■WWFNo.4 扉のことば






 子供のような態度で詩歌を楽しむ能力を失った人──例えばホメロスを読むに際して、ただ文法家や、言語学者や、批評家の目をもってし、また得意になって、かつ特別の熱心をもって、その弱点を、即ちその寝衣を着ているところや、『居眠りをしているところ』(Quandoque bonus dormitat Homerus [さすがのホメロスも時には居眠りすることあり。これはホラティウス『作詞論』Ars poetica中の有名な句])を示すような箇所に限りこれを捜し出してその表を作ったりする種類の人、そういう人は自ら非常に不幸な人間だと感ずるに相違ない。一体われらはおよそ人間的なるものに、芸術や、科学やまた哲学の上における最も偉大なものにも、必然的に付き纏うところの些細な矛盾や欠陥をして、その作品が全体として有する美もしくは真を驚嘆することを妨げるほどの力を我らの知力と想像力との上に振るわしめてもよいであろうか!


ラファエル・ケーベル





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