御想像のようなシーンが登場します。しかし、著者の意図としては、単なるポ○ノではなく、西遊記などのファンタジー、時空を超えた生まれ変わりの輪廻物語、それにスパイ・探偵ものなんかの要素も取り入れたエンターティメントにしたいというところがあったようです。しかし、このあまりにも欲張ったというか、はっきり言うと支離滅裂なキャラの設定のため、それからそういうお話にするのは作者の能力を超えていたために、作品的には完全に失敗に終わってます。上述のように、内容の一部が文庫化されていますが、はるか昔に絶版となってるようです。まぁ、興味のある方は古本屋ででも探してみて下さい。

しかし、この小説の内容確認するために、わざわざ国会図書館まで行った私って、一体.....。


(3)『柳家お藤捕物帳』(鳴海丈、PHP研究所)

これは時代劇ですので、主人公について志穂美さんにそっくりとかいう表現はもちろん出てこないのですが....。私には、この主人公のお藤がなんとなく志穂美さんに似たというか、志穂美さんの影響を受けたキャラであるように思えてならないのです。気のせいかもしれませんが。一つにはこの鳴海丈さんという方、時代劇、現代ものアクションなどさまざまな作品を書いている人ですが、志穂美さんの大ファンであるということもあります。鳴海丈さんが書かれた小説『完殺者 真魅』(集英社、ジャンプジェイブックス)も、志穂美さんを思わせる少女戦士が活躍する少年向け小説ですが、その後書きからも鳴海氏が志穂美さんのファンであることがよく分かります。

この小説の主人公の「お藤」は、剣の達人である紀州浪人里見新之丞の妹で、楊枝の店柳屋で働く江戸で評判の美人と言う設定です。そして、単に美人であるというだけではなく、真伝鬼倒流という柔術の達人であり、優れた推理の能力を持っています。このお藤が、お藤に惚れている岡引の五郎八親分とともに、ときには兄新之丞の助けを借りながら、怪事件・難事件を解決するというストーリーです。ここで、このお藤の容姿は、

「鶺鴒髱に紅色の櫛、細面で、顎はすっきりとまとまっている。目は切れ長で鼻筋が通っていた。女にしては、やや濃い眉だが、それがかえって、若々しい美貌を引き立たせている。意志の強さが口元に顕れていて、聡明さを湛えた明るくて美しい顔立ちだ。」(p.9〜10)

と説明されています。上は牧美也子さんによる中扉の挿し絵ですが、右側の女性がお藤ですが、志穂美さんに似たところがあると思いませんか。志穂美さんが演じたら適役だと思われるような、きりっとした感じですよね。これは、空想・妄想コーナーに書いた方が良いのかもしれませんが、こんな感じの役志穂美さんに演じてもらいたかったです。

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女性からのファンレター

このHPや掲示板でもしばしば触れていますが、志穂美さんは女性ファンが非常に多い女優さんでした。実際、真田広之さんが出て来てJACの女性ファンが増える前でも、志穂美さんの出演するイベント等には、志穂美さん目当ての女性ファンが多く、男性の私は肩身の狭い思いをしたことが、強い印象として残ってます。志穂美さんへのファンレターもほとんど女性からだったようです。志穂美さんは1985年に角川の『野生時代』に連載していたエッセー「悦ちゃんの夢の楽屋口」のある回の中で「私には、ほとんど男性のファンがいない。」と言っている程です。さて、そのエッセーのその回の中で、ファンレターについてのいろいろなエピソードを紹介しています。その中でとくに変わったエピソードを一つ。志穂美さんに来たファンレターの中に、いきなり「結婚してして下さい。」と始まるものがあったそうです。随分、ストレートな内容だけど、やはり「男性ファンからのもの方が嬉しくて、ニヤニヤしながら」読んでいたところ、最後に来て大ショックが....。何と、そのファンレターの差し出し人の名前は女性だったそうです。

しかし、今になって考えて見ると、志穂美さんのファンに占める男性の割合ってどの位だったんでしょうか? TOM.Oさんが以前指摘していたように、男性ファンの方がシャイだから、ファンレター出すような目立つ行動をとることがなく、割合はそんなに低くなかたのに男性ファンの存在が目立たなかっただけだという可能性もあります。考えてみれば、私もファンレター出したことなかったし....。

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